「職業訓練」について興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。幅広いジャンルの訓練が行われており、障害者の方でも受講できる訓練が多数用意されています。
職業訓練の種類や特徴とあわせて、障害をお持ちの方が利用できる訓練やサービスについても学んでいきましょう。
職業訓練とは?
職業訓練とは、就職に役立つ知識やスキルを習得できる公的な制度です。厚生労働省が管轄する公的職業訓練は、「ハロートレーニング」とも呼ばれています。
職業訓練の受講料は無料ですが、テキスト代や資格検定の受験料などは自己負担です。求職者だけでなく、学卒者や在職者がスキルアップのために利用することもできますが、その場合は受講料が有料になるケースもあります。
令和2年度には19万人が職業訓練を受けた実績があります。
引用元
厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練」
職業訓練の種類
公共職業訓練 | 求職者支援訓練 | |
---|---|---|
対象と費用 |
|
雇用保険を受給できない求職者(無料*) |
実施場所 | 国や都道府県、民間教育訓練機関など | 民間教育訓練機関など |
訓練期間 | おおむね3ヶ月~2年 | おおむね2~6ヶ月 |
*テキスト代は除く
引用元
厚生労働省「ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)の全体像」
上記の表のように、職業訓練には大きく分けて「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。ハローワークを利用する求職者は無料で受講できるほか、その他の職業訓練を必要とする方にも広く門戸が開かれています。
下記で2種類の訓練それぞれの特徴を見ていきましょう。訓練の分野や内容などは後述するので、あわせてご確認ください。
公共職業訓練
公共職業訓練は、主に雇用保険(失業保険)を受給している方を対象とした訓練。失業中で、いつでも次の仕事に就ける状態であることが条件です。国や都道府県などが、公的施設や専門学校などに委託して実施しています。
無料で受講できることに加えて、通常の雇用保険(基本手当)や受講手当、通所手当(交通費)といったお金を受け取りながら訓練に通えることがメリットです。
なお、訓練期間中に雇用保険の受給日数を終える場合でも、残日数によっては、受給を訓練終了まで延長させる「訓練延長給付」を受けられることがあります。ハローワークで確認してみてください。
求職者支援訓練
求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない方が対象です。仕事は辞めているが雇用保険はもらえない・自営業などを辞めて就職したい・非正規雇用から正社員を目指したいなどの方が該当します。
都道府県から委託を受けた民間機関が実施しています。雇用保険の受給がない分、月10万円(固定)の受講手当や通所手当などを受けながら通えることがメリットです。
職業訓練を受けられる場所
ここからは、障害の有無にかかわらず職業訓練が受けられる機関をご紹介します。
なお、簡単にお近くで受けられる職業訓練を調べたい場合は、下記ページから検索ができます。
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/kensaku/GECA150010.do?action=initDisp&screenId=GECA150010
職業能力開発センター/職業能力開発校など
「職業能力開発センター」「職業能力開発校」(地域によって名称が異なります)は都道府県または市町村で運営されており、全国に100校以上存在します。
受講科目は、OA事務・経営事務・医療事務だけでなく、CAD技術、Webデザインを習得できるコースや、パン・お菓子作りや園芸、機械・建築関係など専門職を目指すコースもあります。
引用元
東京都「東京都職業能力開発センター入校案内2022」
職業能力開発大学校/職業能力開発短期大学校 (ポリテクカレッジ)
職業能力開発大学校/職業能力開発短期大学校 (通称:ポリテクカレッジ)は、都道府県や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しています。
専門課程(2年)と応用過程(2年)を通し、少人数で実技・実践を中心として「ものづくりを支える人材になるための技術」や「高度な専門スキル」について学べます。
引用元
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「ポリテクカレッジ」
職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)
「職業能力開発促進センター」(通称:ポリテクセンター)とは、求職者の再就職を支援するための職業訓練や中小企業等で働く方々を対象とした職業訓練、人材育成などの支援を目的として設立された機関です。
厚生労働省所管の「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」による公共職業能力開発施設で、ものづくり分野を中心とした職業訓練を実施しています。
たとえば、大阪の「ポリテクセンター関西」の場合、「ICTエンジニア科」「CAD/CAM技術科」「ものづくりサポート技術科」などが設けられています。6ヶ月~7ヶ月の受講期間の間に資格の取得や企業実習も行えます。
引用元
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)」
ポリテクセンター関西
民間の教育訓練機関(カルチャースクールや専門学校等)
民間が運営するスクールでも、行政から委託されて職業訓練を実施するケースがあります。民間サービスならではのホスピタリティが感じられ、トレーニング内容にも工夫が凝らされているといった点がメリットです。
引用元
TOKYOはたらくネット「民間教育機関での職業訓練」
障害をお持ちの方のための職業訓練・福祉サービス
障害をお持ちの方に対しては、就職し働き続けるうえで障害がハンディとならないように、様々な職業訓練やスキルアップの機会が用意されています。
ここでは、「障害者職業能力開発校・国立職業リハビリセンター」「就労継続支援」「就労移行支援」をご紹介します。
障害者職業能力開発校
障害者職業能力開発校とは、職業能力開発センター(校)の一般科目で訓練を受けることが難しい障害をお持ちの方を対象に職業訓練が受けられる施設です。
事務や清掃など専門知識や技術・技能の習得だけでなく、 「キャリアとは何か?」を考え、コミュニケーションやビジネスマナーなど働く上で必要なスキルや振る舞いを幅広く身に付けられます。
対象者は基本的に障害者手帳を持つ方で、訓練期間は半年〜1年間です。技能習得の程度により、1年を限度として延長できる場合があります。
また、重度障害者に対しては、障害に配慮したきめ細かい職業訓練が実施されています。障害の種類、程度、年齢、各地の訓練校によって異なるカリキュラムが用意されているので、確認してみましょう。
- 就職準備(適応実習で作業適性を見出します)
- 調理・清掃サービス、製パン
- オフィスワーク(WordやExcel、経理などをマスターできます)
- IT(ExcelVBAやアプリケーション開発の基礎を学べます)
- 建築CAD
障害者職業能力開発校は、2023年現在、全国に国立や府県立の19校があります。以下で全国各校の一部を見ていきましょう。
国立
中央障害者職業能力開発校 (国立職業リハビリテーションセンター) | https://www.nvrcd.jeed.go.jp/ |
吉備高原障害者職業能力開発校 (国立吉備高原職業リハビリテーションセンター) | https://www.kibireha.jeed.go.jp/ |
東京障害者職業能力開発校 | https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/school/handi/ |
神奈川障害者職業能力開発校 | https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f3e/kanakou/index.html |
隣には国立障害者リハビリテーションセンターがあり、連携を取りながらリハビリをおこなえます。いずれも寮を利用できます。
引用元
厚生労働省:障害者職業能力開発校所在地等一覧
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構:障害者職業能力開発校
国立職業リハビリテーションセンター「案内、特長、概況、シンボルマーク|職リハセンターとは」
府県立
千葉県立障害者高等技術専門校(ちばテク障害者校) | https://www.pref.chiba.lg.jp/kg-shougaisha/ |
静岡県立あしたか職業訓練校 | https://ashitaka-vtc.ac.jp/ |
京都府立城陽障害者高等技術専門校 | https://www.pref.kyoto.jp/joskgs/ |
通える範囲に訓練校がない場合、委託訓練も実施されています。お近くのハローワークに相談してみましょう。
引用元
厚生労働省「障害者の態様に応じた多様な委託訓練の概要」
就労継続支援
就労継続支援(A型・B型)とは、障害者総合支援法に基づいて、一般就労が難しい方などに対し、就労の機会や必要な知識と能力を提供する福祉サービスです。
生活支援員や職業指導員からアドバイスをもらいながら、実際に事業所で働いて給料(工賃)を得られます。じっくりコツコツと一般就労を目指せることが特徴です。
「障害福祉サービス事業所検索」から就労継続支援事業所を探せます。
就労移行支援
就労移行支援とは、障害をお持ちの方や難病のある方が一般企業に就職するために必要な、訓練の提供・就職活動の支援・定着の支援などを行っている福祉サービスです。
自分に合ったスキルを身につけてから仕事を探すことができ、就職後も定着のためのサポートをしてもらえるため、長く働ける職場に出会いやすいでしょう。
職業訓練にはどんな分野・コースがある?
職業訓練では、実際にどのような分野の訓練が行われているのでしょうか。よく見られるコースの例を挙げます。
【デスクワーク系】
- 事務(簿記・経理など)
- 医療事務
- Webデザイン
- プログラミング など
【現場での実務系】
- 介護関連
- ビルの設備管理
- 宅建 など
このように、さまざまな職種に関連する訓練があるので、自分の挑戦したいコースを探して参加してみましょう。
職業訓練の利用の流れ
職業訓練(ハロートレーニング)を受ける際には、以下のような流れで進みます。
- 求職申し込み・職業相談(ハローワーク)
- 受講申し込み(ハローワーク・訓練実施校)
- 面接・筆記試験等受験(訓練実施校)
- 選考結果通知(訓練実施校)
- 受講あっせん(ハローワーク)
- ハロートレーニング受講(訓練実施校)
自分に合った職業訓練を利用しよう
職業訓練は、無料かつ雇用保険などを受給しながらスキルを身に付けられるサービスです。障害者の方向けの訓練も行われているので、ぜひ参加して、自分が働きたい分野の知識や技術を習得しましょう。
障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。
今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
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社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。