難病者が働くために―両育わーるど理事長・重光喬之さんインタビュー【後編】

難病のある方が「働きたい」「仕事をしたい」と考えたとき、どのような困難があるのでしょうか。後編となる今回は「難病者の就労調査」をおこなったNPO法人両育わーるど理事長の重光さんに難病者の実態と働く上での課題を、DIエージェントが聞きました。

NPO法人両育わーるどロゴ記事協力・監修:NPO法人両育わーるど
障害の有無を超えてお互いに学び合える社会の実現をビジョンに、障害の知らないを知る「THINK UNIVERSAL事業」やオリパラプログラムを展開。
2018年には「難病者の社会参加を考える研究会」を立ち上げ、難病の認知拡大やアドボカシー活動をおこなう。

両育わーるど創設者の重光喬之さんプロフィール写真お話を聞いた人:重光 喬之(しげみつ たかゆき)さん
「NPO法人両育わーるど」理事長。「難病者の社会参加を考える研究会」発起人。
20代半ばで難病の脳脊髄液減少症を発症。入退院と二度の退職を経て、現在は難病の啓発活動に取り組む。

「難病のある人の就労・社会参加に関するアンケート」の調査結果をまとめた前編はこちら▼

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難病者の就労実態調査のデータを読み解く

Q.そもそも「難病」とはどのようなものでしょうか?

疑問・クエスチョンマーク

――前編でも取り扱った調査結果を拝見して、「障害者」と同じような課題が「難病者」にもあるなと感じました。

難病と一口にいっても、同じ病名でも進行度や症状も違います。
潰瘍性大腸炎クローン病は、治療により体調が安定すれば働ける方もいますし、ALS筋ジストロフィーなど進行性で物理的な制約が増えていく疾患や、中には緩解傾向で安定する疾患もあります。
いわゆる難病には該当しづらい線維筋痛症や私も15年闘病している脳脊髄液減少症などのように、目には見えない痛みが主たる症状の疾患もあります。

潰瘍性大腸炎は安倍元総理大臣、線維筋痛症はレディー・ガガさんも発症されています。
難病者は日本全国に推計約700万人もいるともいわれ、意外にも難病は身近なものなのです。

――もしかしたら自分の身近にも難病に苦しんでいる方がいらっしゃるかもしれないですね。

はい。しかし難病者が「普通に暮らし、働きたい」と願っていても社会の側に障壁があります。
企業も自治体も、「病気があるのに働けるのか」「治ってから働けばいいのでは」「社会保障が充実しているのではないか」「障害者雇用の対象ではないか」といったような誤認識があり、また難病や彼/彼女らの雇用のイメージがつきづらいようです。

Q.難病者が働くために社会に必要なことはなんですか?

指定難病特定医療費受給者証

――では難病者が働く上で、どのようなことがポイントになるとお考えですか?

当事者との関わりや今回の調査からわかった難病者の就労機会を高めるポイントをまとめました。

  1.  障害者雇用促進法の対象拡大(障害者総合支援法と障害者雇用促進法の対象を同一にすると100万人以上*が障害者雇用の対象になる)
  2.  指定難病に該当しない難病者の実態把握及び定義付けと、指定難病と同等の制度利用の推進
  3.  短時間就労やテレワークなど多様な働き方の推進(雇用者の就労困難者への対応に優遇措置を設ける)
*指定難病受給者証所持の95万人、受給者証未所持の指定難病者(診断書有)、障害者総合支援法の対象である指定難病を含む361疾患の診断書を持っている当事者を合わせて100万人以上

――社会(法律)や自治体・企業の工夫が必要ということですね。

実態調査から難病のある職員を雇用している自治体は、難病者の雇用に対して一定の理解があるものの、優先雇用する理由がないことを雇用が進みづらい要因として挙げています。ここはシンプルに障害者雇用のように義務化すれば解決します。

――配慮があれば働ける人がいるのに雇用側のイメージや法的な後押しがないために積極採用につながらない……。法律も大きな一つの壁になっていると。

疾患ごとに細やかに社会で対応していくことも大切ですが、米国のNational Institutes of Healthによると7000もの希少疾患があるとされています。一つひとつ対応していては、社会保障制度の狭間や社会が対応するまでの時差が生まれ、その間当事者は自助で何とかするしかなく、社会的に孤立してしまいます。

Q.これからの難病者の繋がり方、働き方の展望は?

――2018年に発足した「難病者の社会参加を考える研究会」も当事者がたくさん協力されていますね。どのような取り組みをしていますか?

私たちは、病名を超えて、働きたいと思う難病者へ就労という切り口でアプローチできないかと取り組んでいます。
たとえば難病者の中には既存の月~金のフルタイム勤務やシフト制のように固定で長時間の出勤が症状の兼ね合いで難しいため、働きたくても働けない方が一定数います。

――せめてパートタイムでも働ければ収入源になりますものね。働き方の変化についてもう少し詳しく教えてください。

コロナ禍で働き方が変わってきたことは、多様な働き方の追い風になっていると考えます。
オンラインの在宅勤務に加え、勤務時間を20時間以下とする短時間労働、勤務時間を累積カウントするなど就業形態をより多様化すること。コーディングや翻訳だけ、オンライン秘書業務などのように仕事内容も細分化すること。
ただし、短時間労働では所得が下がるので、時間当たりの成果などを加味したり、生活保護の基準額より低い場合への差額分の支給を簡素かつ一律にするなど社会保障の充実も重要だと考えます。
私たちはこれらが進んでいけば「これまで働ける仕事に出会えなかった人たちも働けるのではないか」と考え、支援団体や企業と就労事例作りに挑戦しています。

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――具体的にはどのような働き方が実現していますか?

たとえば、研究会に参画しているソフトバンク社ではショートタイムワーク制度を導入し、週20時間未満でも働ける制度を推進されており、初めて難病者の雇用も実施しています。

――ソフトバンク社は障害者雇用にも積極的ですね!

難病者の就労機会の拡大は、一人親家庭、介護離職など働くうえで何かしらの制約がある人たちにとっても働き易さの向上に繋がるという視点で取り組んだら、早く広がるのかもしれません。

「制度の狭間にいる難病者の実情を知ってほしい」クラウドファンディングに挑戦中

――難病者の社会参加は他人事ではなく、誰もが働きやすくなるための一歩でもあるのですね。当事者以外にも何かできることはあるのでしょうか。

疾患一つ一つの治療が着目されがちな難病のある人の就労機会の向上のためには、全容の把握、理解啓発が肝要です。
法律を変える、社会を変えるには時間がかかります。そこで私たち「難病者の社会参加を考える研究会」では、まず当事者の声を集め、就労事例作りを進めてきました。今回の実態調査もその一歩です。

――2021年夏、その調査結果が白書になったと伺いしました。

私たちはより広くの方に「難病者の働き方」の実態を知ってもらおうと、「難病者の社会参加白書」出版・自治体への送付を実現するべく、クラウンドファンディングを開始しました。

難病者の社会参加白書クラウドファンディング

多くの皆さんが難病を知るきっかけになりましたら嬉しいです。
ご寄付や情報のシェアのご協力、どうぞよろしくお願いいたします。

「社会制度の狭間」にいる難病者700万人。その実状を全国に届けたい- 」クラウドファンディング READYFOR
https://readyfor.jp/projects/ryoikuworld
”難病者の社会参加を考える研究会”の立ち上げから2年半、見えてきた課題を白書にまとめました。この白書を日本国内全約1800自治体へ、難病の認知向上のために届けたいです。
支援募集は9月5日(日)午後11:00まで。

――重光さん、ありがとうございました。株式会社D&I(DIエージェントの運営会社)も「誰もが挑戦できる社会」を理念としています。難病者が働く選択肢を広げられるように私たちも協力していければと思います!

 

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