「すでに障害者雇用として働いているけど、仕事に幅がなくて面白くない」「障害者雇用に興味があるけど、自分のやりたい仕事はできるのかを知りたい」などと思っている人はいませんか?
障害者雇用は一般雇用と比べて働く場所や仕事内容が限定され、希望する仕事がないといった情報もあります。果たして本当なのでしょうか?
今回は障害者雇用に関する基礎的な知識から、応募や面接のポイントについて解説します。これから障害者雇用での就職・転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
障害者雇用とは
そもそも障害者雇用とは、障害者雇用促進法に基づく、採用上の特別枠のことを意味します。
2020(令和2)年6月現在、障害者雇用の対象となるのは身体障害者・知的障害者・精神障害者の3種類。基本的にはそれぞれの障害者手帳を持つ人が、障害者雇用の対象です。
発達障害者は基準を満たすことで精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用として働くこともできます。
民間企業は全従業員の2.3%を障害者雇用としなければいけません。2024(令和6)年4月までにはさらに2.5%、2026(令和8)年7月には2.7%までアップする予定です。
出典元
e-Gov法令検索|障害者の雇用の促進等に関する法律
厚生労働省|障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について
障害者雇用でみられるメリットと懸念
企業が障害者を雇用する場合、可能な範囲で働きやすい環境や仕事内容とすることが義務付けられています。ここでは、障害者雇用で仕事をするメリットを見ていきましょう。
なお、障害者雇用のメリット・デメリットについては下記ページで詳しく解説しています。さらに、一般雇用との違いにも触れているので、それぞれの違いについても知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
メリット1.環境・業務に配慮がある
まずは働く環境、例えば物理的環境に配慮があることです。
車いすでも移動がしやすいように入口がバリアフリーになっていたり、手すりが設けられていたりするなどです。
また刺激が多くあると集中できない人のための個室作業ブースや、仕事と休憩をスムーズに切り替えられるように休憩スペースを別に設けている企業もあります。もちろん企業ごとに差があるので、どのような配慮環境があるかは求人票を確認するのがポイントです。
業務に配慮があることも、障害者雇用で働くメリットのひとつですね。障害が原因となって仕事をすぐに覚えられない人もいることでしょう。
障害者雇用なら一人ひとりの仕事を覚えるペースや、可能となる作業量に応じて適時調整をしてもらえます。仕事をスタートしたばかりの頃は作業量や勤務時間を抑え、慣れたら少しずつ上げてもらうことも可能です。
また発達障害者の中には音声よりも、文字やイラストなどの視覚的なものの方が理解しやすいことも少なくありません。一人ひとり理解のしやすい方法で仕事の指示を考えてもらえるため、スムーズに業務に就くことができます。
メリット2.障害に対して理解を得やすい
理解が得られやすいことも大きなメリットです。
企業は雇用する段階ですでに障害があることを知っています。どの程度の内容を公表するかにもよりますが、あなたが働く上で配慮してもらいたいことを伝えておくことで、さまざまな調整をしてもらえるでしょう。
例えば精神障害者の中には、精神科に定期通院をしている人も少なくありません。一般雇用では理解が得られないことから、通院のために休むことが難しい職場もあります。しかし障害者雇用であれば理解が得られやすく、通院日の調整などもスムーズにできるはずです。
懸念1.正社員求人や職種が一般雇用に比べて少ない
障害者雇用は正社員の求人数が、一般雇用と比べると少ない傾向にあります。契約社員や短時間勤務の求人が多いということですね。
障害者雇用では事務職や軽作業などの職種が比較的多く、専門職は少ない傾向にあります。これは、事務職や軽作業を希望する求職者の方が多く、企業側も障害への配慮環境を整えやすいことが関係しています。
そのような職種を希望する人にはぴったりですが、仕事に幅を持たせたい、特定の職種で専門性を高めたいと思っている人にとっては、もの足りなさを感じるかもしれませんね。
しかし、国では障害者雇用対策を実施し、障害者雇用そのものが広まりを見せています。障害・特性によって長時間勤務が難しい人が一定数存在していることを把握・留意した上で雇用機会の拡大を図れるよう、国のサポートを受けながら雇用促進に力を入れる企業も増加しているのです。
このように、企業側の障害者雇用に対する姿勢に変化が見られはじめたことから、求人数や職種の少なさは改善されることが期待されています。
▼出典元
厚生労働省|最近の障害者雇用対策について
しかし、障害をお持ちの方はどの時代も一定数おり、就労機会を求める人の増加も見られることから、対策は徐々に多くの企業へと広まり、正社員求人や職種の増加が期待できる未来になるでしょう。
懸念2.給与水準が低い傾向にある
2つ目は給与水準が低い傾向にあることです。例えば別記事(※1)でご紹介しているように、身体障害者の場合、他の障害種別と比べると平均給与は215,000円/月と高めではあります。
しかし一般雇用の男性337,600円/月、女性247,500円/月と比べると、まだまだ低い水準であることが分かりますね。
給与水準へ懸念がある一方で、2022(令和4)年の障害者雇用状況では、下表のようにそれぞれの雇用障害者数が増加していることもわかっています。
民間企業 |
雇用障害者数:約61万4000人 実雇用率:約2.3% |
---|---|
公的機関 |
国 の雇用障害者数:約9,800人 都道府県の雇用障害者数:約1万400人 市町村の雇用障害者数:約3万4,500人 教育委員会の雇用障害者数:1万6500人 |
独立行政法人など |
雇用障害者数:約1万2400人 |
雇用障害者率は年々増加を見せている一方で平均賃金が低い傾向にあるのは、障害や特性によって雇用形態や労働時間が大きく左右されることが理由と考えられています。
障害や特性を抱えながらもスキル・経験を活かして働きたい方には、「オープンポジション」という求人に絞って探してみるのがおすすめです。
スキル・経験を活かしたい場合はオープンポジションがおすすめ
ご自身のスキル・経験を活かして仕事の幅を広げたい、もしくは専門性の高いキャリアを築きたいという場合は、「オープンポジション」求人に応募してみるのがおすすめです。
オープンポジションとは、応募者の経験や適性に合うポジションがあるかどうかを応募した会社側が探してくれる形の募集形態です。
ご自身のスキルと会社のニーズがマッチすれば、障害者枠でも専門性の高い職につくことは十分可能です。
障害者雇用枠の転職活動の流れ
障害者雇用枠の転職は、一般的な転職活動と比べても大きな違いがありません。そのため、一般的な転職活動の流れを押さえておくことで、適切な準備を取り入れながら進めることができます。
ここからは、はじめて転職する方、障害者雇用枠での転職を検討する方へ、必要な知識と流れをご紹介します。
なお、転職活動のポイントとコロナ禍の現状については、下記ページで詳しく解説しています。コロナ禍の現状を踏まえつつ転職活動を上手に進めたい方は、ぜひこの機会にご覧ください。
企業の応募は「並行」がおすすめ
企業への応募は、1社ずつではなく、何社か並行して複数に送るのがおすすめ。その背景には以下のようなメリットがあるためです。
- 目的や条件などを比較検討した上でスムーズな選考に進められる
- 面接回数が増えることで面接そのものに慣れる
- 面接に慣れればスムーズな受け答えができるようになる
- 複数の内定を受けたとき、自分にとって最適な選択ができる
なお、最初の面接は誰でも緊張するものです。最初の面接から対策したいときは、DIエージェントの面接対策を利用するのも方法のひとつ。DIエージェントでは書類添削を含めた転職活動のサポートをおこなっているので、いつでもお気軽にご相談ください。
求人内容に書かれる「オープンポジション」とは
ご自身のスキル・経験を活かして仕事の幅を広げたい、もしくは専門性の高いキャリアを築きたいという場合は、「オープンポジション」求人に応募してみるのがおすすめです。
オープンポジションとは、応募者のスキル・希望・障害に応じて配属先を決めることで、障害をお持ちの方の求人に頻出する言葉のひとつです。
障害や特性をお持ちであっても長く安定して働き続けられることを目的としているので、スキルや経験、さらに企業の求人ニーズとマッチすれば、障害者枠でも専門性の高い職に就くことは可能です。
企業についてもっと知りたいときは転職エージェントの活用がおすすめ
転職活動の中で大切な工程のひとつとして企業研究があります。しかし、中には企業情報が少なく、もっと企業について理解した上で書類作成を進めたいと考える方もいらっしゃいます。
そんなときは、転職エージェントの活用がおすすめです。転職エージェントの活用によって、幅広い企業とのパイプをもつアドバイザーが、企業情報や採用傾向などを共有してくれる場合があります。
さらに、書類添削や面接対策などをおこなうエージェントもあるので、転職活動がはじめてといった方でも安心して自分らしく進められます。
これらサービス全体を通じ1,600社以上の取引実績と7,500人以上の就職支援実績があるので、障害者雇用に不安がある方はぜひお気軽にご相談ください!
在職中は直属の上司へ「退職の報告」を
現在就業中の方は、直属の上司へ退職の報告を済ませましょう。時期としては退職予定日の2ヶ月前には退職の意思・退職の報告を直属の上司に申し出るのが望ましいです。
2ヶ月ほどと早い時期に報告すべき理由には、企業側はあなたの後任を決めなければならないほか、業務の引き継ぎや退職手続きをおこなう必要があるなど、やらなければならないことが多くあるため。
新しい会社が決まり入社予定日もすでに決まっているのなら、遅くても1ヶ月前には企業に伝え、同意を得るよう心がけましょう。
障害の開示・不開示で異なる働き方も
転職活動をはじめる上では、障害に対する配慮を受けながら働きたいなど、自分の働き方について明確にしておくことが望ましいです。
しかし、障害の症状によっては、開示すべきかどうか迷う方もいらっしゃいます。
そのようなときは、障害について開示せずに働く「クローズ就労」、障害を開示して働く「オープン就労」があることを押さえておきましょう。
それぞれの概要やメリット・デメリットは下記ページで詳しくまとめているので、転職活動をはじめる前に読んでおくことをおすすめします。
障害者雇用で仕事が決まりづらいケースとは?
障害者雇用で仕事を探している人の中にはスムーズに仕事が見つかる人と、決まりづらい人がいます。仕事が決まりづらい原因を見ていきましょう。
働く準備が整っていない
まずは働く準備が整っていないことです。障害者雇用では就労準備性とも呼ばれています。
働く際に必要なのは仕事に関する知識や、直接的なスキルだけではありません。規則正しい生活を送って毎日定時に出社できるかどうか、勤務時間をこなせるだけの体力があるかどうか、報告連絡相談ができるか、そして精神面で安定しているかどうかなども求められます。
例えば精神障害者の中には「早く働きたい!」と焦る気持ちが強く、症状が安定する前に就職活動を始めるケースも珍しいことではありません。
働く準備が整っていないと採用される可能性は低くなり、仮に採用されたとしても仕事が続かないことも考えられます。
ひとりで就職活動をしている
支援機関やエージェントなどを使わず、ひとりで就職活動をしていることも仕事が決まりづらい理由のひとつです。
専門の支援機関やエージェントを利用すると、仕事探しや履歴書記入、そして面接対策に関して適切なアドバイスをもらえます。また企業側も「支援する人・関わってくれる人がいる」と理解し、採用に対して安心できるのでしょう。ひとりで就職活動をするよりも、選考通過率を高めることができるでしょう。
また身だしなみが整っていないことが採用に至らない原因となることも多く、支援機関やエージェントを利用すればチェックをしてもらえます。
障害者雇用の仕事を探すには?
障害者雇用の仕事はどのように探せば良いのでしょうか?続いては仕事を探す主な方法を紹介します。
ハローワーク
ハローワークはおそらく多くの人が知っていますね。厚生労働省が運営をしている職業安定所で、職業相談の他にさまざまな求人を紹介してくれます。
障害者雇用も取り扱っており、求人件数は国内で最も多く、ハローワークの求人を通して就職する障害者の方も少なくありません。
企業の採用サイトや転職情報サイト
最後は企業の採用サイトや転職情報サイトです。企業によっては障害者雇用枠を設けているところもあり、サイトから直接応募することができます。特に気になっている企業があれば、障害者枠の募集がないかをチェックしてみると良いでしょう。
また障害者の方向けの求人サイトもあるため、条件の良い募集があれば応募することも可能です。
最近は、Indeed(インディード)などの複数の転職サイトや採用サイトを一括で検索することができるアグリゲーションサイトの利用も人気です。
なおアグリゲーションサイトとは、Web上に存在するあらゆる情報を特定のテーマに沿って収集・整理し、ひとつのプラットフォーム上で提供するWebサイトのこと。どんな職種が自分にとって合っているかを探したい方にとっては、効率良く情報収集ができるのでおすすめです。
国・自治体によるサポート・支援の活用もおすすめ
ほかにも、国や自治体が運営するサポート・支援もあります。障害や転職にまつわる専門知識が豊富な職員が在籍していることが多いので、転職活動の進め方はもちろん、自分に合う職種を相談しながら見つけられると言った特徴もあります。
たとえば、ハローワークの職業訓練や転職に役立つスキルを養うことができる就労移行支援などがあります。障害者雇用において知っておきたい相談先については下記ページで解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
障害者雇用専門の転職エージェント
転職エージェントとは、転職を希望している人と企業とをマッチングしてくれる仲介会社のことです。先に述べたように、最近では障害者雇用を専門とする転職エージェントもあります。
ここからは、エージェントを利用するメリットと注意点を見ていきましょう。
メリット1.アドバイスやサポートをしてもらえる
ほとんどのエージェントでは、登録後は専任のキャリアアドバイザーが付き、無料で転職に関わる相談に乗ってくれます。転職はもちろん、企業の求める人物像などさまざまな知識・情報を活かしながら、求職者と二人三脚になって理想的な就労先を探すことが可能です。
エージェントに登録した後は、これまでの仕事内容や仕事で失敗したこと、障害のこと、勤務条件などを丁寧にカウンセリングします。その上で、条件に該当する求人を紹介してくれるのが大きな特徴です。
さらに、企業に提出する履歴書や職務経歴書といった書類添削や面接対策などをおこなうエージェントもあるので、転職の相談から実際の転職活動、面接のアドバイスなど、総合的な支援を受けることもできます。
メリット2.非公開の優良求人が多い
エージェントにはハローワークには届かない、非公開の求人が多く存在します。企業が非公開とする理由は、優良求人であることが多いため。給与や休日などの待遇が良く、応募が殺到するのを避けるためです。
エージェントに登録をすれば、優良の非公開求人を紹介してもらえる可能性も高まるでしょう。
メリット3.マッチングしてもらえる
エージェントは企業からダイレクトに求人を受けているため、相手がどのような人材を求めているのかを理解しています。
「この求職者なら、企業が求める人材に合うだろう」と判断をして紹介してくれるため、マッチング率が高くなるのです。
メリット3.情報量が多い
最後は情報量が多いことです。求人を出している企業に関する情報量が多いため、職場環境や働くスタッフ、雰囲気などをしっかり把握しています。
インターネットやハローワークには載っていない情報も持っているため、スムーズに転職を進めて行けるでしょう。
利用には3つの点に注意
ただし、エージェントの利用にあたっては、3つの点に注意が必要です。
- 希望しない求人を紹介される場合がある
- 事務職が多い傾向がある
- 地方の求人が少ない
理由は様々ですが中には、採用者数を増やして実績を作りたい、企業からの紹介料を増やしたいといった理由から、希望しない求人を闇雲に送るエージェントもあります。
エージェントが客観的な視点から見てその求職者とマッチしている部分があるから紹介するというレアなケースもあるものの、求職者にとってはわかりにくい部分です。
希望しない求人を紹介されるときは、遠慮せずにエージェントに質問してみましょう。エージェントに質問することで、自分の市場価値の発見に役立つ可能性があります。
ほかにも、エージェントが取り扱う求人では職種の幅が狭かったり、首都圏・都心部に密集していたりすることも注意点のひとつ。
しかし最近では、事務職やエンジニアといった職種でも、テレワークを導入している企業が増加しています。スキルや経験によってはテレワークという新しい働き方につながるので、自宅から離れた求人が多いときは、テレワークに対応していないかをチェックすることをおすすめします。
障害者雇用の仕事探しで心がけること
最後に障害者雇用の仕事探しで、心がけておくべきことを3つ紹介します。
自分の病気や症状を正直に伝える
病気や症状、障害の特徴を企業に対して正直に伝えるようにしましょう。人によっては話したくないと思うことがあるかもしれません。しかしできるだけ正直に話しをすることで、その分の配慮を得られるメリットが生じます。
伝える際は専門用語を使わないことが大切です。「障害者雇用をしている面接官なら、当然知っているはず」と思わず、誰でも分かるような言葉で伝えるように心がけてくださいね。
配慮が必要な場合は明確に話す
配慮が必要な場合は、明確に話すことです。まずは仕事をする上で、どのような配慮が必要なのかを自分自身で整理してみましょう。
「1度に複数のことをするのが苦手なので、ひとつずつ仕事をさせてほしい」「耳から聞いて理解するのが難しいため、文書で説明や指示を出してほしい」など、具体的な内容をピックアップしてみてください。
面接時に明確に伝えられれば、企業側も「このような配慮をすれば働ける人」と採用に対して前向きになってくれるでしょう。
業務内容を把握する
業務内容を把握することも重要です。仕事内容が持っているスキルや、障害特性に合っているかどうかを検討してみましょう。
個人では判断が付かないことも多いため、やはり支援機関やエージェントなどの第3者に関わってもらうと良いですね。
また、一部の企業では雇用前実習を導入しています。これは採用前に一定期間実習をおこない、本人と企業の双方で適性を図るものです。実習の結果によっては採用不可となる場合もありますが、実習によって自分の適性が分かるので、今後の転職活動に大きく役立つでしょう。
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