パニック障害になったら仕事は続ける?休職?復職や転職時のポイントも解説

急に頭が混乱して仕事が手につかなくなる、めまいや震えが止まらないなどの症状が現れたら、パニック障害かもしれません。そこで、今回はパニック障害の概要や、パニック障害になったときに仕事はどうすべきかについて詳しく解説します。

さらに、休職時の過ごし方や休職後に仕事を始めるときのポイントも伝えるので、パニック障害が疑われる方は今後の参考としてご覧ください。

パニック障害とは?3つの種類

パニック障害とは、突然不安や恐怖感などに襲われる精神疾患の一種です。肉体にも影響が出て、息切れ・動悸・めまい・手足の震え・呼吸困難などが起きるケースがあります。

苦しい時間が何の前触れもなく起こり、いつどこで起きるかもわからないため、一度パニック障害になると常に不安を感じやすくなる方も多いことが特徴です。

パニック障害は3つの種類に大別されるので、下記でそれぞれについて解説します。

パニック発作

パニック発作はパニック障害のなかでも代表的なもの。状況や場所などに関係なく、急に発作が起こることが特徴です。発作によって強い不安に見舞われ、悪寒・めまい・震え・動悸・窒息感などの症状が現れます。

数分から数十分続くケースもあり、症状が出ている本人にとって非常に苦しい状態です。

予期不安

予期不安とは、上記の発作を繰り返すうちに、「また発作が起きたらどうしよう」という恐怖感を感じるようになった状態です。ネガティブな感情がより強くなり、心身に大きな負担がかかります。

広場恐怖

広場恐怖とは、「パニック障害の症状が現れたときに逃げられない」状態になるのを恐れ、以前発作が起きたときと同様のシチュエーションや場所を回避しようとする状態。

「広場」という名前がつきますが、広い場所に限定されず、エレベーターや乗り物のような閉鎖的な空間、人が多く集まる場所などさまざまです。外出が難しくなり、日常生活に支障が出るほか、仕事に行けなくなってしまう方もいます。

パニック障害と診断されたら仕事はどうする?

では、パニック障害になった場合に仕事はどうすればいいのか、3つの方法について理解しましょう。

1. 仕事を続けながら治療する

状態によりますが、まずは仕事と治療を両立する方法があります。仕事ができる状態なら、働きながら並行して治療しましょう。仕事を続けられれば、収入が途切れないため経済的に安心です。

ただし、通院のための時間を確保する必要があるため、状況によっては職場に相談して勤務時間の調整をしてもらいましょう。

2. 休職する

パニック障害の症状を抱えたままで今の仕事を続けるのは難しい、という場合は、休職という選択肢もあります。一度職場を離れ、心と体を落ち着けて治療に専念しましょう。

なお、休職制度の有無や詳細は職場によって就業規則が異なるため、人事部などの担当窓口に確認してください。期間は3~6ヶ月程度であることが多いようです。

 
キャリアアドバイザー
体調が悪いのに無理を続けると、パニック障害が悪化するどころか、うつ病などを併発してしまう恐れもあります。休職中は給料の約3分の2に相当する『傷病手当金』をもらえる可能性があるため、経済面で不安な方は職場の人事部などに確認しましょう

3. 転職も見据えつつ退職する

休職がない会社や、今の仕事を続けるのが困難な状況の場合、休職しても復帰が難しい場合などは、将来的な転職を視野に入れながら仕事を辞めるという選択肢も。

退職したら、まずは治療を優先してください。落ち着いてきてから働き方や次の仕事について考えればよいので、しっかりと心身を休めましょう。

パニック障害で休職するときはどう過ごす?

パニック障害で休職することになったら、自宅ではどのように過ごせばいいのでしょうか。ここでは、休職期間中の過ごし方について見ていきましょう。

しっかり休養する

休職中は心と体を休めることが最優先です。十分な睡眠時間を確保し、ストレスを避け、リラックスしながら日々を送ってください。

反対に、仕事のことや嫌なことはなるべく考えずに過ごしましょう。「自分が休むことで職場に迷惑をかけている」などと罪悪感を感じる必要はありません。

好きな音楽を聴く・アロマを楽しむなど、趣味に打ち込むのもよいでしょう。

生活習慣を整える

生活習慣を見直し、食事の栄養バランスを考えたり、起床・就寝の時間を決めたりして、体内のリズムを整えることも大切です。糖質や脂質を摂りすぎている場合は、健康的な食生活を意識し、偏らないようにしっかりと他の栄養素も摂取しましょう。

また、体内時計を整えると自律神経も整いやすくなり、精神的な安定を見込めるため、規則正しい生活を心がけてください。

落ち着いてきたら体力を回復させる

体調が落ち着いてきたら、適度に体を動かして体力をつけましょう。ハードな運動ではなく、ストレッチや散歩などの軽い運動からでかまいません。また、体調が悪いときは無理をせず休んで大丈夫です。自分のペースで行ってみてください。

復職に向けた準備をする

仕事に戻れそうになってきたら、徐々に職場復帰の準備をします。仕事に行く日と同じ生活リズムで一日を過ごすほか、職場とも相談し、はじめは時短勤務にしてもらう、必要に応じて配置換えや業務内容の変更をしてもらうなど、調整を依頼するとよいでしょう。

復職を支援してくれる「リワークプログラム」などを利用するのもおすすめです。医療機関や地域障害者職業センターなどで実施されているほか、企業が独自に行っているケースもあるので、自分に合ったプログラムを探してみましょう。

 
キャリアアドバイザー
復職のタイミングは自分で判断するものではなく、医師や職場と十分相談しながら決めることが大切です。また、以前と同じような働き方が困難・職場の意向と合わないなど、場合によっては復職せず退職したほうがよいケースもあります

復職や転職するときのポイント

パニック障害の方が休職または退職したのち、職場に復帰する・新しい就職先を探すときにはどんな点に気をつければいいのでしょうか。ポイントを押さえましょう。

自分の状態を理解して対処方法を身につける

まずは自分のパニック障害の特性について理解することが重要です。その上で、もし仕事中に発作が起きたときにはどうすればいいのか、自分なりの対処方法を身につけましょう。

深呼吸や伸びをする・リラックスできるお茶を飲んだりアロマの香りをかいだりする・休憩中に好きな音楽を聴くなど、さまざまな方法があります。服薬などの治療もきちんと続け、自己判断で勝手にやめないことが大切です。

自分にとって働きやすい環境を探す

パニック障害の方にとって、ストレスやプレッシャーは敵ともいえる存在。仕事中のことだけでなく、通勤時間が長い・出張が多いなども避けたいものです。

再発を防ぐためにも、業務マニュアルが整っている・ストレスを感じにくい・時短勤務やテレワークができる・万が一体調が悪いときは誰かに代わってもらえるなど、柔軟に対応してもらえて働きやすい環境で仕事をすることが重要です。

復職する場合は必要に応じて部署や担当する業務内容の調整をしてもらい、転職する場合は前もって働きやすさをしっかり確認しましょう。

障害者雇用枠で働く方法も

パニック障害で障害者手帳を取得していれば、障害者雇用枠に応募できます。障害者雇用枠では自分の障害を開示して働くため、障害に対する理解や配慮を受けられることが特徴です。

パニック障害で仕事に対して大きな不安や悩みを抱えている方は、働きやすい職場を探すときの選択肢の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。

相談できる窓口などがあるか確認する

職場によっては、産業医やカウンセラーなどが配置されていることもあるでしょう。万が一仕事中にパニック障害の発作が出た際など、困ったときに相談できる場所があると安心です。

また、上司や人事部などでも、何かあった際に親身になって相談に乗ってくれる相手がいると助かります。

パニック障害の方が就職・転職活動をするときに利用できるサービス

パニック障害の方が新たに仕事を探すときには、職場探しをサポートしてくれるサービスを利用するのがおすすめです。どんなサービスがあるのか見ていきましょう。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

パニック障害で休職したとしても復職や転職は十分可能

パニック障害になったら、心身ともに苦しい思いをします。そのため、無理に仕事を続けるのではなく休職や退職したほうがよいケースも多いです。自分の体調を優先して、落ち着いてから仕事を再開、または転職活動をはじめていきましょう。

復職や転職の際は、自分の特性に応じた働き方・職場を見つけることも大切です。転職時には、紹介したように、自分にぴったりの仕事探しをサポートしてくれる多種多様なサービスがあります。

なかでもDIエージェントは、熟練のキャリアアドバイザーが一人ひとりの状況や希望をもとにさまざまな提案や求人紹介を行っているので、まずはお気軽にご相談ください。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。