就職・転職活動を始める第一ステップは「自己分析」といっても過言ではありません。「自己分析」はキャリアの棚卸をするだけではなく、自分はどのような価値観をもっているのかを確認し、よりよい仕事や環境を選択するために欠かせません。
今回は障害者雇用枠専門・DIエージェントのキャリアアドバイザーが自己分析のポイントや障害者就職・転職を成功させるための自己分析の活かし方を教えます!
自己分析はなぜ必要?障害者雇用枠こそ重要な理由
「自己分析なんかやっても意味がない」と思ってはいませんか?
もしも「合う仕事が見つからず職を転々としている」、「自分には何もできることがなく自信を失っている」、「自分の強みを活かしてキャリアアップを活かしたい」などと考えているのであれば、自己分析は非常に有益です。
- これまでやってきたことや思いを整理する
- キャリアの軸を定め、ベストな選択をする
- 就職活動・転職活動の場所で活かして、希望を叶える
自己分析がしっかりできていれば企業選びや選考の中でブレることはありません
では、なぜ障害者枠では特に「自己分析が重要」なのでしょうか?詳しく解説していきます。
選考で落とされる理由は「障害理解・自己理解が足りていない」が多い
障害をお持ちの方の場合、「障害の理解」と「自己の理解(自分自身についての理解)」の二軸で自己分析をする必要があるでしょう。
特に障害をオープンにして働く場合は、「どのような障害なのか」「働く上で会社は何ができるのか?」を深く聞かれます。
理解を深め、相手にきちんと伝えることで、より働きやすくなる可能性がアップします。
しかし、残念ながらこの理解が足りていないために、書類選考や面接で落とされてしまう方は少なくないのです。
「ADHDのために時間の逆算ができず遅刻してしまいます…」
これは本当に障害特性? 理解と対処が不足しているのかもしれません。
障害の理解に関する記事はこちらを参考にしてください。
障害をお持ちの方が働くため大切なのは「障害の自己理解」です。そして障害をオープンにして働く場合、職場で共に働く人に適切に「伝える」スキルも必要です。 この記事では「障害を理解して自分らしい働き方をしたい」「初めて障害者雇用枠で企業を受ける[…]
こちらでは主に自分の内面的なものやモチベーションに対して「自己理解」
ミスマッチを防ぎ、自分らしく働く
また自己分析をすると良い理由として、仕事・職場のミスマッチを防ぎ、自分の得意を活かして働ける可能性が高まることが挙げられます。
「こんな雰囲気の会社は苦手」「この作業は得意、誰よりも早く正確にできる!」を整理して言語化していきましょう。
転職者はキャリアの棚卸をしてPRポイントを見つける
「自己分析=新卒の就活生がやるもの」というイメージもあるようですが、就労経験があり中途採用を目指す方にとっても大切です。
これまでおこなった仕事やそこで習得したスキル、自己研鑽で身につけたことを整理しましょう。職務経歴書に書く際にも役立ちます。
「私には大した経歴がない……」と思っていても、深堀りをしてみると意外と見つかるものですよ。
主婦やフリーター(パート・アルバイト)経験も立派なキャリアです。過去をしっかり振り返って企業に説明できるようにしましょう!
自己分析はいつやるべき?
自己分析はどのタイミングで取り組むべきでしょうか?
DIエージェントとしては、就職活動・転職活動を始めるスタート段階で一通り自己分析をやってみることをオススメしています。就活・転職活動の方向性を定めるためです。
エージェントなどのキャリアアドバイザーと一緒に相談しながら自己分析を進めていっても良いですね!
就職活動を進める中で、だんだんと自己理解が深まっていくこともあります。
基本の自己分析方法
ここではDIエージェントからもよく皆様にアドバイスをしている簡単にできる自己分析の方法をお伝えします。
それは「CAN(できること)」「WANT(やりたいこと)」「MUST(必要とされていること)」の3つの軸で考えていくのです。
この3つの部分が重なることを仕事にできると良いと言われています。
ぜひ三つの大きな円を描いて、それぞれの項目に書きこんでみてくださいね。
CAN(できること)
一つ目は「できること、得意なこと」について考えましょう。
これまで経験した業務でできるようになったこと、人から褒められたこと、些細なことでも構いませんのでどんどんと書き出してみます。
たとえば、プライベートや趣味でおこなっている「動画編集」や「家事(マルチタスク)」といったことでも良いですね。
反対に「できないこと」「できるけど難しいこと、できれば避けたいこと」などもメモをしておくのもオススメ。
WANT(やりたいこと)
二つ目は「やりたいこと」のイメージを膨らませてみましょう。
これは「自分にできる/できない」は関係なく、自由に発想を広げていきます。たとえば「人と関わることが好き、接客業に就きたい」「上司のようなみんなをまとめ上げる人に憧れる」といったことでもOKです。
MUST(必要とされていること)
三つめは「社会に必要とされていること」を考えていきます。
たとえば「アイドルになりたい!」と思っていても、なりたい人が多い(=参入や生き残り競争が激しい)と実現するのは難しいですよね。
コロナ禍では路面店が減少したり、旅行業界・外食産業が落ち込んだりもしました。
普段からニュースなどをみて世の中の動きを掴んでおくと、ここでも役に立ちます。
自己分析のやり方とステップ
その他にも5種類の自己分析のやり方を紹介しておきます。
じっくり取り組みたい派も「一人では難しい!」という方も参考にしてみてください。
自分史・キャリア史を書き出してみる
まずは幼少期や社会人生活スタートした時期から時系列に出来事やその時思ったことを書き出していく「自分史」作りをする方法です。
「どんな仕事を経験したのか」はそのまま履歴書・職務経歴書に活かせますし、「どんなことに心が惹かれたのか」「何に対して苦手意識を覚えるのか」なども軸を考える上で重要になってきます。
マインドマップ
上の図のように、中心部のお題から発想を拡散させていく方法です。連想ゲームのように次々と過去のことを思い出し、イメージを膨らませられるので、就活に行き詰まった時にはぜひ実践してみてください。
本を使う
自己分析をおこなう本も多数出版されています。書き込みができたり、診断ができたりするユニークで転職にも使える自己分析のベストセラー3冊をご紹介します。
「なぜ」を繰り返す
「お手軽に自己分析を済ませたい」という方にオススメの自己分析方法として「なぜなぜ分析」という手法があります。
仕事やこれまでの経験から印象的だったエピソードや将来やり遂げたいことを一つ選び、「なぜ?」と3~5回繰り返し思考を深めていくものです。
- 「営業で目標を達成できた」→「なぜ達成できたのか?」「お客さんに喜ばれるのが嬉しかったから」→「なぜお客さんに喜ばれるのが嬉しいと感じたのか?」「最初は営業を迷惑がっていたところから必要性を感じてもらえたから」…
- 「医療業界に就きたい!」→「なぜ医療業界に就きたいのか?」「体調を崩した時に手厚く看病してもらえて感動したから」→「なぜ、感動したのか」「病気の時の不安は大きいが、それを良い体験に転換させてくれたから」
元々はトヨタで取り入れられていた考え方ですが、自己分析にも応用されています。
プロに相談する
しかし、自分のことは自分では意外と分からないものです。そこで第三者の手を借りるとより客観的に自分自身の強みや弱みなどを見つけられるでしょう。
たとえば、ハローワークでキャリアコンサルティングを受けてみたり、エージェントに登録してキャリアアドバイザーと一緒に転職に向けて相談をしながら自己分析をおこなったりといったことができます。
「今はまだ転職を考えていないけど……」といった相談もDIエージェントでは歓迎します!
自己分析ツール3選
ここでは厚生労働省が用意している自己分析に役立つツールを3つ紹介します。いずれもスマートフォンや家のPCから気軽にできるので、簡単・便利・無料で自分のことが分かるのが嬉しいですね。
こちらのサイトを参考にしています
https://jobcard.mhlw.go.jp/index.html
自己分析以外のツールやノウハウも充実しています! ジョブ・カードはキャリアの棚卸しをするのにも便利です!
価値観診断
「専門志向」「経営管理志向」「自立志向」「起業家志向」「生活重視志向」の5つの観点から価値観が簡易的にわかります。
RIASECによる自己診断
https://jobcard.mhlw.go.jp/selfanalysys/riasec.php
RIASECによる自己診断は「現実的(Realistic)」「研究的(Investigative)」「芸術的(Artistic)」「社会的(Social)」「企業的(Enterprising)」「慣習的(Conventional)」という6つのパーソナリティタイプの傾向と適合する職業が分かるものです。
スキルチェック
スキルチェックはより実務に即した内容から選択肢を選んで診断をしていきます。
全国平均回答との比較もできるので、自分がどの立ち位置にいるのかを振り返ることができます。
就職・転職での活かし方
自己分析は「やって終わり」ではありません。仕事選びやキャリアに活かしていきましょう。
自己分析をどのように就活・転職活動に活かすのかを簡単にお伝えいたします。
書類選考
自己分析をすることで「履歴書」「職務経歴書」に書くことが整理され、何をPRすべきか明確になることでしょう。
中途採用の場合は、特に即戦力としての活躍が期待されるため、経歴は抜け漏れなく伝えられるようにしましょう。
そのため、「書き出す」ことが非常に重要になるのですね。
オンライン上で保存しておけば何かと使いまわせて便利です!
履歴書・職務経歴書
「履歴書」は時系列に学歴・職歴を書いていくものです。こちらの内容だけではどのような仕事をして、どのようなスキルを身につけてきたのか伝わりづらいため、「職務経歴書」でキャリアについて丁寧に説明します。
「これまでやってきたこと」、「実績・成果」、「仕事上で工夫したこと」を数値なども交えて具体的に書いていきます。
「転職先の企業・ポジションでどのような活躍ができそうか」をイメージしやすいことが大事!
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私の障害について
また障害者雇用枠の場合、ご自身の障害について紹介シートを求められることがあります。「私の障害について」「自己紹介シート」などとも呼ばれています。
主に、通院頻度や細かい配慮の希望(配慮が不要な場合はその旨も)、面接前に事前に伝えることができます。
「できないこと」を中心に書くのではなく、自己分析の結果を踏まえて「○○は得意なので、遠慮しないで任せてください」ということも伝えられると良いですね。
面接
面接の場所では様々な角度から質問をされ、想定外の質問をされることもあるでしょう。そのような中、たとえ答えに詰まったとしても、自己分析をしっかりしていれば一貫したことを答えられるでしょう。
答えの一貫性は面接官もよくチェックしていることです。
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自己PR
面接でよく聞かれることは「自分のアピールポイント(自己PR)」や「強み/弱み」です。自己分析をしていれば、自信を持って答えられますよね。長々と話しすぎず、端的に伝えられるようにしておきましょう。
頻出質問なので事前準備は必ずしてくださいね!
就職や転職活動で、必ずといって良いほど提出するものの一つが履歴書です。多くの履歴書には自己PRを記載する箇所があり、選考における重要な材料となります。 また履歴書以外にも面接で自己PRを求められることは少なくないため、内定を勝ち取るために[…]
志望動機
志望動機は「CAN」「WANT」「MUST」の考え方が使えます。
自分ができること、これからやりたいこと、そして受けている企業から期待されていること・求められていることをうまくおさえて回答できると良いでしょう。
そのため企業研究も欠かせませんね。
自己分析は就職してからも使える!プロの手も借りて、最高のキャリアを切り拓きましょう
自己分析は就職活動中に「キャリアの軸」を定めるだけに使うのではもったいないことです。就職をしてからも、振り返りをしたり自分のキャリアを見直してみたりするのに役に立ちます。
「●年後にはこれを達成していたかったけど思いの外遅れをとっているな」、「前職に比べてこんなに仕事の幅が広がったな」などの気づきがあるはずです。
また転職をしようかどうかお悩みでしたらDIエージェントへもご相談ください。みなさんとお話できることを楽しみにしています!
障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザー。早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用ソリューション営業、転職キャリアアドバイザーと幅広い領域を担当。現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。