不安障害とは?長く働き続けるための仕事選びのポイントを解説

不安障害とは強いストレスや不安によって引き起こされる精神的な病気・障害のことを指します。代表的な4つの不安障害のほかにも、さまざまな症状があり、その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。

そこで、今回は、不安障害の方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。

合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならない様、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

不安障害とは?種類や悩みを解説

不安障害とは?種類や悩みを解説

不安障害(不安症)とは、精神疾患の一種で、「不安」を主症状とする様々な疾患群をまとめた総称です。

その中には、特徴的な不安症状を呈するものや、原因がトラウマ体験によるもの、体の病気や物質によるものなど、様々なものが含まれています。

パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害(PTSD)もこの中に分類される代表的なものであり、不安起因で生じる症状の傾向別、不安の発生要因別に分類される場合が多いものになります。

不安がふさわしくない状況で生じる、頻繁に生じる、日常生活に支障をきたすほど強い不安が生じ、それらが長く持続する場合には、精神障害とみなされます。

代表的な4つの不安障害

アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断・分類基準「DSM-5」によると不安障害(不安症)に属する分類は9種類あります。その中でも以下の4つは、不安障害の中でも代表的なものです。

  • パニック障害
  • 社会不安障害
  • 強迫性障害
  • 全般性不安障害

突然激しい不安に襲われて体調が悪くなるパニック障害。人と話すことや人が多くいる場所に苦痛を感じる社会不安障害。

さらに繰り返し手を洗い続けたり、何度も戸締まりを確認したりしてしまう強迫性障害。生活上のいろいろなことが気になり極度に不安になる全般性障害。

これらの障害は、単一で発症する以外に、複合的に発症するケースが少なくありません。

引用元
不安障害|こころの病気について知る|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省

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パニック障害

パニック障害は、理由もなく突然強い不安に襲われる病気です。心臓が激しくドキドキしたり、めまいや呼吸困難を感じることがあります。

これらの症状は「パニック発作」と呼ばれ、急に現れて10分程度で最高潮に達します。症状には、動悸、汗、震え、息切れ、胸の痛みなどがあります。発作の恐怖から、電車や人ごみを避けるようになることもあります。

社会不安障害

社会不安障害は、人に注目されることや恥をかくことへの過度な恐怖を伴う病気です。この障害で、人と話したり、電車や繁華街のような人が多い場所にいることが強い苦痛を引き起こします。

しばしば、失敗や恥ずかしい経験が原因で起こり、特に思春期に自己価値の認識や自信の欠如が関係しているともいわれています。

患者は自分の恐怖が不合理であることを理解していても、その感情を抑えるのが難しいため、徐々に社会的な場面や人との交流を避けるようになります。

強迫性障害

強迫性障害は、些細なことに対しても止められない強迫行為を繰り返す病気です。例えば、何度も手を洗ったり、火の元やコンセント周辺、戸締りなどを何度も確認したり、数える必要がないものを数え続けたりします。

これらの行動は、不合理だと自覚していてもやめることができないのが特徴です。この繰り返し行為により、学業や日常生活に大小さまざまな支障をきたすことがあります。

全般性不安障害

全般性不安障害は、学校や家族、生活のさまざまなことについて、過度に不安や心配を感じ続ける病気です。この状態は半年以上続くことがあります。

不安だけでなく、落ち着かない、疲れやすい、集中できない、イライラ、筋肉の緊張、睡眠不足といった身体的な症状も伴います。

そのほかの不安障害

分離不安障害、選択制緘黙、限局性恐怖症、物質・医薬品誘発性不安症なども、不安障害に含まれます。

また、重篤な疾患に罹患、もしくは罹患しつつあるという状況に不安を生じ、鬱症状やパニック発作などを起こすケースもあり、不安障害は分類しきれない多岐に渡るさまざまな症状を持ちます。

引用元
不安障害|J-STAGE

不安障害で仕事上困ることは?

不安障害で仕事上困ることは?

不安障害があることで、仕事にまつわるさまざまな場面で、症状が次のような困りごとにつながってしまうことがあります。

人前で話すことがこわい

採用面接時に面接官と話すことや、仕事上の会議での発言、プレゼンテーションを行う場面で流暢に話せない、極度の緊張を感じる、動機や過呼吸発作等の症状が現れることがあります。

人の視線が気になり集中できない

同僚や上司の視線に対して過剰に反応することで、周りの見ている前で失敗してしまうことで、周囲からどのように思われるか等の妄想が働いてしまい、発言ができない、集中できない等の状況になることがあります。

電話でうまく話せない

同僚の前で電話の応対をすることに極度に緊張してしまう場合や、また電話相手に失礼のないようにと意識しすぎてしまうがために生じる緊張から声が震えてしまう、流暢に話せない場合があります。

会議・宴会など人が集まる場所に参加できない

大勢の前での発言行為そのものへの不安を感じてしまうことや、それをしたことによって引き起こす失敗への予期不安を感じることなどがあります。またうまく雑談ができないために宴会の席で委縮してしまい上手く話せないことがあります。

電車・バスなどに乗れない

パニック障害や広場恐怖症がある場合、不安や恐怖を感じて電車やバスなどに乗ることができず、会社に行くことができなくなることがあります。

不安障害をもって働く上で、自ら行える対処法

不安障害をもって働く上で、自ら行える対処法

不安障害は薬物・行動療法以外にも日々の取り組みの中で、症状の改善や予防を行うことができます。

食生活や生活習慣を改善する

食事や睡眠などの生活リズムを作る習慣の乱れにより心身の調子が崩れることで、不安や恐怖に対する心の抵抗力も低下します。十分な睡眠や栄養バランスの良い食事、適度な運動により基礎体力をつけることなどが、不安や恐怖への抵抗力をつけることにつながります。

自分がリラックスできる方法を複数もつ

不安が生じた際に、心の乱れを整えてリラックスする方法を身に着けておくことで、「不安が起こることへの不安」を防止し、不安症状の深刻化や悪循環を防ぐことができます。

1. 呼吸法

不安と恐怖を感じて呼吸が浅く速くなった場合は、呼吸を意図的にゆっくり、深く行います。呼吸の回数と心拍数は連動していると考えられているため、呼吸を整えることで、動悸などの身体症状がやわらぐ効果が期待できます。呼吸を整えるには、お腹をふくらませながら鼻から息を吸い、お腹をへこませながら口からゆっくりと息を吐く「腹式呼吸」が適しています。

2. 筋弛緩法

不安や恐怖を感じたときは、無意識のうちに体のさまざまな筋肉に力が入っています。したがって、筋肉をゆるめることで心の緊張もやわらぐ効果が期待できます。筋肉をゆるめる「筋弛緩法」には、さまざまなやり方があります。これらのやり方に共通する目的は、筋肉にいったん力を入れてから脱力することで、筋肉がゆるむ感覚を味わうことです。例として、歯をくいしばって顔全体に力を入れてから力を緩め、両肩を耳につけるように引き上げて力を入れてから、脱力して肩を落とすなどのやり方があります。

同僚や周囲の人に症状について打ち明ける

不安障害は外からではその辛さが分かりにくいため、上司や同僚など、身近な人に症状を伝えて支援を仰ぐこともひとつの方法です。業務量や勤務時間の調整をすることで、症状が和らぐ可能性もあります。上司などに伝えることに抵抗がある場合は、産業医や産業カウンセラーなど、社内の専門家に相談してみる等も方法の一つです。

通勤ストレスを減らす

通勤時の電車やバス内などの通勤環境に対して不安が生じやすい場合には、不安を感じやすい状況を避ける工夫をしてみましょう。

1. ラッシュ時間帯の回避

満員電車時間帯を避けて早めに職場に到着する方法や時差出勤の制度があれば利用する等も効果的です。

2. 各駅停車の利用

また主要駅しか止まらない「急行」「特急」や「快速電車」などですと、停車駅が少なく混雑するリスクが高く、すぐに降りられない状況や過度な混雑状況から不安症状を引き起こす可能性が高くなります。あえて各駅停車に乗車すれば、混雑を避けられる機会や降りる機会は多くなり、不安になってもすぐに降りることができます。また、「混雑していない」「すぐに降りられる」と感じるだけでも、不安になるリスクが低くなります。

3. 感覚緩和法

電車によってパニックになる方は、五感のうちのどれかが過敏に働いているケースがあります。視覚の緩和は乗車中のみ、本やスマートフォンを見るようにする。嗅覚の緩和はマスクを着用する。聴覚の緩和はヘッドフォン、イアーマフなどを着用する。触覚の緩和は上述した方法により満員電車を避ける。等の対処が効果的とされています。

業務量や職場環境を調整する

業務量に起因する不安の場合は、これらを減らす(もしくは増やす)方法がないか、上司や同僚に相談してみましょう。業務プロセスの効率化や、業務過重になりすぎている人は担当業務の再割振の可能性があるかも相談してみましょう。また環境的な要因がある場合には席の配置を変えてみる等、可能な範囲で行いましょう。業務内容に対する適性の低さが原因であれば、業務配置転換に関する相談をしてみるのもよいでしょう。

不安障害をお持ちの方に向いている仕事とは?

不安障害をお持ちの方に向いている仕事とは?

不安障害をお持ちの方に向いているのは、対人接触やイレギュラーなコミュニケーションが少ない定型的な仕事や、周囲の環境を気にする事がないテレワークがしやすい仕事です。

例えば特定の分野に集中できる研究職やエンジニア、定型作業が多い工場勤務や事務職、さらにテレワークがしやすいWebデザイナーやライターなどが挙げられます。

基本的に人との接触にワンクッション置いたり、落ち着くための時間や場所が取れたりする仕事が向いているといえるでしょう。

不安障害をお持ちの方が仕事を選ぶときのポイント

急に状況が変わったり、普段と違う対応をされると、パニックになったり強い不安を感じやすい傾向があります。

そのため、コミュニケーションの取り方を工夫しやすい仕事や、ルーチンが多い仕事を選ぶのがポイントです。

テレワークでも、基本的に文字のコミュニケーションを中心にできる仕事は、落ち着いて実力を発揮しやすいといえるでしょう。

万一パニックを起こしたり強い不安の症状が出た場合でも、クールダウンする時間や場所を取れる職場や働き方を選ぶことで、仕事と障害の折り合いを付けやすくなります。

引用元
労働・社会分野の調査(アンケート調査)|厚生労働省

不安障害をお持ちの方に向いていない仕事とは?

不安障害をお持ちの方に向いていない仕事とは?

接客や顧客折衝など、ケースバイケースでの判断が多く、毎回イレギュラーが発生しやすい、対人摩擦が強い仕事は向いていません。直接的な対人接触を求められる職場や仕事は基本的に向いていないと考えた方が良いでしょう。

特に数字や結果を求められ、責任が重く強いストレスがかかりやすい仕事も、不安障害を悪化させてしまうケースがあります。

例えば営業職や、ディレクター、教職などは、不安障害の方には適さない仕事といえます。

また、輸送などの業務は対人の接触は少なく一人で働けますが、不安障害で処方される薬には眠気などを伴いやすいことやパニック発作を鑑みると、運転を伴う業務全般が向いていません。

不安障害をお持ちの方が職場で求めた方がよい合理的配慮

合理的配慮として、パニックになったり不安で苦しくなったときに落ち着く時間をとったり、席を離れたり、飴を口に入れて過呼吸を抑えたりなど、発作を抑える動作を求めることがおすすめです。

その場で早く落ち着かなければいけないと思うほど、発作が強くなってしまうケースは多々あります。一旦その場を離れ、落ち着くために意識を逸らすことを許可して貰うのが良いでしょう。

また、一気に話さず、ひとつずつ1on1で会話するなどの合理的配慮を求めると、働きやすくなります。

不安障害をお持ちの方が、自分に適した仕事を探す方法

不安障害をお持ちの方が、自分に適した仕事を探す方法

障害者就業・生活支援センターや、就労移行支援事業所などの行政のサービスが利用できます。自分の現在の状況や、今後の就労の目標にあわせて、暮らしている自治体の支援窓口に相談してみましょう。

また、民間の障害者雇用に強い転職エージェントもおすすめです。障害者求人を専門で取り扱う転職エージェントには、キャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントのような専門スタッフが在籍しており、仕事探しをサポートしてくれます。

コロナ禍を経て働き方の選択肢としてテレワークが増えている中、働き方の同意さえ得られれば、不安障害をお持ちでも職業選択の幅は広いといえるでしょう。

まずはキャリアプランや仕事へのイメージをエージェントに相談してみてはいかがでしょうか。

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まとめ

まとめ

不安障害には様々な種類があるだけでなく、同じ種類の障害と診断された方でも、具体的な症状や発症の背景、必要な治療法がすべて個々人毎に異なります。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

一人で抱え込まずにまずはプロに相談することで、不安の解消法を模索してみるのはいかがでしょうか?

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。