病気や障害があっても仕事はできる?転職で注意することとおすすめの仕事、就活に利用できるサービスを紹介
突然の事故や病気に見舞われ、これまでの仕事を続けるか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった方の中には、「病気や障害があってもできる仕事はあるのか」「転職するとしたらどういう職種がいいのか」「病気や障害への理解がある職場をどうやって見つけたらいいのか」といった不安を抱えている方は少なくありません。
そこで、今回は病気や障害をお持ちの方の仕事や就職活動での注意点などについて解説します。
今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
仕事が続けられなくなる原因に多いのは?
これまで健康であっても突然の発病や事故によって仕事が続けられなくなることは、誰にでも起こり得ることです。
実際に仕事が続けられなくなる原因として多い、病気や障害について紹介します。
精神疾患
精神疾患とは、うつ病や躁うつ病、統合失調症などを指し、生まれ持った資質とストレスでかかる負荷によって発症します。また生まれつき脳の働きに違いがある発達障害も、精神疾患を原因とする精神障害の分類です。
精神疾患は見た目ではわかりづらいため周囲からの理解を得にくい一方で、本人は疲れやすさや体調が安定しにくいなどの悩みを抱えていることが多くあります。
こういった理由で、毎日決まった時間に出社することやフルタイムで働くことが難しくなるケースがあり、無理をすることで症状が深刻になってしまうことも。放置すると入院が必要になることもあり、これまでのような働き方を続けるのが難しくなる人も少なくありません。
難病
難病とは、発病の原因が特定できず治療方法が確立されていない、長期的に治療が必要なため慢性的に私生活に悪影響を及ぼすものを指します。
その中には症例数が少なく診断にあたって客観的な指標に基づく基準が定まっているものを「指定難病」として、国が認定しているものも。「指定難病」として認められれば「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づき、治療にかかる医療費が助成されます。
難病にはさまざまなものがありますが、総じて体調の崩れやすさや一日を通して、または日によって大きく体調に波があるなどのつらさがあるため、難病になることでこれまでのように働き続けるのが難しくなる方が多いです。
引用元
厚生労働省|難病対策
e-Gov|難病の患者に対する医療等に関する法律
病気や事故などの後遺症
突然の事故による後遺症や脳梗塞などが原因で起きる高次脳機能障害、がんによる後遺症なども働けなくなる原因です。
事故で起きる後遺症は、むち打ちによる腰痛や頭痛、手足のしびれなどが起きたり、脊髄損傷などで歩行が困難になったりすることなど、さまざまな症状があります。後遺症のなかでも治療による回復の見込みがなく仕事を続けることが難しくなってしまった場合(労働能力の喪失)、後遺障害となり障害者手帳交付の対象です。
またがんの治療のため声帯を失ったり人工肛門や人工膀胱の造設、人工関節などの置換、手足の切断などにより、これまでのように働き続けられなくなるケースもあります。
病気や障害があると仕事を続けるのは難しい?
突然の発病や事故によって、これまでのような働き方を続けるのが難しくなるケースは多くありますが、仕事が続けられなくなることや転職への不安を感じる方もいるでしょう。
一生の付き合いになる病気や障害がある場合は、働き方を変えることで長く仕事を続けられる可能性があります。
障害者雇用枠での就職も考えよう
体調に波があったり通院や服薬の必要があったりした場合、これまでの職場で働き続けることに負担や引け目を感じてしまうこともあるかもしれません。転職に成功したとしても、一般枠で身体に問題がない人たちの中で同じように働くことは難しいため、結果的に仕事を続けられなくなることも。
そういった不安を感じる方は、障害者雇用枠での就業も考えてみるのがおすすめです。障害をお持ちの方の雇用は法律で保障されているため、職場に合理的配慮を求めて無理をせずに働き続けることが可能になります。
障害者雇用の対象となるのはどんな人?
障害者雇用枠で就職するには、障害者手帳の取得が必要です。法律で雇用が守られる障害の対象は、身体障害・精神障害・知的障害に加え、発達障害や難病など。
この法律では一定規模以上の企業に対し法定雇用率の障害者雇用を義務づけており、同時に職場での差別禁止や合理的配慮も義務づけています。法定雇用率は現状2.3%ですが、令和6年4月に2.5%、令和8年7月に2.7%と段階的な引き上げも決定されているため、障害者雇用枠での求人数は増えていくはずです。
引用元
厚生労働省|障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象
厚生労働省|事業主の方へ
障害者手帳を取得することに漠然とした不安を持つ方もいるかもしれません。障害者手帳を持つメリットとデメリットを知り、取得するかどうかを考えてみるといいでしょう。
病気や障害があっても働きやすい職場の条件とは
病気や障害があっても働きやすい職場環境とはどんなものなのでしょうか。ここでは病気や障害をお持ちの方におすすめの職場環境を紹介します。
病気や障害への理解がある
急な体調の変化や波があったり通院の必要があったりすることを理解してもらえる職場かどうかは、大切なポイントです。通常より多く休憩をとらせてもらったり急な休みや有給休暇が取りやすかったりすることは、必須条件といってもいいかもしれません。
そのほか、それぞれの病気や障害特有の困りごとに対する配慮をしてもらえるかどうかも重要です。できないことを理解して人員配置を考えてくれたりバリアフリーなどの環境整備をしてくれたりする職場を見つけましょう。
合理的配慮を受けられる
合理的配慮とは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」「障害者の雇用の促進等に関する法律」に盛り込まれている指針のひとつで、企業に対し病気や障害をお持ちの方の特性に合わせて適切な配慮を求めるもの。
たとえば視覚障害をお持ちの方に音声での案内をすることや聴覚や言語の障害をお持ちの方に筆談やアプリでの対応をすること、バリアフリー化やデスクの配置、作業しやすい環境を整えること、出退勤の時刻や休憩・休暇、通院や体調への配慮をすることなどです。
障害者雇用枠での就職であれば、こういった対応を企業に求めることができ、働きやすい職場で長く働き続けることが可能になります。
引用元
内閣府|障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
厚生労働省|雇用分野における差別禁止・合理的配慮
e-Gov|障害者の雇用の促進等に関する法律
合理的配慮を職場に申し出るときの流れや注意点、実施例などは以下の記事を参考にしてください。
病気や障害をお持ちの方ができるおすすめの仕事は?
病気や障害をお持ちの方が働く場合、どんな職種がおすすめなのか、理由もあわせて詳しく見ていきましょう。
事務職
一般事務や経理などの事務職は、デスクワークが中心で高度な専門知識が必要ないことも多く、マイペースに仕事をすすめられるなどの利点があります。職場側も合理的配慮の環境を整えやすく身体的な負担もないため、病気や障害で体調の波がある方や疲れやすい方も働きやすい仕事です。
プログラマー・システムエンジニア
プログラマーやシステムエンジニアは、パソコンやスマホで使用するソフトウェアやアプリケーションの開発をする仕事です。クライアントの要望に基づき設計やプログラミングをしたり、保守をおこなったりします。
プログラミング言語やデータベースなどの知識の習得、パソコンやツールなど専門的な知識が求められる仕事ですが、デスクワーク中心でもくもくとパソコンに向かってする作業が多く、テレワークが可能なので、フルタイム出社が難しい病気や障害をお持ちの方におすすめの仕事です。
CADオペレーター
CADオペレーターとは、CADという建築や土木、工業部品などの設計を行う専用のソフトを使いこなし、さまざまな設計を行う仕事です。汎用ソフトもありますが、それぞれの領域に特化した専門のCADも多く開発されています。
CADは専用のコマンドを使用して設計するため、図面を正確に読み取る能力や専門用語の習得、型式や性能、日本産業規格(JIS)の知識など、CADのみならずさまざまな能力や技術が必要です。
しかしそういった知識や技能さえあれば、デスクワーク中心でテレワークも可能、もくもくと自分のペースで作業をすすめることができるなどのメリットがあります。
軽作業
比較的体力に自信がある方で、デスクワークが苦手な方には、工場内での作業や清掃などもおすすめです。
個人での作業が多い仕事であれば、コミュニケーションもあまり必要なく、達成感を感じられるなどのやりがいもあります。ルーティーンをこなすのが得意な方やもくもくと決められた作業をしたい方などは、デスクワークより軽作業を好まれる方もいるかもしれません。
病気や障害をお持ちの方が就職活動をする時の注意点
病気や障害をお持ちの方が就職や転職活動をするときには、体調への配慮や仕事の探し方に工夫が必要です。ここでは、病気や障害をお持ちの方が仕事探しをする際に注意すべき点を紹介します。
1.就職活動は焦らず十分な準備期間を設ける
しっかり働ける状態になっていないのに無理をしてしまうと、おさまっていたはずの症状が再発してしまうことがあります。そのため、仕事探しは焦らずに行うことが大切です。
また「とにかく早く働かなければ」と焦ることで、理解を得られない会社に就職してしまったり、しっかりとニーズのマッチングができていない職場で働かなければならなくなることで、合理的配慮が受けられないことも。
就職活動を始める際は、十分な準備期間を設け焦らずじっくりと探すのがおすすめです。
2.自分の病気や障害、得意なこと・できないことを明確にする
就職活動をする前に、自分の病気や障害についてしっかりと理解を深めておきましょう。その上で、得意なこと・できないことを明確にし、それを基に職種や必要な合理的配慮を考えることが大切です。
寛かいしたと思っていても環境の変化で再発したり悪化したりすることも考えられます。主治医と相談しながら活動開始の時期やできそうな仕事について考え、慎重にすすめていくのがおすすめです。
3.通勤やフルタイム出社が難しい場合はテレワークも視野に入れる
通勤ラッシュ時に公共交通機関を利用することや自家用車の運転に不安を感じる方、またフルタイム出社が難しい方は、テレワークを視野に入れましょう。
たとえば体調の波が激しく毎日決まった時間に出社するのが難しい、横になってしっかり休憩する必要があるなどのケースでは、自分のペースで業務開始時間を調整したり、休憩中周りの目を気にせず横になることができる環境が必要です。
そういった方は、最初からテレワークができる職種を選び、テレワーク可の求人に絞り込んで探したほうが、長く続けられる職場と出会える確率が高くなります。
4.病気や障害をお持ちの方の就職を支援する機関を活用する
障害者雇用枠で就職する場合、さまざまなサポートを受けることができます。国や自治体の支援機関や民間のエージェントなどを活用することで、就職への不安を軽減できるため積極的に利用するのがおすすめです。
何からはじめたらいいかわからない、自分一人で活動をすることが不安という方でも、そういった心強いサービスを利用することで、安心して仕事を見つけることができるでしょう。
病気や障害をお持ちの方の就活をサポートするサービス
ここからは、病気や障害をお持ちの方が、仕事を探す際に利用できる機関やサービスを紹介します。
ハローワーク
国(厚生労働省)が運営する求人紹介の事業であるハローワークには、障害者窓口が設けられています。ハローワークで受けられる支援は求人紹介だけでなく、履歴書作成や面接対策などのサポートを受けられたり、職業訓練を紹介してもらったりすることも可能です。
障害者手帳を持っていなくても利用することができ、就職にあたってさまざまなアドバイスをもらうことができます。
就労移行支援事業所
就労移行支援とは一般企業への就職を目指す65歳未満の方を対象に、就労に必要な知識やスキル習得のトレーニングなどを提供する事業です。仕事に必要なスキルだけでなく、生活面やメンタル面のサポートもするのが特徴。
一人ひとりに合わせて認知行動療法やアサーショントレーニング(自分の意見を適切に伝えることを目的に行う訓練)など、多種多様なカリキュラムで就職活動をサポートします。
就労移行支援事業所はそれぞれに特色があるため、自分に合った事業所を選ぶことが大切です。たとえば就労移行支援事業所のひとつ「ワークイズ」では、家族や医療機関、保健機関や行政、企業などと連携したチームケア体制で、最適なサポートをします。
障害者雇用専門の転職エージェント
民間の人材紹介会社には、障害者雇用専門のものもあります。障害者雇用専門の転職エージェントは、ハローワークなどと同じように無料で利用可能。
転職エージェントを利用するメリットは、市場に出回っていない優良企業の求人を持っていたり、これまでの支援実績を活かしてきめ細かなサポートを受けられたりすることです。
転職成功まで専属のカウンセラーが伴走する「DIエージェント」
障害者雇用専門の転職エージェントとして10年の実績がある「DIエージェント」は、上述した就労移行支援のワークイズや定着支援のワクサポなどを総括する、株式会社D&Iが提供するサービスです。
各障害専門のカウンセラーが、活動開始から職場定着までを一貫してサポートするので頼りがいがあります。まずはしっかりとしたヒアリングで、経歴や病気・障害、本人の希望などを分析して、最適な求人を紹介。
書類作成や面接対策、企業とのやり取り代行など手厚いサポートで就職成功まで伴走するため、初めての就職活動でも安心です。
優良企業の求人やテレワークの案件も多数ありますので、これから障害者手帳申請を考えている方や申請中の方もお気軽にご相談ください。
病気・障害をかかえた方の転職活動は転職エージェントの利用がおすすめ
病気や事故で突然働けなくなることは、誰にでも起こり得ることです。これまでの仕事を続けるのが困難になった場合、病気や障害を抱えていても働きやすい職場に転職することで、ストレスを軽減し自分らしく働き続けることができます。
転職におけるゴールは「採用されること」ではなく「自分らしく働ける環境で長く続けること」だと言えます。その視点で、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。
今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。