「障害者」だけでなく生きづらさを抱えた全ての方へ:『ヤンキー君と白杖ガール』作者うおやま先生インタビュー

みなさんは『ヤンキー君と白杖ガール』を知っていますか?
視覚障害(弱視)の女子高生ユキコと社会のはみ出し者だったヤンキーの森生のキュンがたくさん詰まったラブコメディです。
今回は人気急上昇中のマンガの作者うおやま先生にDIエージェントが特別にインタビューをさせていただきました。

『ヤンキー君と白杖ガール』作者うおやま先生とは?

ヤンキー君と白杖ガール1巻表紙©うおやま/KADOKAWA
ヤンキー君と白杖ガール1巻表紙(©うおやま/KADOKAWA)

『ヤンキー君と白杖ガール』(略称:ヤンガル)

【あらすじ】
「最恐ヤンキー」×「弱視女子高生」ラブコメディ!
街を牛耳る最恐ヤンキー・黒川森生(18)と
盲学校高等部に通う「弱視」の赤座ユキコ(16)。
出会ってしまった運命のふたり――!
引用:KADOKAWA「ヤンキー君と白杖ガール 1」 うおやま

累計発行部数27万部、2021年秋に実写ドラマ化もされるほど大人気のマンガです。

今回インタビューしたのはこの作者、うおやま先生です。

うおやま先生Twitterトップ画像
▲うおやま先生のTwitterはコチラ

笑って泣けて、当事者にとってのリアルが詰まったラブコメの裏側を伺いました。
※本インタビューは2021年10月に取材した内容です。

Q. なぜ視覚障害(弱視)をテーマとしたのですか?

盲学校高等部2年生赤座ユキコ登場シーン
▲クリックで拡大します|第1話「出会い」(©うおやま/KADOKAWA)

――これまでも視覚障害(特に全盲や盲導犬について)に関する作品は世の中にありました。『ヤンキー君と白杖ガール』のヒロイン・赤座ユキコは弱視で白杖を持っています。この作品で「弱視(ロービジョン)」や「白杖」といったテーマを設定された理由を教えていただけますか?

うおやま先生:
私の父が働き盛りの30代で網膜剝離によって弱視になりました。その父と生活する中で、世の中が「目が見えること」前提に作られていていると気付きました。

「見えにくい人」がいるということはあまり知られていないのではないか?と感じたので、そういう人がいることを知っていただきたくて、この漫画を描き始めました。

父は白杖は使っていないのですが、「見えにくい方も白杖を使っている」ということもあまり知られていないと思ったので、それも知っていただきたいと思い、白杖を使う弱視の主人公にしました。

Q. 「障害者×ラブコメ×ヤンキー」の組み合わせはどのように思いつきましたか?

顔に傷のあるヤンキー黒川登場シーン
▲クリックで拡大します【第1話「出会い」】(©うおやま/KADOKAWA)

――ユキコに一目ぼれしたもう一人の主人公、顔に傷がある「最恐ヤンキー」こと黒川森生(もりお)。本当は心優しい彼のギャップがまずこの漫画の面白さですよね。「障害者×ラブコメ×ヤンキー」は新鮮な組み合わせに感じました。

うおやま先生:
ありがとうございます。
「障害者」の登場する作品と聞くと、「シリアスそう」「泣けそう」「感動しそう」というイメージがついているのではないかと思っています。
そのイメージとは違うものにしたくて、明るくライトなラブコメというジャンルを選びました。
自分がどちらかといえばコメディが得意というのもあります。

4コマにしたのも、重いテーマを含んでいても読みやすいと思ったからです。
そうやって、イメージで「障害者もの」が苦手、と思っている方にも読んでもらいたい。そして障害を持っていても自分と同じ人間だしユキコにとってフツウの生活を生きているのだと、自然と感じていただきたいと思いました。

ヤンキーにしたのは特に深い意味はなく、前作でヤンキーの少女を描いたら描きやすかったからという程度だったのですが、障害のあるユキコに対して社会的に偏見をうけているヤンキーの森生という、二人ともマイノリティという構図になり、結果的に支えあい、世界を広げあう関係にできてよかったと思います。

――描かれているのはあくまでも10代・20代の日常。恋愛やオシャレなどにも障壁を超えて挑戦していく可能性を見せてくれます。D&I(DIエージェントの運営会社)の企業理念にも「人生に選択肢を」というフレーズがあり、非常に共感できました。


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Q. マンガ『ヤンキー君と白杖ガール』の見どころは?

――とても魅力的な『ヤンキー君と白杖ガール』ですが、ぜひ先生の好きなシーン・見どころを教えてください。

うおやま先生:
イチオシ場面は選べないのですが、みどころは弱視だけでなく、様々な生きづらさや事情を抱えたキャラが登場して、お互いに分断するのではなく救いになっていくところかと思います。

社会の仕組みによってもたらされる生きづらさがあるとすれば、それは障害がある方だけではなくすべての人に関係のある話だと思っているので、様々なキャラクターの視点からそれをとらえられたらと思っています。
様々なエピソードが出てくるので、「このキャラの気持ちわかるなあ」と、誰かに共感してもらえたらいいなあと思っています。

Q.『ヤンキー君と白杖ガール』に込めたメッセージを教えてください

――改めてうおやま先生がこの作品に込めたメッセージを教えていただけるでしょうか?

うおやま先生:
冒頭にも述べた通り、メッセージとしては「弱視という、わかりにくい障害があることを世の中に知ってほしい」ということ。

それから、「弱視も含め、皆人それぞれ『0か100ではない、他人にはすぐに理解してもらえないような生きづらさや事情』を抱えているものだから、すぐに『あの人はこうだ』と決めつけるのではなく、そういう背景があることを想像し、互いに思いやれるようになるといいな」ということです。
それが多様性社会、共生社会というものではないかと思います。


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Q.視覚障害者の日常がここまでリアルに描ける理由は?

――コメディとして楽しめながら、盲学校の様子、登場人物の心情など非常にリアリティがあり気づきも多いと感じます。取材などもされているのでしょうか?

うおやま先生:
盲学校への取材、自分の実体験、当事者や関係者の皆様からうかがったお話、視覚障害関連の本やニュース、ドキュメンタリーなども参考にしています。

――その中で印象的だった気づきはありましたか?

うおやま先生:
印象的だったことは、当事者の方から聞いた「白杖をもつことへのためらい」「白杖をもつことで受ける嫌がらせ」でしょうか。
お話を聞いて初めて知ったので印象的で、2巻や3巻を描くきっかけになりました。

超過保護なユキコの姉、イズミの登場回
▲クリックで拡大します【第11話「姉」】(©うおやま/KADOKAWA)

――D&I社員には家族など身近に障害をもつ社員も多く、ユキコの姉のイズミの過保護ぶりが「リアルだ!」と盛り上がっていました。当事者だけでなく周りで支える人のあり方・ものの見方などを考えさせられました。

うおやま先生:
イズミのように、当事者家族の悩みも、今までなかなか知られてこなかったことだと思います。そういう隠れていた苦悩も、この作品で知ってもらえたらいいなと思います。

Q. 「障害者が自立する・働く」うえで社会が変わるべきところは何でしょう?

――4巻には主人公が自立を考える場面も出てきました。障害者が働く上での差別や偏見、そして困難はまだまだあります。先生なりの解決のアイディアを教えていただけるでしょうか?

うおやま先生:
「社会に求める」となると偉そうではありますが……。

まず、「障害があるから何もできないだろう」という先入観を捨て、個々の人間として見ること。障害にも様々な種類があり、個人の性格や素質も様々であることを踏まえることでしょうか。
企業や社会のルールに縛られるのではなく、その人の適性や事情によって柔軟に対応できれば良いかと思います。

「会社って言うのは従業員のためにあるべき」と語るユキコのバイト先のチャオ店長
▲クリックで拡大します【第68話「メリット(2)」】(©うおやま/KADOKAWA)

うおやま先生:
また「企業のために従業員を使う」のではなく「企業は従業員の居場所であるということを考え、過ごしやすい空間を作る」ことかなと思います。
4巻に出てくるチャオ店長に代弁してもらっています。

これは障害のある方だけでなく、すべての人にとって必要なことなのではないかと思います。
社会や企業の枠組みになじめず、はじかれてしまったり、なんとか適応しているけれど苦しんでいる方は、たくさんいらっしゃると思うので……。

――企業も売上を上げないと従業員を路頭に迷わせてしまうことになります。少しネタバレになりますが、1巻でも「ユキコのために考えた工夫が、お年寄りのためにもなって、お店の売上につながった」といったこともありました。このマンガでは「誰も悪者にしない」やさしさが描かれていると感じました。

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Q.ドラマ『恋です!ヤンキー君と白杖ガール』、原作者の教える楽しみ方は?

――マンガの人気に火が付き、2021年秋には『恋です!ヤンキー君と白杖ガール』として実写ドラマ化されました。お気持ちはいかがですか?

うおやま先生:
作品の実写化は漫画家としてひとつの夢だったので、嬉しかったです。
ただヤンガルは、弱視のことだけでなく社会問題的なお話も含んだ漫画なので、ドラマ化は簡単ではないと思っていました。それに挑んでくださることは「チャレンジャーで、すごいな!」と思いました。

――ドラマも実際にある盲学校で撮影をするなど制作陣の熱意も感じます。では、原作者としてぜひドラマの楽しみポイントを教えてください!

うおやま先生:
ドラマの楽しみポイントは全部ですが、自分は俳優さんたちの演技をとても楽しんでいます。原作のキャラクターに息を吹き込み、とても魅力的に演じてくださっています。
原作にはない登場人物もとてもすてきだと思います。

とりわけ盲学校のユキコ・空ちゃん・青野くんのシーンは、「盲学校舞台の学園ドラマがあればいいな」と思っていた自分の夢がかなったとてもすてきな、そして今までなかったようなシーンなので、必見です!

――マンガとの違いもぜひ楽しんでいただきたいですね。

Q. この作品をどんな方に読んでもらいたいですか?

――老若男女に愛される内容ですが「どのような方に読んでもらいたい」といったイメージはありますか?
私たちとしては会社の経営者・人事担当者・一緒に働く現場の方が読んで、障害理解を深めてもらえたら素敵だなと感じました。

うおやま先生:
企業の方を含め、すべての人に読んでいただきたいと思っています。
特に「見える人」にもっとたくさん読んでいただいて、知らなかった弱視や白杖の世界を知っていただけたらと思っています。

また生きづらさを抱えた方にも読んでいただき、「しんどいのは自分だけじゃないんだ」と少しでも心強く思ってもらえたら嬉しいなと思っています。

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Q. 最後にDIエージェント読者に向けてメッセージをお願いします!

うおやま先生:
障害のある方が働くことには、今の日本社会では残念ながらまだ様々なハードルがおかれていると思います。
「働きたいけど働けない、希望の職種につけない」と悔しい思いをされている方もいらっしゃるでしょう。

また、働いていないからといって、自分には価値がないのだということは決してありません。働かなければいけない、というのは社会が決めた「フツウ」であり、自分の「フツウ」とは違います。

自分は、「働く」ということは「社会の役に立つため」以上にまずは「自分のため」にあるものだと思っています。
自分のために、「難しいかもしれないけどチャレンジしてみようかな」という勇気が持てたら素敵なことだと思いますし、働いて社会の役に立つことで充実感を得られているなら、それもすばらしいことだと思います。

働いている、いないにかかわらず、「自分がしたいこと」や「自分の生きがい」はなんだろう?と思いを馳せることは、人生のこれからの道を定める一歩になるのではないかと思います。
皆様の人生が、自分のためにあり、豊かなものになりますよう応援しております。

――うおやま先生、この度は本当にありがとうございました!

『ヤンキー君と白杖ガール』を楽しみたいと思ったら?

『ヤンキー君と白杖ガール』は現在6巻まで発売中、最新巻は12月23日に発売します。
興味を持たれた方はぜひお手に取ってみてください。

<コミック>

ヤンキー君と白杖ガール6巻表紙(©うおやま/KADOKAWA)
ヤンキー君と白杖ガール6巻表紙(©うおやま/KADOKAWA)

KADOKAWAより1巻~6巻まで発売中!(最新7巻は12月23日発売)

<視覚障害をお持ちの方のためがマンガを楽しむために>

音声配信なども多数用意されています。

<ドラマ情報>

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