精神障害の方の就職は大変?就活のポイントやチェックされやすい点を理解しよう

精神障害とは、精神的な病気や不調によって生活に支障を感じる障害です。障害の度合いによっては、日常生活に限らず就活や仕事においても困難が生じる場合があります。

そこで今回は、精神障害の方が就活で感じやすい壁や就活時のポイント、企業から見られやすい点、求職活動で役立つサービスについて解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないように、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただければ幸いです。

精神障害とは

精神障害とは、精神的な疾患・障害により日常生活に支障をきたしている状態。症状が悪化すると、判断能力が低下したり、行動のコントロールが効かなくなったりすることがあります。

精神障害のなかに統合失調症・気分障害・てんかん・依存症などの種類があり、それぞれ異なる症状があることが特徴です。

引用元
精神障害 障害特性|ハートシティ東京
精神障害(精神疾患)の特性(代表例)|厚生労働省

精神障害だと就職は難しい?

令和2年に出された厚生労働省のデータでは、「精神障害者は身体障害者や知的障害者に比べて職場定着率が低い傾向」とされていました。

しかし、2018年に「障害者雇用促進法」が改正されて精神障害者も雇用義務の対象に含まれることになり、令和4年のデータでは雇用者数が対前年比で11.9%も増加。身体障害者は0.4%減、知的障害者は4.1%増というなか、伸び率が非常に高い結果になりました。

法定雇用率も上昇傾向のため、今後は一層働きやすくなっていくことが予想されています。

引用元
障害者雇用の促進について 関係資料|厚生労働省
令和4年障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省

 
キャリアアドバイザー
精神障害に対する正しい知識が一般に浸透していないことから、偏見や誤解を受けることもあります。しかし、服薬や適切な治療によってある程度症状を抑えられるため、周囲に溶け込んで問題なく社会参加されている方も多いです

精神障害の方が就活で抱えやすい不安や悩み

では、精神障害をお持ちの新卒者は、仕事探しの際にどんな困りごとを感じやすいのでしょうか。

障害について伝えるべきか・タイミングはいつか

採用面接の際に障害のことをオープンにしなければならないのか、伝えずに就職してはダメなのか、就職後に伝えてもよいのかなどに悩む方が多いです。しかし、必ずしも開示する必要はなく、就職した後に上司など一部の相手にのみ伝える方法でもかまいません。

 
キャリアアドバイザー
自分の障害について伝えるかどうかは、強制ではありません。職場に障害のことを開示して働く方法を『オープン就労』、開示せずに働くことを『クローズ就労』と呼びます

▼関連記事
クローズ就労とオープン就労の違いとは?それぞれの概要やメリット・デメリットを解説

自分の状態をどう説明すればいいのかがわからない

精神障害をオープンにするにしても、どこまで伝えるべきかわからない、自分でも把握できていない部分もあるかもしれないなどの不安を抱える方もいます。どのように説明するべきなのかは悩ましいところです。

また、目に見えづらい障害のため、理解してもらえないのではという不安も抱きがちという傾向があります。

求めるべき配慮事項が自分でもわからない

まだ社会人経験がない就活生にとって、職場にどのような配慮を求めればいいのかがイメージしづらいことも多いでしょう。実際に働き始めてから、必要に応じて配慮をお願いすることも可能です。

ストレスやプレッシャーがきつい

就活はただでさえ緊張やストレスを感じるもの。精神障害があると、就活のスケジュール管理や、卒業後に生活スタイル・環境が変わることに対する不安も大きなストレスになります。症状悪化の恐れもあるので、精神的な負担を抱えすぎないよう注意が必要です。

精神障害の方が就活をするときのポイント

つづいて、精神障害をお持ちの方が就活する際のポイントを解説します。

1. 自分の障害の特性を理解する

同じ病名であっても、みんながみんな同じ症状を持っているわけではありません。個人差があるため、自分にはどんな症状があり、どんなことができてどんなことが難しいのかということを理解することが重要です。自己理解を深めないと、周囲への説明も困難でしょう。

2. 働き方を考える

上記の特性を考えた上で、フルタイムで働けるか、短時間業務がいいのか、通勤は可能かテレワークがよいのかなど、どのように働くか・自分に合った働き方はどんな形なのかを考えます。

フルタイムで仕事をすることに慣れていない新卒の精神障害の方の場合、アルバイト・パートで徐々に慣らしてから正規雇用に移行する方法が適していることもあるでしょう。

3. 一般枠か障害者枠かを検討する

障害の有無にかかわらず応募できる「一般枠」のほか、障害者の方を対象にした「障害者雇用枠」で働く方法もあります。障害者雇用枠では、障害をオープンにすることで周囲の方々から配慮を受けながら働けることがメリットです。

▼関連記事
障害者雇用のメリットとデメリット|一般雇用との違いや障害者雇用枠の仕事探しについて解説

「精神障害者保健福祉手帳」は持っている?

障害者枠での応募は、障害者手帳を持っている場合のみ可能です。持っておらず障害者枠で応募したい場合、申請して取得しなければなりません。申請には医師の診断書が必要なため、準備を整えてから自治体に申し込みましょう。

▼関連記事
精神障害者保健福祉手帳取得のメリットとは?申請方法やポイントを解説

 
キャリアアドバイザー
申請から手帳の交付までには数ヶ月かかります。就活のスケジュールと照らし合わせながら、早めに申請しましょう

精神障害の方の面接で企業がチェックしている点

次に、就活生が精神障害を開示して応募する際、面接官からチェックされているのはどんなところなのかを知っておきましょう。

きちんと意思疎通(コミュニケーション)ができるか

たとえば、採用後に連絡なく突然仕事に来ないという事態になっては、当然企業側も困ります。そのため、きちんと意思疎通を図れて、何かあったときは情報共有や相談ができるかは重視されやすい点です。

また、業務を遂行するにあたって大切な、「職場の上司や仲間と問題なく円滑にコミュニケーションが取れるかどうか」という部分も見られるでしょう。

病状が安定しており長く働けそうか

障害の状態が安定していないと、就業後のパフォーマンスに不安があるため採用率が低くなってしまいます。

症状が安定していれば、心身の調子の波が出づらいと考えられ、長く働けるのではという期待から採用の可能性が高まりやすいでしょう。長く働く意欲を見せることも重要です。

人柄や適性

精神障害の方に限らずですが、応募者のスキルや強み、得意なことなど、人柄や適性も見られます。入社後のミスマッチを防ぐためにも、面接時にしっかりアピールしましょう。

周りに家族などの理解者がいるか

精神障害の方の就労においては、理解・協力してくれる支援者の存在があるかどうかも大切です。たとえば精神障害の方が急に体調を崩して欠勤する場合、本人が連絡できなければ家族などが代わりに会社に伝える必要があります。

連絡がないままだと本人の安否も気がかりなため、就労を前向きにサポートしてくれる方の存在はチェックされやすいでしょう。

精神障害の方が就活時に利用できるサービス

精神障害をお持ちの新卒の方が就職するには、就活をサポートしてくれる公的または民間のサービスを活用するのがおすすめです。どのようなサービスがあるのかを紹介します。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。施設内に設置されている検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門の相談員を配置した援助窓口が設けられており、障害をお持ちの方の就職活動支援を行っています。

一般枠の求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗り、障害をお持ちの方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

引用元
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

▼関連記事
ハローワークとは?メリット・デメリットや障害のある方が利用するときのポイントまで解説

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害者の方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。各都道府県に、最低1カ所以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を案内するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携し、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといったサポートを行っています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

▼関連記事
地域障害者職業センターの支援内容とは|障害者就業・生活支援センターとの違いまで解説

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害者の方の職業面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事面と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などとも呼ばれます。

なかぽつは、令和5年8月22日時点で全国に337カ所設置されています。NPO法人や社会福祉法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就労サポートのほか、事業所に対する障害者雇用への助言や、関係機関との連絡調整などを行っています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和5年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

▼関連記事
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ/就ぽつ)とは?受けられる支援や利用手順を解説

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、訓練や就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス施設です。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者は、事業所に通いながら就労に必要な知識や技術を身につけ、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上存在し、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

▼関連記事
【5分でわかる】就労移行支援とは?制度や「就労継続支援」との違い、お金についてやさしく解説

障害者雇用に強い転職エージェント

障害者枠を持っている企業や障害者雇用を積極的に行う企業の求人に特化した、就職・転職エージェントを利用するのもよいでしょう。

障害者の方の求職活動における独自のノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての就職で不安を抱える新卒者も心強いです。そのエージェントでしか取り扱っていないような、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

エージェントでは、高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上で企業とのマッチングを行ってくれるのが特徴です。

応募者の症状や状況に合わせて、就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいでしょう。

▼関連記事
障害者専門の人材紹介会社とは?利用するメリットやマッチングのコツ

精神障害の方も自分に合った方法で就活を成功させよう

精神障害にもさまざまな種類があり、特性は人それぞれなので、自己理解を深めて合理的配慮のもとで働けるのがベストです。

精神障害の方の就活時のポイントや面接時に見られやすい点もお伝えしたので、採用を手に入れて長く働き続けるために、自分に適した働き方・職場を見つけましょう。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でもかまいませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

▼関連記事
・障害者採用枠で働くことについて、メリット・デメリットを解説しています。これから就職・転職を検討されている方はぜひご一読ください。
障害者採用とは?一般採用との違いやメリット・デメリット、企業選びのポイントをわかりやすく解説!

・「就職・転職活動は検討しているけど、エージェントって何?」という方に向けて、エージェントの特徴や利用方法について解説しています。
障害者枠では転職エージェントを利用すべき?メリット・注意点を含め解説!

監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。