潰瘍性大腸炎とは?原因や症状、仕事の悩みなどをクチコミ調査!

潰瘍性大腸炎とは働き盛りの世代に発症が多い難病です。今回は「潰瘍性大腸炎」の基本的な情報、症状によるお悩みなどをご紹介します。
また「障害、病気のある方の仕事・職場口コミサイト アンブレ」の協力をいただき、「おすすめの仕事・職場の傾向」の調査結果も記事の後半ではお伝えします。

潰瘍性大腸炎をお持ちの方が抱える悩みとは?

潰瘍性大腸炎とはどのようなものでしょうか。

2. 潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらん(※)や潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。

※編集部注:「びらん」とはただれることを意味します。
引用:難病情報センター「潰瘍性大腸炎(指定難病97)」

原因不明の指定難病であり、根本的な治療方法は確立されていませんが、通院と適切な治療によって通常生活を送ることもできます。また症状が現れる「活動期」と症状が落ち着いている「寛解期」があり、一度寛解期を経て再発することを「再燃」ともいいます。

20~30代で発症することが多いと言われていますが、40~50代の患者も目立ってきています。令和元年度の「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」調査からは、少なくとも国内に12万6,603人の患者がいるとわかります。
安倍元首相や女優の高橋メアリージュンさん、野球選手の安達了一さんも潰瘍性大腸炎と公表されています。

参考: 難病情報センター「潰瘍性大腸炎(指定難病97)」

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クローン病との違い

腸に炎症を起こす病を総称して、炎症腸疾患炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease :IBD)といいます。潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)はこの代表的な病で、いずれも指定難病で共通点も多くあります。
潰瘍性大腸炎とクローン病との違いは侵されている腸の部位です。潰瘍性大腸炎はほぼ大腸のみにしか起こらないのに対し、クローン病は口から肛門までの消化器官全体で起こりえます。クローン病は肛門部に「痔ろう」を伴うこともあります。

参考:MSDマニュアル家庭版「炎症性腸疾患(IBD)の概要 – 03. 消化器の病気」
日本消化器病学会ガイドライン「炎症性腸疾患(IBD)ガイド」

障害者手帳や障害年金を取得できることも

潰瘍性大腸炎やクローン病の方は、病状やその他身体の様子によって障害者手帳を取得し、障害者総合支援法の対象となる福祉サービス等を利用できることがあります。
その場合、内部障害(ぼうこうまたは直腸機能障害)として身体障害に認定され、身体障害者手帳の取得ができます。障害者手帳を持つ人が配慮を受けながら働ける「障害者雇用枠」での就労を叶えることもできるでしょう。

経済的な支援策としては、「指定難病患者への医療費助成制度」の他、障害年金が受給できるケースもあります。 

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潰瘍性大腸炎の症状と治療法

潰瘍性大腸炎の症状は下痢・血便・腹痛などが代表的です。そのため頻繁にトイレに行かなければならないこともあるでしょう。
他の腹痛や下痢などと区別する必要があるため、細菌検査や内視鏡検査をおこなって診断がおります。
悪化すると、発熱・体重減少・貧血など全身に症状が広がったり、大腸がんなどにまで重症化したりといったこともあるので注意が必要です。

治療方法として一般的なものは薬を飲み続けながら経過観察をすることです。近年では治療薬の開発も進んでいます。重症化している際は外科手術(大腸全摘術)がおこなわれたりもします。

ストーマ/ストマ(人口肛門)

手術をおこなった場合、ストーマ/ストマ(人口肛門)を増設することもあります。
便はお腹に貼られたストーマ用の装具(パウチ)へ溜まっていきます。便の処理やガス抜き作業のため、やや長い時間トイレで作業をおこなうこともあるでしょう。

参考:難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班)「炎症性腸疾患の手術についてQ&A」
「NPO法人 ストーマ・イメージアップ・プロジェクト-SIUP(しーあっぷ)- ストーマ(人工肛門・人工膀胱)について、正しい情報提供と理解を深めるためのチームです」

潰瘍性大腸炎の原因はストレスに関係あり?

潰瘍性大腸炎の原因は未だはっきりと分かってはいません。
「ストレスが原因だ」という声もありますが、難病情報センターは以下のような見解を出しています。

Q.精神的な要因でこの病気が起こったり、悪くなったりしますか?
A.まず、この病気は精神的なものが原因で発症することはありません。しかし、心と体は分離できませんので、肉体的、精神的なストレスで腹痛や下痢と言った再燃症状を惹起することは否定できません。ストレスはあらゆる病気で症状を悪化させる要因の一つです。
 
CA

悪化や進行を防ぐためにもストレスの原因からは離れることをおすすめいたします。

潰瘍性大腸炎をお持ちの方の悩み

潰瘍性大腸炎をお持ちの方の悩み慢性的な腸の不具合や腹痛により「生活に制限がある」「常にトイレのことを考え続けなければならない」などといったQOLの低下が深刻です。

仕事に関していえば、安倍首相が潰瘍性大腸炎を理由に辞任をしたように、思うように仕事ができなくなることもあるでしょう。また本人だけでなく、職場の環境や働き方が合わなかったり、職場の無理解に苦しまれたりする方は少なくありません。

 
CA

治療法も確立しつつある今、フルタイムでバランスを取りながら働くことも充分可能です! 「炎症性腸疾患患者さんの 就労について Q&A」というハンドブックも参考にしてみてください。

潰瘍性大腸炎をお持ちの方の仕事選びで気を付けること

ここからはアンブレの「潰瘍性大腸炎当事者150人以上のクチコミ」をもとに、より「仕事」にフォーカスした内容に迫っていきましょう。当事者は働く上でどのようなことを気にかけているでしょうか? ご自身が仕事選びをする際にも役立ててください。

トイレへの配慮

職場でどのような配慮を受けましたか?

20代・男性/コンサルティング・専門サービス系/営業

トイレの近くに座席を配置してくれたり、病気が原因でトイレへ離席することなどに対しても温かく見守ってくれたりという配慮をしてもらうことができましたので、私としてもそこまでストレスを感じずに仕事をすることができました。
引用:アンブレ「潰瘍性大腸炎のある方がお仕事、雇用されている企業一覧」

潰瘍性大腸炎は多い時には一日に何十回もトイレに行かなければならない方や坐剤・注腸製剤の投薬のため時間を要する方もいるようです。トイレへの行きやすさは必ず入社前にチェックしたいところです。

✓いつでもトイレに行きやすい業務内容、環境か?
✓トイレは十分の数があるのか?
✓和式しかないのか? オストメイトトイレの有無
 
CA

「企業に直接聞くのは気が引ける…」という方はご相談を! エージェントを通して企業に設備や環境を確認できます。

参考:「潰瘍性大腸炎の皆さんへ知っておきたい治療に必要な基礎知識 」

食事の自由度

企業や周囲からのサポートはありましたか?

50代・女性/金融系
トイレのことは理解してくれました。あと食事会のときは「これ食べられる?」と聞いてくれました。(食物繊維の多いものは食べられないため)。 
引用:アンブレ「潰瘍性大腸炎のある方がお仕事、雇用されている企業一覧」

寛解期には厳密な食事制限は不要とされる潰瘍性大腸炎ですが、脂っこいものやアルコール、食物繊維の多い食べ物はなるべく避けるようにといわれています。 あらかじめ周囲に伝えておくとよいでしょう。

 
CA

最近は少なくなりましたが、会食や接待、飲み会の頻度も見落としがちなチェックポイントです。

ストレスが多い環境、ハードな働き方は向いていない

職場の満足度を教えてください

20代・男性/建設系/事務
労働時間が長時間になりがちだった点。朝8時過ぎから夜9時程度まで。潰瘍性大腸炎には、過酷な環境だったと思います。
引用:アンブレ「潰瘍性大腸炎のある方がお仕事、雇用されている企業一覧」

ストレスやハードな働き方をきっかけに潰瘍性大腸炎が再燃する恐れもあります。 潰瘍性大腸炎は薬の影響で、「体力が落ちる」「疲れやすくなる」といったこともあるため、肉体労働や出張が多い仕事、通勤時間が長い、満員電車で体力を消耗してしまう…といった職場環境は向いていません。 ストレスフルな環境や長時間残業がある職場は避けられるとよいでしょう。

クチコミから判明!潰瘍性大腸炎をお持ちの方にオススメの仕事・職場とは?

※口コミの項目「職場に対する満足度の理由」を分類しプラス評価している内容を集計して割合を抽出。6名未満の少数回答は除く。

画像引用:アンブレ「潰瘍性大腸炎の方の転職、152人の口コミから向いている仕事を探す」

上記のデータは潰瘍性大腸炎当事者のクチコミ152件を分析した満足度調査から「職場の満足度が高い理由」を分析したものです。
職場への満足度が高い理由は「病気や障害に対して理解がある」「休みがとりやすい」などが上位に挙がりました。 具体的なクチコミや事例を見ていきましょう。

トイレへの配慮

口コミ

60代・男性/運輸系/事務
自宅から近いこともあり、直腸ストマの便を排泄する際には、気軽に帰宅することができた。 積極的に助成金を受けてトイレを用意する努力ができれば、職場環境は良いほうだと考えている。
引用:アンブレ「潰瘍性大腸炎のある方がお仕事、雇用されている企業一覧」

当事者のみなさんが特に気にするのが、高頻度・やや長い時間、トイレのために離席をしても理解があることです。 また、頻繁に利用をするのでトイレには十分な数があり人を待たせる心配がなく、きれいで使いやすいと満足度も上がるようです。

オストメイトトイレに対する助成金

上記で紹介したクチコミでも言及されているように障害や難病をお持ちの社員を雇う企業に対してバリアフリー環境を整える「第1種作業施設設置等助成金」という制度があります。過去にはこのような事例がありました。

措置の内容:オストメイト対応トイレへの改修
認定理由:直腸機能障害により排便に不便を強いられている内部障害者のために、ストーマ(人工肛門)周辺及びストーマ装具の洗浄などをするスペース確保のためにトイレのスペースを拡張したり、オストメイト(人工肛門を造設した人)に対応した設備を整備することは障害特性に配慮した措置と認められるため。
引用:認定事例:障害者作業施設設置等助成金(第1種)

「今いる会社で働き続けたい! そのためにも働く環境を良くしたい」と思う方は、会社へ提案をしてみてはいかがでしょうか?

理解や心遣いはあっても詮索されない環境

企業や周囲からのサポート

20代・女性/エンタメ系
あまり大勢の方には知られたくない病気なので同じチームのメンバーだけに話しており、具合が悪くなったりすると休憩スペースに連れて行ってもらい、落ち着くまでゆっくり休ませてくれました。自分の仕事も代わりのメンバーが手伝ってくれたりなど、とても優しくしてもらえたのを覚えています。 
引用:アンブレ「潰瘍性大腸炎のある方がお仕事、雇用されている企業一覧」

体調が悪化した時に気遣いが感じられる環境は安心して働けますね。目に見えない病気であるため症状や仕事への影響についてこちらから具体的に丁寧に説明しておくことも重要です。しかし普段働いている時は「他の社員と変わりなく接してくれることが嬉しい」との声もありました。 一方、「潰瘍性大腸炎についてあまり知られたくない」と思う方もいます。開示の範囲については、入社前にすり合わせをしておきましょう。

通院配慮や休みがとりやすい環境

口コミ

20代・女性/シンクタンク/事務
・病気に対する理解があり、突発的な欠勤に寛大。 無理せず働けるよう勤務日や勤務時間を融通してくれる。
・具合が悪い時は早退をするよう勧められ、ありがたかった。
引用:アンブレ「潰瘍性大腸炎のある方がお仕事、雇用されている企業一覧」

 潰瘍性大腸炎をお持ちの方の中には、定期的な通院が必要となったり、急に体調が悪化しお休みが必要となることもあるでしょう。 このクチコミにある「早退をするよう勧められる」ような気配りは、自分からなかなか言い出せない方にとってもありがたい配慮です。

 
CA

小まめな休憩は可能か?有給休暇の日数や柔軟な勤務形態(フレックス制度など)はあるか?現場はゆとりある人員配置か? これらも要確認です。

DIエージェントがオススメする働き方はテレワーク

「理解があっても頻繁にトイレに立つのは気が引ける……」「長時間の通勤が大変だ」という方へオススメしたい働き方はテレワークです。 DIエージェントは新型コロナウイルス感染症の流行前から障害者雇用枠でのテレワーク就労に力を入れてきました! 人目が気にならない、自分のペースでコツコツとお仕事を進められる事務系のお仕事を多く取り扱っております。

DIエージェントを通じて転職を成功された事例

F様は地元の公務員として直近まで就業されている中で、障害の事情から通勤に負担を感じており、テレワークでの就業を希望しDIエージェントにご登録いただきました。 マッチングの末ご紹介したのはFさんのお住まいから離れたエリアの建設会社です。 (中略) F様が過去建設会社にて事務職を経験していたことも活き、選考を通じて高くご評価いただけました。「テレワークであれば特段配慮なく就業できるため、知識や経験を活かしてキャリアアップしたい」というF様の希望も叶い、登録からわずか1ヶ月でフルリモート&正社員の好条件でのご内定となりました。
引用:DIエージェント「新卒就活も公務員からのキャリアチェンジも…!2021年4月の就職・転職成功事例」

このようにこれまでの経験を活かして、キャリアアップを叶えることもできるのです。 もちろん通勤ありの求人も全国多数取り揃えておりますので、お気軽にご相談ください。 より詳しくは以下からご確認いただけます。

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まとめ

外見からはわかりづらくても、 長期にわたって苦しみが続くことも多い潰瘍性大腸炎。周りの理解や助けを得ながら、希望のライフスタイルを諦めることなく治療を続けられる道を探していきましょう。
キャリアのお悩みはDIエージェントへも気軽にご相談ください。皆様が生き生きと働くためのお手伝いができれば嬉しいです。

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。