ナビゲーションブックの必要性とは|メリットや作成手順・作成時のポイントも解説

「ナビゲーションブック」とは、障害をお持ちの方が自分の特徴や特性、対処法や配慮してほしいことをまとめたもので、働きやすい環境づくりに役立ちます。ナビゲーションブックを作成することで自分の特性に向き合えたり、企業からサポートを受けやすくなったりといったメリットも多くあります。
この記事ではナビゲーションブックの作成手順や作成時に注意したいポイントについても解説していきます。障害者雇用のプロによる、内定が近づくアドバイスもありますのでぜひ参考にしてください。

ナビゲーションブックとは

ナビゲーションブックとは障害をお持ちの方本人の特徴や障害の特性、事業所に配慮してほしいことなどを事業所や支援機関に伝えるためのツールです。

同じようなツールとして「私(わたし)の障害について」「自己紹介シート」のほか、厚生労働省も推奨している「就労パスポート」もあります。
「私(わたし)の障害について」「自己紹介シート」はいずれも自分の障害を簡易にA4用紙などに簡潔にまとめたもので、主に就職・転職時に使うことが多いです。

対して、ナビゲーションブックはしっかりと自己の障害や特性を深堀りしてまとめたものです。
就職・転職時だけではなく、就労後や支援機関の通所、その他コミュニティ活動をする場合などにも幅広く使えます。
ナビゲーションブックは一度作成して終わりではなく、バージョンアップしていくとより効果的です。

 
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詳しく知りたい方はNIVRが発行している『ナビゲーションブックの作成と活用』もご覧ください。
この記事では要点を絞って、解説していきますよ!

参考:東京都「令和3年度版 事業主と雇用支援者のための障害者雇用促進ハンドブック」

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ナビゲーションブックと就労パスポートの違い

「ナビゲーションブック」はもともと発達障害の方に向けて開発されたツールです。一方、「就労パスポート」は、精神障害のある方に向けて開発されたツールです。
いずれも、厚生労働省が所管する高齢・障害・求職者雇用支援機構(略称:JEED)が開発・作成しています。

ナビゲーションブックが障害をお持ちの方本人が主体で作成するのに対して、就労パスポートは支援機関からのサポートを受けながら作成し、必要に応じて支援機関に内容の確認をしてもらうといった違いがあります。
また、就労パスポートは就職・職場定着に特化している特徴をもちます。

参考:厚生労働省「就労パスポート」
厚生労働省「第1回 精神障害者等の就労パスポート作成に関する検討会」

ナビゲーションブックの必要性

ナビゲーションブックは様々な場面で使えますが特に就職・転職時において必要性が高まります。企業の視点・当事者の視点で考えてみましょう。

 
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就職時だけでなく就職後も周囲に自分を理解してもらうために長く使えますよ!

企業側が障害者の情報を詳しく知るため

障害をオープンにして働く場合、とりわけ「障害者雇用枠」にて就労したい場合障害者手帳(コピー)の提出の必要があります。
障害者手帳に書かれているのは原則等級のみで、身体障害の場合、大まかな障害名称が記されます。

 
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たとえば「精神障害者保健福祉手帳」に記載があるのは等級のみ。
発達障害(ADHD/ASDなど)なのか、うつや統合失調症といったメンタル障害なのかも、手帳だけではわかりません。

つまり、その人自身がどのような障害や特性があり、どのような仕事ができるのかはわかりやすく伝える必要があります。

ナビゲーションブックがあれば、企業は障害をお持ちの方本人が得意なこと、苦手なことを認識できます。

短時間の面接で自分のことを伝えるため

障害者雇用の面接では「障害について」だけでなく「志望動機」や「これまでの経験」など短い時間で様々なことを聞かれます。

 
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短い面接だと約30分程度のこともあります(主に一次面接)。
また面接では緊張してうまく話せなくなってしまう…ということもありますよね。

そのような場合、履歴書や職務経歴書に加えてナビゲーションブックを提出すると良いでしょう。一から障害について説明する手間が省け、自分にとって働きやすい環境を簡潔に伝えることができます。

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ナビゲーションブックを作成するメリット

ナビゲーションブックを作成するメリットは多くあります。

  • 自分の特性や特徴を整理できる
  • 企業や事業所から配慮やサポートが受けられる
  • 障害特性を知ってもらえる
  • 必要に応じてバージョンアップができる…など

詳しく見ていきましょう。

自分の特性や特徴を整理できる

ナビゲーションブックは自己分析をしながら作成するため、自分の特性や傾向に向き合えます。
自分の特性を自分で知ることができ、仕事との向き合い方がわかるようになります。

 
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企業・人事の目線では「自己分析や障害の自己理解ができているか?」を気にします。
ナビゲーションブックを作成しているだけで、「自己理解に努めているな」と印象アップにつながります。

\自己分析の方法はこちらで詳しく解説しています/

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企業や事業所から配慮やサポートが受けられる

就職先の企業に自作のナビゲーションブックを見せることで、障害をお持ちの方一人ひとりにあったサポート体制を整える準備ができます。
障害のためにできない理不尽な仕事の依頼や過剰な成果を要求されにくくなることが期待できます。また配属する部署や業務も検討してもらえる可能性も高いです。

 
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特に障害者雇用枠で働く場合に有効です。

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障害特性を知ってもらえる

障害特性は仕事上の得手不得手だけでなく、日常の行動やコミュニケーションの場面でも表れることもありますね。

特に発達障害の特性の出方は個々で異なります。
障害の特性を知ってもらうための努力不足や周囲の理解不足ゆえに、「性格が悪い」「常識がない」などととらえられる恐れもあります。
事前に知ってもらうことで、職場や周囲の理解が深まります。

 
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職場のトラブルの多くは「悪意」によって引き起こされるのではなく、「知らなかった/伝えていなかった」ことで起こるもの。誠実に丁寧な説明をすることで働きやすさがアップしますよ。

必要に応じてバージョンアップができる

ナビゲーションブックは経験の中で改善点や改良点があれば、随時作り変えていきます。
業務の内容や配属先が変わったときにもナビゲーションブックを改善するだけで、職場で共有が可能です。

 
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仕事の幅を広げる・キャリアアップの助けにもなります!

ナビゲーションブック見本・文例

実際のナビゲーションブックは上の図のような項目や内容です。

  • PRポイント・得意なこと
  • 苦手なこと
  • 自分で対処していること
  • 周囲に知っておいて欲しいこと・配慮が必要なこと

また、「作業や仕事のスキルに関して」・「コミュニケーション面に関して」・「思考・行動に関して」などといった観点から検討してみると良いですね。

ナビゲーションブックの文例

それではどのように書くのか、その文例を見てみましょう。

【作業・仕事のスキルに関して】
<PRポイント>
  • 細かい誤りに気付くことができます。特に誤字脱字や数値のチェックなどは得意です。
  • 前職でも給与や経費精算のWチェックで貢献ができていたと思います。
  • <苦手なこと・心配なこと>
  • 一方で、集中しすぎてしまい、時間を過ぎたり、疲れすぎてしまうことがあります。
  • <自分で対処していること>
  • 音の出るタイマーを使って、時間を過ぎることが無いようにしています。
  • また60分に一度は小休憩を取り、切り替えをおこなってから業務に戻るようにしています。
  •  
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    フォーマットに決まりはないので、知っておいてもらいたいこと・伝えるべきことを自由に書いてみましょう。

    ナビゲーションブックの作成手順

    実際にナビゲーションブック作成は以下のような流れは……

    1. 自分のことを書き出す
    2. プレナビゲーションブックを作成する
    3. プレナビゲーションブックを職場実習などで使用する
    4. 職場実習や模擬面接をもとに振り返りをおこなう
    5. ターゲットを決めてナビゲーションブックを作成する
     
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    ②③④は省略してもOKです!
    ここでは最も丁寧な手順、特に「就労移行支援を利用している方」のケースを紹介します。

    参考: 天川村公式サイト役所ページ「サポートブック リンクプラス 」

    1.自分のことを書き出す

    まず、今までの経験で気づいた自分の得意なことや苦手なことを書き出します。
    服薬や通院の記録なども記載しておくと良いでしょう。

    作成時は振り返りの記録や実習シートなどを参考にしてください。
    何を書くか悩んだら、支援者や身近な家族や友人にサポートしてもらっても良いでしょう。
    主観だけでなく、客観的な意見も参考にするとより効果的です。

     
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    書き方に悩んだら、DIエージェントや就労移行ワークイズにも気軽にご相談くださいね。

    2.プレナビゲーションブックを作成する

    「プレナビゲーションブック」とは、実習用自己紹介書を指します。本格的な就労の前に、ナビゲーションブック作成の準備として、たたき台を作るイメージです。

     
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    就労移行支援や職業訓練での実習の前などに作成すると良いでしょう。
    就労移行支援のプログラムに含まれていることもあります。

    自分のことについて整理したものを元にプレナビゲーションブックを作成します。
    強みや苦手なものを作業面や対人面など項目ごとに振り分けていき、項目は書きやすいように適宜変更していきましょう。

     
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    書き出すときは手書きで、プレナビゲーションブックを作成する時はパソコンで作ると、後で修正する時に便利です。

    3.プレナビゲーションブックを職場実習などで使用する

    就労移行支援のひとつとして、事業所と提携のある一般企業で短期間の就労ができる職場実習が経験できます。
    職場実習だけでなく、通所訓練中や模擬面接でも利用が可能です。
    日常で感じた自分の特徴と働くうえで感じる特徴が一致するとは限らないので、実際に手や体を動かしてみて気づいたことを書き足していきましょう。

     
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    支援員がいる場合は、プレナビゲーションブックを見せながらフィードバックを受けましょう。

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    4.職場実習や模擬面接をもとに振り返りをおこなう

    職場実習や模擬面接が終わったら、プレナビゲーションブックを使ってよかった点や改良点を書き出してみましょう。新しく気づいた自分の特徴を書き出します。プレナビゲーションブックは、使用と振り返りを複数回おこなうことで、より正確に自分のことをナビゲーションできます。

    5.ターゲットを決めてナビゲーションブックを作成する

    いよいよ就職・転職に向けて、「ナビゲーションブック」を作成します。
    まず「いつ、誰に向けて作るナビテーションブックなのか」を明確にしてください。

    面接で人事担当向けに準備する場合は、得意なことや苦手なこと以外に、服薬や通院などの健康面も明記しましょう。
    就職後には、面接で伝えた内容だけでなく配属先により具体的な特徴を伝えましょう。

     
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    支援者や転職エージェントと情報を共有する場合は、自分の特徴や支援に向けた自分の考えや気持ちを伝えることが大切です。


    ナビゲーションブック作成時のポイント

    ナビゲーションブックを書く際に気を付けたいポイントもおさえましょう。

     
     
    相手が読みやすい形式で作成する
    配慮をお願いするだけでなく対処方法も提示する

    相手が読みやすい形式で作成する

    ナビゲーションブックには、決まった形式や項目はありません。
    しかし、自分も相手もわかりやすい形式で作成する配慮が必要です。長文でダラダラと書くのではなく、必要なことだけをシンプルに書きましょう。

     
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    必要に応じて、箇条書きや表を使ったり、「このようにパーティションがあると安心して仕事ができます」と写真を示したりするのも良いですね。

    配慮をお願いするだけでなく対処方法も提示する

    ナビゲーションブックは確かに配慮を受けやすくするためのツールですが、相手側に配慮してもらうことだけを考えないようにしましょう。
    自分でできる対処方法を示してお互いに気持ちよく仕事ができる環境を整えることが大切です。配慮してほしいことばかりでは、企業や事業所は不安や負担を感じやすくなります。

     
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    「少しの配慮があれば働けるんだ!」という前向きさ・真摯さをアピールしつつ、「これならうちの会社でも働けそう」「一緒に働きたいな」と思ってもらえる内容にできると良いですね。

    ナビゲーションブックは第三者も巻き込んで作成!【相談できる場所一覧】

    ナビゲーションブックは一人ひとり異なる障害や必要な配慮を記し、より安心して能力を発揮できるように企業や周囲の環境を整えるための手引き書です。

    しかし、なかなか障害を把握し、相手に伝わりやすいように書くのは簡単なことではありません。書き方に悩んだら、周りの人に手伝ってもらいましょう。第三者の意見があることで、より効果的なナビゲーションブックが完成します。

    障害者雇用に特化したエージェントだと障害の専門知識に加えて、転職市場や企業の情報にも精通しています。
    中でも、DIエージェントでは一人ひとりに丁寧なヒアリングをおこなった上でサポートをしています。
    「ナビゲーションブックを作成したのだけど…よりブラッシュアップするためのアドバイスが欲しい!」「人事担当者が気になるポイントは?」
    そのようなこともお気軽にご相談ください。

    監修:高橋 平
    障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザー。早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用ソリューション営業、転職キャリアアドバイザーと幅広い領域を担当。現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。