仕事が原因でうつ病になる?見分け方や働き続けるときのポイントも解説

朝起きたときや、休日があと少しで終わるときなどに、「仕事に行きたくないな」と思うことは誰しもありますよね。

しかしこのような気持ちが長期間続いた場合、もしかすると、仕事によって精神的な疾患、例えばうつ病などを発症している可能性があります。

なお、前提として、仕事によってうつ病になることはあり、この場合、自己判断はせず、できるだけ早いうちに医療機関の受診が求められます。

そこで今回は、仕事が原因でうつ病になるのか、見分け方や働き続けるときのポイントを紹介します。医療機関を受診する前に、ある程度、自分の中で現状を把握しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

仕事が原因でうつ病になることはある

これまでの私生活や仕事中の自分の行動を振り返ったとき、「もしかしてうつ病かも」と思っている方も多いのではないでしょうか。

起床後に会社に行くことに憂鬱さを感じたり、業務中に些細なミスが重なったりすると、「ひょっとして・・・・・・」と思うことは誰にでもあるもの。

これらの行動にプラスして、これまであまり気にしなかった業務量にストレスを感じるようになった方の中には、「気付けばうつ病になっていた」といった方が少なくありません。

平成27年12月1日、日本では50人以上の労働者数が在籍する事業所に対して年に1回、ストレスチェックの実施が義務化されました。厚生労働省では定期的に、同条件に該当する事業所へストレスにまつわるアンケートを実施しています。

同省の資料「職場におけるメンタルヘルス対策の状況」によると、ストレスチェックの義務化が開始された27年以降も「ストレスがある」と回答した人は50%前後で推移しています。

同アンケートで「職場や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じる」と回答した労働者のうち、最も多く回答があった項目は「仕事の量」という結果に。

次いで「仕事の失敗、責任の発生等」「仕事の質」が多く、日本で働く人の中には、仕事に対して何かしらのストレスを抱えていることが浮き彫りになりました。

 
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このようなことから、仕事が原因でうつ病になることは比較的あり得ると考えられます。
では、仕事が原因でうつ病になったかもしれない、と思ったときは、どのような行動を取れば良いのでしょうか。次項を見ていきましょう。

引用元
職場におけるメンタルヘルス対策の状況|厚生労働省
2職場におけるメンタルヘルス対策の状況|厚生労働省
2015年12月からストレスチェック制度が義務化されました | 滋賀労働局

もしかしてうつ病?自分の行動から見分ける方法

仕事が休めないなどの理由から医療機関に行くことが困難な場合は、うつ病かを調べるセルフチェックを試してみましょう。

以下の記事では、うつ病の代表的な症状や仕事でみられやすい傾向をまとめています。さまざまな理由からまずはセルフチェックを行いたいといった方は、この機会に併せてご確認ください。

 
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ただし、仕事によって「うつ病を発症したかもしれない」と思ったときは、できるだけ早いうちに医療機関を受診し、うつ病かどうかをきちんと調べることをおすすめします。

医療機関を受診後、うつ病と診断されたときは

医療機関の受診によってうつ病と診断された後は、その理由が仕事なのかどうかを振り返って考えてみましょう。

もし仕事が原因であれば、会社に労災認定を申し出ることができます。ただし労災を申請しても認定されるかどうかは判断が難しい問題であり、診断書をはじめ多くの資料を集めなければならないなど、ハードルが高いことを念頭に置いた上で動く必要があります。このことから、今まで以上に働き続けたいのであれば、違う方法を考えることをおすすめします。

もし、仕事以外にも考えられる原因があるのなら、解決の糸口を探しましょう。

厚生労働省が管轄する「こころの耳」によると、ストレスは以下3つに分類できるとしています。

  • 物理的要因:暑さ・寒さ・騒音・混雑など
  • 科学的要因:公害物質・薬物・酸素の欠乏あるいは過剰・一酸化炭素など
  • 心理・社会的要因:人間関係・仕事上の問題・家庭の問題など

多くの人が口にするストレスは、3つ目の心理的・社会的要因に該当するようです。とはいえ、そのほかにもさまざまな理由で人はストレスを感じることが分かります。

うつ病を発症後、うつの症状を軽減するためには、原因から自分を離すことが大切です。そのためにも、上述した3種の要因の中からどの項目に1番ストレスを感じやすいかを振り返り、理由を探すことをおすすめします。

うつ病と診断後も働き続けるときの5つのポイント

うつ病と診断を受けた後も現職を続けたいときは、これから紹介する5つのポイントを把握し、実践してみましょう。

なお、仕事を継続するということは、仕事中にうつ症状がみられる可能性があり、状況に応じて適切な行動を取る必要があるということです。

そのため、主治医からのアドバイスにはきちんと従った上で仕事に取り組む必要があることを念頭に置きましょう。

1.自分の症状について理解を深める

仕事を続けるなら、まず自分の症状について理解を深めることが大切です。うつの症状は人によって大きく異なります。仕事中に症状が出ても冷静に対応できるよう、自分にはどのような症状が出るのか、またどのような理由によって症状が出るのかについてきちんと把握しておきましょう。

 
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症状がみえはじめたとき、調子が悪くなりそうと感じたときに体に起きた異変を書き留めておくと、客観的に自分の症状と前兆を把握できます。自分では分からない、思いつかないといったときは、主治医に聞いてみるのも方法の一つです。

2.周囲の理解を得る

自分の症状について理解を深めたあとは、会社の同僚や上司などにどのような症状がみられるのかを共有し、理解を得ましょう。

うつ病は骨折やケガとは異なり、症状を目で見て認識することができません。そのため、理解を得にくい病気でもあります。

症状について共有しないままだと、うつ病と知らない同僚や上司は、あなたに対して「怠けている」などと誤解する恐れも。周囲には自分の症状について共有し、理解を得られるよう相談してみましょう。

 
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自分の口からは伝えにくいといったときは、主治医に診断書を書いてもらうと具体的に伝えることができます。

3.生活習慣の改善を図る

うつ病を発症する前から生活習慣が乱れているのなら、この機会に起床時間や昼食の時間、就寝時間などを見直しましょう。早寝早起きをはじめ、健康的な食事をとるなどの基本的な生活は、心身を穏やかに保つきっかけにつながります。

 
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休日は家で何もせずゆっくりしたり、好きな物事に取り組んだり、リフレッシュできるように運動するのもおすすめです!ただし無理は禁物です。運動する場合は、最初は15分程度の軽い散歩から始めてみると良いでしょう。

4.うつ病を早く治そうとしない

仕事を続けるなかでは、あらゆるシーンでストレスを感じやすいです。業務中のケアレスミスが増えるほど、職場に迷惑をかけている気分に陥り、「早くうつ病を治さなければ」と思う人も。

しかし、早く治そうと焦れば自分に無理を強いることにつながり、症状が悪化する恐れがあります。原因が仕事であるなしにかかわらず、うつ病と診断された以上は長期的に治療が必要であると考えましょう。

 
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ゆっくりと治しながらも、無理なくこなせる程度の業務に取り組みましょう。

5.仕事が辛く感じたときは休職を考える

仕事を続けているうちに、少しずつ心身共に辛さを感じたときは、早いうちに休職を検討し、必要な手続きを進めましょう。

休職にあたっては、さまざまな理由によって踏み切れない人も多いです。そのようなときは、うつ病の方が利用できる制度や手当、支援サービスがあることを押さえておきましょう。

 
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利用できる制度や手当は後述するので、ぜひ参考にしてくださいね。

治療しながら働き続けるメリット・デメリット

うつ病と診断後も治療と並行しながら仕事を続ける場合は、メリット・デメリットがあることも念頭に置く必要があります。メリット・デメリットにはどのようなものがあるのかを押さえ、主治医と相談しながら今後について決めていきましょう。

メリット

治療と並行して仕事を続けると、以下のメリットがあります。

  • 収入が途絶える心配がない
  • 職歴にブランクができない
  • 収入面で家族が苦労しないなど

治療と並行して仕事を続けると、これらのメリットがなくなる心配はありません。治療には医療費もかかるので、金銭面で悩みたくない人にはメリットと言えるでしょう。

デメリット

治療しながら仕事を続けるデメリットは以下の通りです。

  • 体調を崩す恐れがある
  • 治療期間が長引く可能性がある
  • 家族に心配をかける
  • 仕事の評価に影響するなど

仕事が原因でうつ病になった場合、どれだけ治療しても、現状が変わらないために、症状が悪化する恐れがあります。そのため、体調を崩す可能性があることはデメリットと言えるでしょう。

また、体調悪化によっては治療期間が長引くといった別の可能性につながることも。この場合、長期的に医療費がかかると考えられるため、金銭面の不安も招いてしまうでしょう。

治療と並行して仕事を続けると決めるのであれば、デメリットがあることも念頭に置くことが大切です。

うつ病による治療・休職で利用できる制度・支援

うつ病による治療または休職に対して日本では、さまざまな制度・支援サービスが整備されています。条件を満たしていれば申請によって利用できるので、どのようなものがあるのか押さえておきましょう。

自立支援医療

自立支援医療とは、体または心の病を回復・軽減するための受診・治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する目的を持つ医療制度のことです。対象者は精神通院医療、更生医療、育成医療に分けられ、うつ病は精神通院医療に該当します。

詳細についてはこちらの記事でまとめているので、興味のある方は併せてご覧ください。

引用元
自立支援医療制度の概要 |厚生労働省

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度とは、低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯の方で資金の貸付が必要と判断された方に対し、貸付を実施し、安定した生活を送ることを目的とした制度のことです。

最寄りの市区役所や社会福祉協議会に窓口が設けられており、窓口によっては預金通帳や印鑑、生活が困窮していることが分かる資料等を持参することで手続きできます。

利用に際しては審査があるので、詳細を知りたい方は以下の記事、または内閣府男女共同参画局ホームページをご確認ください。
内閣府男女共同参画局

引用元
生活福祉資金貸付制度 |厚生労働省

障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)

精神障害者保健福祉手帳は、うつ病を含む精神障害をお持ちの方が交付を受けることが可能な障害者手帳の一つです。1級から3級まであり、症状によっていずれかに区分されます。

精神障害者保健福祉手帳の交付によって、公共料金等の割引や所得税・住民税の控除などを受けることができます。交付のメリットや申請方法については以下の記事でまとめているので、この機会に併せてご覧ください。

なお、障害者手帳の交付を受けた場合、障害者雇用という働き方を選択することが可能になります。仕事を続けたいものの業務に辛さを感じたり、休職する間「一般雇用は難しいかもしれない」と考えたときは、障害者雇用での働くことも検討してみると良いでしょう。

 
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引用元
障害者手帳について|厚生労働省
精神障害者保健福祉手帳|こころの情報サイト

仕事を続けるならメリットとデメリットがあることを押さえておこう

前提として、仕事が原因でうつ病になることはあります。うつ病に必要な治療を行いながら仕事を続ける場合、いくつかのメリット・デメリットがあることを念頭に置くことが大切です。

なお、うつ病は判断能力が低下しやすいといった特徴を併せ持つことから、退職や転職と言った大きな決断は、うつ病が落ち着き、冷静に判断できるようになってからにしましょう。

また、さまざまな理由から休職に踏み切れないときは、本記事で紹介した制度・手当・支援サービスが利用対象ではないかを確認することをおすすめします。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。