ナルコレプシーとは?症状や原因、検査方法や治療方法まで学生~社会人のお悩みに答えます

大事な就活の面接中や会議中にもかかわらず強烈な眠気に襲われ寝てしまうことが度々ある……もしかしたら、「ナルコレプシー」かもしれません。
この記事ではナルコレプシーとは何か、症状や有病率、発症する原因から検査・診断方法や治療方法までをわかりやすく解説します。
また障害者手帳を取得し、障害年金を受給したり障害者雇用で安心して働けたりする可能性についてもお伝えします。「ナルコレプシー」などの睡眠障害でお悩みの方はぜひ参考にしてください。

ナルコレプシーとは

ナルコレプシーとは日中に強い眠気が起こり、時と場所に関係なく、突然居眠りをしてしまう神経の異常によって引き起こされる過眠症の一種です。

ナルコレプシーの眠気は強烈で睡眠発作と呼ばれます。入学試験中や初めてのデート中、顧客との商談中に眠り込んでしまうほどです。また、眠気が襲ってきたことに気づく前に眠り込んでしまうため、居眠りをしたことに本人が気づかないこともあります。

引用:e-ヘルスネット(厚生労働省)「ナルコレプシー」

周囲からは「ただ生活リズムが乱れていて自己管理がなっていない」「みんな仕事中に眠くなることはある、怠け者だ!」などと見られがちで、ナルコレプシーの当時者は特有の苦しみと辛さを抱えてしまいがちです。

 
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強い眠気や睡眠時の問題が数か月にわたって続く場合は、病院へ相談しましょう。

参考:MSDマニュアル家庭版「ナルコレプシー」

その他「突発性過眠症」などの睡眠障害

ナルコレプシーの他にも睡眠障害・覚醒障害はあります。たとえば、「突発性過眠症」や「概日リズム睡眠障害」、「不眠症」などが知られています。

睡眠の量・質はメンタルにも大きく関係するので、うつ病などのメンタル疾患が引き起こされる二次障害のリスクもあります。
この記事でご紹介している「働き方の工夫」などは内容が重複することもあるので参考になれば幸いです。

参考:MSDマニュアル プロフェッショナル版「睡眠障害および覚醒障害」

ナルコレプシーの症状

ナルコレプシーの症状・発作は以下のようなものがあります。

  • 日中に感じる強い眠気(睡眠発作)
  • 突然の筋力低下による脱力(情動脱力発作)
  • 寝る前後や起床直後に起こる麻痺(睡眠麻痺)
  • 幻覚が起きる(入眠時幻覚・出眠時幻覚)
  • 熟眠障害
  • その他睡眠障害

詳しくみていきましょう!

 
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後ほど紹介する「障害者雇用枠」で就職を目指す方は、ご自身の症状についてわかりやすく伝えられるようにしておきましょう。

日中に感じる強い眠気(睡眠発作)

まず代表的な症状として「日中に強い眠気を感じる」ことでしょう。
重要な会議中や1対1の時などの通常ではありえない状況で、症状により眠くなり、「睡眠発作」と呼ばれています。

突然の筋力低下による脱力(情動脱力発作)

日中に怒り・恐怖・喜び・笑い・驚きなどの突発的な感情が湧き、突然の筋力低下・いきなり眼が閉じる・地面に倒れる…といった場合があります。
これは「情動脱力発作」と呼ばれます。

参考:こころみ医学元住吉こころみクリニック【内科・呼吸器内科・心療内科】「【精神科医が解説】ナルコレプシーの症状・診断・治療」

寝る前後や起床直後に起こる麻痺(睡眠麻痺)

意外と知られていない症状として「入眠の前後や起床直後に起こる麻痺」が挙げられます。起床・入民時に突然体が動かなくなり、「睡眠麻痺」と呼ばれています。

 
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いわゆる「金縛り」状態です。頻繁に起こるようであればナルコレプシーを疑いましょう。

幻覚が起きる(入眠時幻覚・出眠時幻覚)

さらに寝入る前後や目覚める時に「強烈で鮮明な幻覚」が見える方もいらっしゃいます(入眠時幻覚・出眠時幻覚)。

 
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統合失調症にも「幻覚」の症状が見られるので、見極めが重要です。

熟眠障害

「熟眠障害」は睡眠のバランスが崩れることです。この症状により、夜間の睡眠が難しくなります。脳には疲れが残るため、日中の眠気がより強くなるのです。

 
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疲労が溜まり睡眠の質が落ちるとメンタルへの悪影響も出ます。

その他の合併症

ナルコレプシーは集中力の低下・やる気の喪失も時として引き起こします。
また、睡眠の質・量が損なわれたり周囲の理解が得られなかったりすることにより抑うつ状態になる可能性もあります。

ナルコレプシーの有病率

ナルコレプシーはどの程度の方が罹るのでしょうか。
世界では約2,000人に1人、日本人では約600人に1人と統計結果があり、日本人の有病率は世界で最も高いといわれています。

参考:日本睡眠学会「ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン項目」
一般社団法人 日本小児神経学会「Q44:ナルコレプシーの原因や症状について教えてください。」

ナルコレプシーが発症する原因

ナルコレプシーは以前まで原因が「不明」とされていました。
しかし、近年ではオレキシンの働きの低下が原因の可能性として挙げられています。

オレキシンとは脳のオレキシン神経から分泌され、「覚醒」と「睡眠」に関して中心的な役割を果たしている物質です。

 
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「脳脊髄液中オレキシンA」濃度は専門機関で測定することができます。

これらを踏まえて、感染症などによって免疫の働きが誤作動を起こすといった異常、そして「DR2」と呼ばれる白血球抗原(HLA)遺伝子が関係する遺伝が原因とも考えられています。」

 
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親族にナルコレプシーの症状を持つ人がいるかを確認してみても良いですね。

参考:秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座「秋田大学における過眠症研究」
こころみ医学元住吉こころみクリニック【内科・呼吸器内科・心療内科】「【精神科医が解説】ナルコレプシーの症状・診断・治療」
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座「睡眠研究にオレキシンA ELISAキットワコー」

ナルコレプシーの検査・診断方法

ナルコレプシーには検査・診断方法が複数あります。問診を受け、以下のような検査を受けて診断がおりるという流れです。

  • 睡眠ポリグラフ検査(PSG)
  • 睡眠潜時反復テスト(MSLT)
  • HLA(ヒト白血球抗原)型検査

ナルコレプシーの疑いが強い場合は「睡眠障害専門」のクリニックを探すと良いでしょう。一部、精神科や心療内科で診断をおこなえる場合もあります。

 
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障害者手帳の取得や障害年金の申請前には診断を受けることが必須です。
これらによって生活が楽になる方は多いので、ぜひ選択肢の一つとして考えておいてくださいね。

睡眠ポリグラフ検査(PSG)

睡眠ポリグラフ検査(PSG)は頭や耳・胸・足などに電極を設置して、観察し、睡眠の状態を調べていきます。

睡眠潜時反復テスト(MSLT)

睡眠潜時反復テスト(MSLT)は睡眠ポリグラフ検査を数時間置きに20分おこないます。睡眠ポリグラフを行った日の翌日、日中にテストを実施します。

 
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検査に時間を要するので、在職中の方はお休みの調整をしましょう。

HLA(ヒト白血球抗原)型検査

HLA(ヒト白血球抗原)型検査は遺伝子型ごとの2つの型を調べるものです。ナルコレプシー患者の方は、「DR2」と「DQ1」の2つの型が共に陽性になるといわれています。
ただし、この検査は補助診断の位置づけであり診断まではできません。

ナルコレプシーの治療方法

ナルコレプシーの治療方法は主に「薬物療法」「行動療法」「生活環境の働きかけ」があります。

 
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お薬で良くなることもありますが、基本は生活習慣に気を付けてうまく付き合っていく方法があります。

薬物療法

薬物療法は症状に分けて治療をおこないます。
「眠気・睡眠発作」には、精神賦活薬という治療薬があります。
「情動性脱力発作・睡眠麻痺・入眠時幻覚」に対してはクロミプラミン、イミプラミンという治療薬を投与します。
また状況に応じて睡眠導入剤を処方することもあります。

参考:日本睡眠学会「ナルコレプシー クリニカルクエスチョン」

行動療法

行動療法は、「可能な限り規則正しい生活習慣で生活する」といったシンプルなものです。
決まった時間に昼寝(仮眠)をする、睡眠と食事は大きく関わりがあるので暴飲暴食をしないといったルールを生活に組み込みます。

生活環境への働きかけ

また生活環境への働きかけも重要です。治療には周りの理解が欠かせません。治療をしながら、社会生活を営む方法を考えていきましょう。

 
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職場のお悩みはDIエージェントへもご相談ください。「合理的配慮」を求めることができるかもしれません!


ナルコレプシーの課題

ナルコレプシーの課題は本人も自覚がしづらく、周囲からの理解も得られにくいことが挙げられ、大変つらい状況に陥りやすいことです。

 
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一人で抱え込み、うつ病などのメンタル疾患を発症してしまう二次障害を防ぎましょう!

本人の病気の自覚が薄い

ナルコレプシーは日中の眠気が症状の基本なので、日常的に眠くなり、「眠いという自覚」「眠っていてしまったという自覚」すらなくなります。
そのため、受診や発見が遅れることもあるでしょう。

周囲の理解が得られにくい

また、診断がおりた後、病気を説明しても周囲の理解が得られないことは多々あります。ひどいケースでは理解を得られず退職や転職になることもあるのです。

 
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脳内物質の異常であるのに「怠け者」だと思われてしまい、悔しい思いをされたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね……。

知って欲しい「障害者手帳」「障害年金」「障害者雇用」制度

このように生活にも大きな支障がある、「働けない」という場合は、支援制度を活用しましょう。
ここでは代表的な制度として「障害者手帳」・「障害年金」・「障害者雇用」について解説します。

 
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「眠いだけなのに福祉制度を使うのは申し訳ない」と思う必要は全くありません!みなさんが少しでも楽になる道を探していきましょう。

障害者手帳・障害年金

まずは障害者手帳制度です。二次障害でうつなどを発症された方が取得するケースもありますが……。

 
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これまで睡眠障害の症状だけで障害者手帳を取得された方もいらっしゃいます。

取得できる障害者手帳の種類は「精神障害者保健福祉手帳」になります。
割引制度や各種助成など詳しいメリットはこちらをご覧ください。

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また、障害者手帳は取得できなくても障害年金を受給できる場合もあります。フルタイムなどで十分に働けないという方はぜひ検討してみてください。
受給のハードルは高いといわれていますが、プロである社会保険労務士(社労士)が相談にのってくれます。

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参考:社会保険労務士法人 日本障害年金研究所 千葉障害年金相談センター「うつ病・ナルコレプシーで障害厚生年金2級を取得、総額約730万円を受給できたケース」

収入面は?「障害者雇用枠」ならフルタイムでも働ける

「障害者雇用枠」はナルコレプシーを開示して、入社をすることです。
ナルコレプシーを理解した上で、配慮を前提としているので、「怠けている!」と責められるリスクも極めて低いでしょう。

 
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ただし「ナルコレプシー」の認知度は障害者雇用枠でもまだまだ低いので、ぜひエージェントをうまく活用して、企業への伝え方を一緒に考えましょう。
有名大手企業への内定ご支援実績が多数あります!

また、働く時間に裁量がもてる「フルフレックス制・裁量労働制」の企業への就職やフリーランスや起業をしている方もいらっしゃいます。

障害者雇用のメリットは「残業配慮」や「在宅ワーク」

実際に障害者雇用枠で入社された方は今までどんな配慮を受けてきたでしょうか?実例をお伝えします。

  • 残業配慮
  • 職場と近い場所に住む
  • 在宅ワークの出来る職場を選ぶ
  • 仮眠室のある職場
  • 仮眠の許可

規則正しい生活ができていることを前提に、障害者雇用枠であればその生活リズムが崩れないようにする働き方ができるように配慮の相談が可能なのです。

 
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特に在宅ワークは出社による移動時間が削減され、「睡眠時間の確保ができるようになった!」と喜ばれる方も。就業中に眠らない工夫ができていれば、オススメの働き方です。


睡眠障害、ナルコレプシーとうまく付き合って自分らしい生き方を見つけましょう

自分ではどうしようもできないことに悔しい思いをしている方もいるのではないでしょうか。どうか自分のことは責めないでくださいね。

DIエージェントでこれまでご支援した方は「障害者雇用枠」で誰もが羨む大手有名企業にキャリアアップ転職を果たされた方が多数いらっしゃいます。
睡眠に悩まされながらも大変な努力を重ねてきた方が多く、現在は配慮のある環境で、専門知識を活かしていきいきと働いていらっしゃいます。
お仕事に関するお悩みはDIエージェントまでお寄せください。

この記事がよりよい選択肢が見つかるきっかけになれば嬉しいです。
社会にもナルコレプシーの認識が広まるようDIエージェントとしてもこれからも努めて参ります。

監修:安部 桐子
産業カウンセラー。EAP事業の立ち上げ経験を活かし、(株)D&Iに入社後には定着支援サービス「ワクサポ」と在宅型就労支援「エンカクトレーナー」を開始。現在は300名以上の障害者の定着化・戦力化に向けたサービスの統括をおこなう。