ADHDの方は遅刻しやすい?遅れる理由や対策方法を紹介

ADHDの方は遅刻が多い傾向があります。遅刻しやすい理由はいくつかあり、ADHDという病気の特性上やむを得ません。

そこで、可能な限り遅刻を防ぐためにできる対策や、どうしても遅刻してしまい、支障があって今の仕事を続けることが難しい場合にどうすればいいかなどを詳しく解説します。

ADHDとは?

ADHD(注意欠如・多動症)とは「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の略。発達障害の一種で、さまざまな特性があります。

子どものときから判明していて大人になるにつれて症状が落ち着いてくる場合もあれば、大人になってから気づくケースもあることが特徴です。

ADHDの特性・症状

ADHDの特性は、大きく分けて不注意と衝動性・多動性があります。それぞれの症状は以下のようなものです。

【不注意】

  • 気が散りやすい
  • 集中力が続かない
  • マルチタスクをこなすのが難しい
  • やり忘れや忘れ物が多い
  • 物を紛失しやすい
  • 人の話をきちんと聞けない
  • うっかりミスをしやすい
  • 整理整頓が苦手 など

【衝動性・多動性】

  • 思いついたら即行動や発言をする・勝手に物事を進める
  • じっとするのが苦手で落ち着きがない(貧乏ゆすりをする・立ち歩くなど)
  • 人の話をさえぎって話し始める
  • 順番を待てずに割り込みをする など

また、上記のような症状が組み合わさり、遅刻しやすい傾向も見られます。

他の発達障害との違い

発達障害には、ADHD以外にASD(自閉スペクトラム症)とLD/SLD(学習障害)があります。それぞれの違いはどんな点なのでしょうか。

ASDは、特定のことに強いこだわりがあったり、他者とのコミュニケーションが苦手だったりすることが特徴です。また、LD/SLDは、文字の読み書きや計算が苦手という特性があります。

 
キャリアアドバイザー
発達障害の方は仕事の場面でも困難を抱えやすく、悩みを持つ方も多くいらっしゃいます。どのような悩みが見られやすいのか、どんな働き方があるのかを、下記の記事でまとめています

ADHDの方が遅刻しやすい場面・理由

では、ADHDの方はどんな場面でなぜ遅刻してしまうのでしょうか。見られやすい状況について解説します。

1. 時間のイメージが難しい

身支度に思っていたより時間がかかった・間に合うと思って家を出たのにズレがあったなど、時間の見当をうまくつけられないケースです。

自分では5分で済むと考えていたことが、実際には30分かかってしまったなどはありがちなこと。想像より長めに時間を見積もることが大切です。

2. 寝坊してしまう

睡眠障害を抱えている方も多く、起きるべき時間に起きられません。寝坊した結果、行くべき時間に間に合わず遅刻してしまいます。詳しくは次章で解説しますが、目覚ましを適切に使うなどの対策が必要でしょう。

3. ほかのことに集中しすぎている

ADHDの方には不注意の傾向が見られる反面、人によっては過集中の傾向があることも特徴です。時間を意識せずに何かに没頭していると、次にやるべきことを忘れ、行かなければならない場所があることも失念してしまいます。

4. 集合についての計画が得意でない

待ち合わせ場所を勘違いする・ルートを調べておらずたどり着くのに時間がかかる・電車やバスの時間を間違っていたなどで、集合すべき時間に間に合わないこともあります。

このような特性を持つ方は、特に初めて行く場所の場合、遅刻しないようにするために事前のリサーチが欠かせません。

5. 体が動かずダラダラしてしまう

早く動いたほうがいいと頭ではわかっているのに、他の情報が入ってくるなどして体の動きが鈍くなり、思ったように進めないこともあるでしょう。

「間に合わないかもしれない」「急がなければ」というような緊張感がなく、ダラダラ動いてしまった結果、遅刻してしまいます。

遅刻をしないためにできる対策

前章のような遅刻を防ぐためには、適切な対策を取りましょう。対策方法の例をお伝えします。

1. 事前準備をしっかり行う・早め早めの行動を取る

出勤するときやどこかに出かけるときは、当日になってから服を出して着替えて持ち物を揃えてなどしていると、時間がかかってしまいます。家を出る前に慌てないために、前の日までにできるだけ準備を整えておきましょう。

また、せっかく準備が済んでいても、当日ゆっくりしていては時間に間に合いません。遅刻しがちであるという自覚を持って、余裕のある行動を取ることが重要です。

2. 目覚ましの時間を早める・複数回アラームをセットする

寝坊しがちな場合、目覚まし時計の設定時刻を早めてみましょう。また、一度のアラームで目覚められないなら、複数回鳴らすようにセットしてみてください。耳に響きやすい音に設定したり、違う音のアラームを使ったりするのも有効です。

3. やる作業ごとにアラームをかける

一つのことに集中しすぎ、次にやるべきことを忘れてしまって遅刻する場合は、作業ごとにアラームを鳴らし、次のタスクに間に合うように行動するとよいでしょう。こまめにアラームを設定することで時間への意識も高まりやすくなり、過集中を防ぎやすくなります。

職場など音を鳴らせない環境の場合は、音は切り、バイブレーションをONにして、振動で気づけるようにしましょう。

4. 集合場所・行き方・所要時間などを前もってしっかり調べる

集合場所が初めて行く場所だった場合、迷わずスムーズに行けるよう、行き方(交通手段・ルート)やどれくらい時間がかかるかを前日までにきちんと調べましょう。当日調べていては、そのせいで遅刻する可能性もあります。

また、移動時間や集合時間から、何時に出発すべきかを把握することも大事です。

5. 体内のリズムを整える

体内時計が狂っているせいで、体がシャキッとせず動きがゆっくりになり、遅刻するということもあります。

そこで、食事の栄養バランスを考える・起床や就寝の時間を一定にする・日中は太陽の光を浴びる・寝る2時間くらい前までに入浴を済ませる・就寝前にスマホを見ないなどして、体のリズムを整えましょう。

 
キャリアアドバイザー
自分の傾向や体調に合った対策を取ることも大切です

ADHDの方の遅刻への対策とあわせて重要な点

ADHDの方が前章の遅刻への対策とともに押さえておきたい点を解説します。

ルールやルーティンを決める

自分の特性に応じたルールや日課を決めるとよいでしょう。特に仕事に行く場合、起床時間・着替える時間・朝食の時間・メイクの時間・出発時間を決めることや、前日に翌日の持ち物・服などを準備すること、身支度のパターンを考えておくことがおすすめです。

決まりごとがあると実行するときに迷うことが減り、スムーズに進めやすくなります。

周りの人に協力してもらう

特に遅刻できない場面などでは、家族や友人の協力を仰ぐのもおすすめです。声かけや電話をしてもらうなど、周囲の手を借りましょう。

仕事では合理的配慮を得よう

いくら対策をしても、ADHDの特性の関係で、遅刻を完全になくすことは難しいかもしれません。そこで、仕事においては、職場の人々に自分の特性を理解してもらい、通勤時間を調整してもらう・フレックス制にしてもらうなどの配慮を受けられるとよいでしょう。

遅刻への対策が難しい場合は転職も検討を

仕事で配慮を受けるのが難しい・どうしても間に合わないなどの場合は転職を検討してみましょう。ADHDの方は、障害者手帳を持っていれば、障害者枠で適切な配慮を受けながら働くことも可能です。

遅刻しやすい方は、前でも触れたように、フレックス制・出勤時間を遅めにしてくれる・テレワークなどの体制だと働きやすいでしょう。

 
キャリアアドバイザー
転職を考えるときや障害者枠での応募の際には、次章で紹介するような機関に相談すると、より自分に合った職場や働き方を見つけやすいです

ADHDの方の転職活動を支援してくれるサービス

つづいて、ADHDの方が転職活動をする際にサポートしてくれるサービスを紹介します。一人での活動が不安な方は、ぜひプロの力を借りながら、新しい職場探しをしてみてください。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

遅刻をしやすいADHDの方にも働きやすい職場は見つかる!

ADHDの特性として遅刻の傾向が見られやすいことは事実です。しかし、対策によって改善を目指すほか、転職して合理的配慮を得ながら働く方法もあります。遅刻が多く今の職場で肩身の狭い思いをしている方も、自分に合った職場は見つかるので、諦めずに適切な環境を探しましょう。

転職活動の際には支援機関を利用すると心強いので、ぜひお気軽に「DIエージェント」にご相談ください。障害者の方専門の就職・転職支援を行っているDIエージェントは、仕事をお探しの方に対し、担当者が一対一で丁寧に対応しています。

希望条件や適性などをヒアリングした上で、求人紹介や企業との調整などを行い、応募時の対策などのサポートも実施していることが特徴です。初めての転職活動に不安を抱えている方も、どうぞ熟練のキャリアアドバイザーにお任せください。

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あわせて、ADHDの方に向いている仕事や、逆に適していない仕事もチェックしましょう。
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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。