うつ病でも仕事は続けられる?克服する方法や休職するタイミングを解説

うつ病は、気分が落ち込みやすくなったり憂鬱になったりするなど、精神的症状の多い病気です。その度合いによっては日常生活に限らず、仕事にも困難が生じる場合があります。

そこで今回は、うつ病の方にオススメの克服方法や、休職するタイミングについて解説します。

うつ病の症状に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

うつ病でも仕事を続けることは可能|克服するポイント

結論からお話しすると、うつ病を抱えていても働きながら克服することは可能です。理想的なのは休養ですが、仕事を休めない方はこまめな休息を確保するのが望ましいです。

ここではうつ病をお持ちの方へ、仕事をしながら克服するポイントを紹介します。

転職・退職といった大きな決断をしない

うつ病は思考力の低下を招き、物事を悲観的に捉えてしまう傾向があることから、克服を目指すときは大きな決断をしないようにしましょう。例えば、転職や退職など職場を変えるなどです。

 
キャリアアドバイザー
まずはゆっくりと療養し、回復してから将来のことを考えましょう!

厚生労働省の報告書では、うつ病の再発率は60%と言われており、2回うつ病にかかった人では70%、3回かかった人では90%と再発率は高くなる傾向にあるとしています。

引用元
厚生労働省|コラム・活動事例・資料 編

さらに、1年ほどは「再発予防期間」と考えることが推奨されていて、自己判断による通院や服薬の中断は症状を悪化させる可能性もあります。

うつ病の方が仕事をしながら克服を目指すときは、体調が良くなっていても大きな決断や自己判断は避け、主治医と相談し、今の自分に合った働き方を心がけましょう。

生活リズムを整える

朝はきちんと起きて朝日を浴びるなど、生活リズムを整えることも大切です。朝日を浴びる行動にはセロトニンの分泌量の増加を手助けし、不安の抑制や睡眠ホルモンの分泌量の増加によって安眠効果につながると言われています。

うつ病と診断されたときはこれまでの生活を振り返り、生活リズムを見直してみてください。不規則な生活が続いているときは睡眠時間や食事の時間を整えるなど、病状の安定につながる行動を意識しましょう。

なお、うつ病と診断されたことを受けて職場の上司に相談しているのであれば、残業や夜勤について配慮を申し出ることをオススメします。

自分なりにストレスレベルを計測する

うつ病の症状を安定させるには、原因と考えられる環境から離れることも考えましょう。ただし、気分の浮き沈みが激しく判断力が低下していることを考慮し、転職や退職といった大きな決断は避けてください。

うつ病になりやすい原因には人間関係や職場環境があり、なかでも業務量の増加や役割の変化、配置された部署がきっかけになることも少なくありません。

もし異動や転職・休職を選択したいときは、症状が落ち着いてから決断する、または自分だけでなく家族やパートナーに相談してから決めることをオススメします。

うつ病と仕事を両立させる方法

うつ病をお持ちの方が仕事を両立させる場合は、以下の方法を試してみましょう。

規則正しい生活を維持する

うつ病の症状は、規則正しい生活に改善するだけでも緩やかになる場合があります。働き始めの頃は意識できていても、忙しくなるほど仕事中心の生活に変わることも多く、知らないうちに無理をしがちです。

仕事が忙しくてもうつ病であることを忘れず、自分らしい生活リズムを維持することを心がけましょう。

例えば、休日でも朝はきちんと起床し朝日を浴びてセロトニンの分泌量を促す、外気に触れることを意識するだけでも気持ちが穏やかになります。そのほか、栄養バランスを考えた食事を心がけたり室内でもできる軽い運動(ストレッチなど)を始めてみるのも効果的です。

症状の変化などを周囲に相談する

うつ病と診断されたあとは、できるだけ自分のことを周囲に共有しておきましょう。働いているうちに体調が悪くても休めない日が増え、無理がたたってうつ病が悪化する恐れもあります。

家族やパートナーにうつ病であることを共有しておけば、ちょっとした変化にも気付いてもらいやすく、重症化の予防につなげられます。

無理をしない

どれだけ調子が良くても無理はしないようにすることも大切です。うつ病の再発率は60%と言われていることから、服薬が終わっても1年程度は心身の様子をみながら働くことをオススメします。

可能であれば職場にうつ病であること、またはうつ病の罹患経験があることを共有しておくと、体調不良による休暇への配慮を受けやすくなります。

プラス思考を心がける

うつ病はいつの間にかネガティブな思考に陥り、そんな自分に疲れてしまうこともあります。そんなときはできるだけ物事を深く考えず、一旦、プラス思考でいることを心がけるのがオススメです。

 
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例えばうつ病を抱える自分に「どうしてこんなことになったんだろう」ではなく、「休みが必要だったからうつ病になったんだ」と考え方を切り替えてみましょう。そうすることで自分を肯定しながらうつ病と仕事を両立できます。

服薬を怠らない

主治医から服薬の指示を受けているときはどれだけ調子の良い日が続いていても、きちんと飲み続けましょう。これは服薬のおかげである可能性が高く、自己判断で薬をやめてしまうと症状を悪化させる原因になるためです。

 
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これは受診の予定がある場合も同様です!

うつ病によって仕事を休職する場合の方法

症状の強さによっては仕事を続けられず、長期休暇を検討する方もいらっしゃるでしょう。そんなときは、休職制度を設けている可能性を考え、就業規則の確認をオススメします。

休職制度と一口に言っても、制度や条件、休職可能期間などが会社によって異なりますが、休職制度があればきちんと療養してから復帰することが可能です。

休職を検討する場合は、まずは会社が休職制度を導入しているかを調べ、どのような条件が記載されているかを確認しましょう。

ここではうつ病で休職する場合の一般的な流れを解説します。

医療機関を受診する

うつ病で休職する場合は、まず医療機関を受診し、主治医から診断書を受け取りましょう。なお、診断書の発行は数日から数週間かかることもあるため、休職を検討する場合は、できるだけ早めに医療機関を受診することをオススメします。

休職制度の詳細を確認する

次に休職制度の詳細を確認しましょう。これは会社によって休職制度の有無や内容・条件が異なる場合があるためです。休職を検討する際は就業規則に目を通し、下記項目を確認してください。

  • 休職可能期間
  • 給料・手当
  • 社会保険
  • 休職中の連絡方法

休職可能期間は、休職する理由や勤続年数などによって期間が異なる場合があります。また、休職期間満了後の規定についても必ず確認しましょう。これは休職期間満了時に休職の理由が消滅していないときに、自然退職または解雇が定められている場合が多いためです。

給料・手当については、一般的な休職では無給であることが多いです。一定の条件を満たす場合は、給与とは別に「傷病手当金」の支給対象になる場合があります。傷病手当金については下記ページで詳しくまとめているので併せて参考にしてみてください。

就業規則に目を通しても、休職について不明な点があるときは、直属の上司や人事部に問い合わせてみましょう。

休職手続きを進める

休職制度の有無や条件・給与、休職期間中の連絡方法について確認したら、必要書類を揃えて提出し休職手続きを進めます。

うつ病と付き合いながら仕事をするメリット・デメリット

うつ病と付き合いながら仕事をすると、下表のようなメリット・デメリットがあると考えられます。

メリット デメリット
  • 収入の確保が出来る
  • 生活の維持が出来る
  • キャリアにブランクができない
  • 体調・症状の悪化
  • ミスの増加
  • 人間関係の悪化
  • 周囲に心配をかける

うつ病を抱えながら仕事をするメリットには、第一に安定した収入が得られ、生活を維持できることが挙げられます。また、職歴にブランクができないので転職活動に影響を与えにくいのもメリットです。

しかしその一方で、体調や症状の悪化が見られるほか、周囲に心配を掛けてしまうなどのデメリットも懸念されます。

安定した生活を送るためには働かなければなりませが、うつ病は再発率の高い病気であり、症状が悪化すれば長期的な治療が必要です。無理をして更に症状が悪化する前に、可能であれば休職のほか、国・自治体による支援・制度の利用を検討しましょう。

うつ病をお持ちの方が利用できる支援・制度

うつ病の方は、傷病手当金・自立支援医療制度・障害年金と、3つの支援・制度を利用できます。ここではそれぞれの概要について紹介します。

傷病手当金

傷病手当金とは、病気やケガで会社を休んだときに、被保険者とその家族の生活を保障するための手当のことです。支給される条件や支給額については下記ページでまとめているので、あわせてご覧ください。

自立支援医療制度

自立支援医療制度とは、心身の障害に対して行われる医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度のことです。対象者は「精神通院医療」「更生医療」「育成医療」の3つに分かれており、うつ病は「精神通院医療」に区分されます。自立支援医療については下記ページで詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。

障害年金

障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などに制限ができた場合に受け取れる年金のことです。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つに分かれており、国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」を、厚生年金に加入していた場合は「障害基礎年金」を請求できます。障害年金については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

なお、うつ病の方が障害年金を請求する場合は、障害認定基準に該当していなければなりません。詳細については障害年金支援ネットワーク公式サイトでご確認ください。

NPO法人障害年金支援ネットワーク|【詳しく解説】うつ病と障害年金

うつ病を抱えながら働くには自己管理が大切

うつ病と仕事を両立するためには、生活習慣を整え、症状の緩和に効果的な行動を取ることが大切です。休みの日でもきちんと早起きをして朝日を浴びることを意識すれば、太陽の光によってセロトニンの分泌量が増え、心のバランスを保てると言われています。

そのため、どれだけ仕事が忙しくても、自己管理を怠らないことが大切です。

しかし、今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、転職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。