就労移行支援を利用しても就職できなかった場合の解決方法を解説

就労移行支援とは、一般就労を目指す18歳以上65歳未満の障害者が利用でき、2年間に渡って就職に向けた幅広い支援を受けることができる制度です。

しかし、既に就労移行支援を利用しているものの、このまま就職できなかったらどうすればいいのか不安になっている方や、本当に就職できるか不安で利用を迷っている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、もし就労移行支援を利用しても就職できなかった場合におすすめな、ハローワークをはじめとする職業訓練制度の紹介や、転職エージェントとの併用について解説します。
ぜひ最後までご覧ください。

就労移行支援を利用しても就職できない場合の解決方法とは

就労移行支援制度は原則として2年間の利用が目安で、途中で中断し、その後再開した場合でも合計で2年間が限度となります。

一般就労への移行率は年々上がっていますが、2019年の一般就労への移行率は54.7%であり、全ての利用者が目標を達成できているわけではありません。

もし2年間の利用期間を過ぎても就職できなかった場合、いくつかの選択肢が考えられます。制度利用の延長申請をすることを含め、5つの解決方法があります。

それぞれの方法に一長一短があるため、どの方法を選択するかは、自身の障害の状態や就労の意向、さらには個人の状況を考慮して慎重に検討する必要があります。

引用元
厚生労働省:障害福祉サービスからの就職者について

 
キャリアアドバイザー
2年の期限があると、期間内に就労できるのかと不安に思ったり、焦りを感じるかもしれません。しかし、自身の障害特性に合った職場で長く働くために就労を目指す制度なので、慌てて条件を変えて無理に就労するのは本末転倒です。延長も含めてさまざまな方法があることを知っておきましょう。

就労移行支援制度の利用は平均約16カ月

「制度を利用して、もし2年以内に就労できなかったら…」と不安に思うかも知れませんが、実は就労移行支援制度の利用期間は平均16カ月程度です。

2年以上延長する割合は全体の6%程度で、全体としては決して多い数字ではありません。いきいきと長く働ける職場を見付けるためにも、慌てて焦らずいろいろな方法で自分にあった就労を目指すことが大切です。

就労移行支援制度の延長を申請する

就労移行支援制度は原則として2年の利用が設定されていますが、正当な理由がある場合には利用期間の延長を申請することができます。

しかし、延長申請の基準は自治体によって異なり、全てのケースで延長が認められるわけではありません。延長申請の審査は、感染症の拡大や急病、障害の状態の悪化、家庭事情など、個人のさまざまな状況を考慮して行われます。

審査の結果、延長が認められれば、引き続き就労移行支援制度を利用して一般就労に向けての準備を進めることができるようになります。

引用元
厚生労働省:就労移行支援・就労定着支援に係る報酬・基準について

延長は事業所を通じて申請するのがおすすめ

就労移行支援制度の利用延長は、住民票を置いている自治体に申請することになります。

申請と同時にサービス等利用計画書の再提出や、障害福祉サービス受給者証の再申請が必要になるケースもあります。必要な手続きは自治体によって異なるため、事業所を通じて申請するのがおすすめです。

もし利用を延長したい場合、まずは事業所の支援員に相談し、本当に延長することで就労できるのかなどを話し合いましょう。

就労継続支援A型やB型に移行する

一般就労への移行が体調やスキル不足で困難に感じる場合、就労継続支援への移行という選択があります。

就労継続支援にはA型およびB型があり、それぞれが異なる支援内容を提供しているので、適切な支援を選ぶことで自分に合ったペースで就労準備を整えられます。

就労継続支援を利用して態勢を整えた後、再度就労移行支援を利用し、一般就労に向けての取り組みを再開するケースも多く見られます。

また、就労継続支援から一般就労へ直接移行する移行率は高いとは言えませんが、転職エージェントを併用することで、自身に適した会社を見つけ、スムーズな一般就労への移行を実現できる可能性があります。

職業訓練を利用する

障害者が就労を目指す際には、職業訓練制度の利用も有効な手段です。実践的な技術やスキルを習得する機会を提供し、職場で求められる能力を向上させることを目的とした制度なので、より就労の確率を上げることができます。

職業訓練を利用するためには、まずハローワークに求職者として登録することが必要です。登録が完了すれば、各種の職業訓練プログラムの参加が可能です。

職業訓練の期間はプログラムによって異なり、多くは3ヶ月から1年程度で設定されていますが、短期間の1ヶ月から3ヶ月のプログラムも提供されている場合があります。

職業訓練を通じて得た技術やスキルは、就職活動においても大きなアセットとなり、より幅広い職種への就労の成功につながる可能性を高めます。

自分で就職活動をする

ハローワークを利用したり、自分で求人媒体を見て応募する方法もあります。障害の内容や程度によっては、一般枠での就労も可能です。また、ハローワークには障害者専門窓口があるので、そちらに相談するとより障害者雇用に適した求人の情報が得られます。

ただし、一人で就職活動をするとさまざまなサポートが受けられないので、行政サービスや転職エージェントの利用がおすすめです。

転職エージェントを利用する

通常の一般枠向けの転職エージェント以外に、障害者の就労に強い転職エージェントも多数あります。

障害者の就労に強いエージェントには、障害者雇用枠などの求人も豊富にあります。ハローワークや一般公開されている求人以外の求人情報もあるので、より仕事が探しやすくなります。

行政のサービスと併用できるので、積極的な就労を目指したいのであれば転職エージェントの利用は効果的といえるでしょう。

就労移行支援制度以外に利用できる就労支援の制度やサービス

就労移行支援制度以外にも多くの支援制度やサービスが存在しています。

ハローワークと連携して提供されるハロートレーニングは、職業技術の向上や職場適応力を高めることができるプログラムです。また、障害者就業支援センターでは、個別の職業カウンセリングや就労準備、職場紹介など、障害者の就労を全面的に支援するサービスが提供されています。

さらに、障害者採用に特化した転職エージェントを利用することで、個人のスキルや障害特性、キャリアの希望に合った職を見つける手助けをしてくれます。

これらの制度やサービスを適切に利用することで、自身の能力や希望に応じた就労の機会を広げることができるでしょう。

 
キャリアアドバイザー
就労移行支援制度で就職できなかった場合でも、ハローワークをはじめとするさまざまな行政のサービスや職業訓練があります。また、同時に転職エージェントも併用できるので、積極的に活用しましょう。

ハローワーク

公共職業安定所の通称で、障害者向けの窓口が設置されています。窓口では障害者向け就労の専門スタッフへの相談や職業指導、障害者雇用枠への応募ができます。

また、キャリアの希望に対してスキルの不足が心配な場合は、職業訓練の紹介も受けられます。ハロートレーニングを受講したい場合は、まずはハローワークで就労の相談をし、求職者登録をする必要があります。

ハロートレーニング(障害者訓練)

ハローワークの求職者を対象に、1カ月~1年の公共職業訓練を提供する制度です。国や都道府県が設置している障害者職業能力開発校のほか、民間の教育訓練機関などで受講できます。

就職に強いスキルや、実践的な技能、求人需要が高い専門技術を身に付け、より就職しやすい条件を整えるのに適しています。

修了後にハローワークの障害者専門窓口で就職支援も受けられるため、キャリアプランをしっかりと立てて利用するのがおすすめです。

職業リハビリテーションセンター

国が設置し、運営機構が運営するセンターです。個々の特性や能力に応じた、きめ細かで総合的な職業リハビリテーションサービスを提供しています。

入所の申込はハローワークから可能で、埼玉県所沢市と岡山県吉備中央町に設置されています。遠隔地からの入所の場合、障リハ宿舎という隣接する宿舎への入所も可能です。

障害者職業能力開発校

国が設置したもののほか、国からの委託を請けた都道府県営のもの、都道府県が設置したものなどがありますが、基本的に受講できる内容やプログラムに変わりはありません。

開設されている科目によって応募資格や対象者が異なり、応募期間などが定められています。多くが4月スタートで、一部は4月以降3カ月おきに開設されています。

条件を満たす身体障害者で通所が困難な方は家賃、光熱費が無料の寮も利用できます。

一般の公共能力開発校の障害者対象訓練科

一般の公共職業能力開発校で、障害者を対象にした訓練科を設置しているコースです。

対象者と入校月が決まっており、訓練期間は6カ月~1年が多く、4月もしくは10月に入校するコースがほとんどです。そのため、タイミングによっては半年先まで受講が難しくなってしまうこともあります。

障害者委託訓練事業

財団法人や一般企業、スクールなどが、ハローワークと連携して実施する職業訓練コースです。

非常に多様なコースが設定されており、ほかの職業訓練よりも頻繁に募集されているので応募しやすいのが特徴です。コースの受講期間も短く、1~3カ月の短期講座が多くなっています。

地域障害者職業センター

ハローワークと連携して、障害者雇用促進法に基づいて設置されている支援機関です。障害のある方が就職や復職をするために、専門的な職業リハビリテーションを提供しています。

就労に必要なスキルアップだけでなく、職業準備支援やジョブコーチなど、多岐に渡る支援が受けられます。また、障害者を雇用する事業主に対する支援も行っており、雇用者、被雇用者の両方を支え、障害者雇用全体を支援する位置づけです。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者が仕事と日常生活の両方を円滑に進められるよう支援する機関です。

このセンターでは、就業に関するアドバイスや関係機関との連携を含む調整サービスを提供しており、障害者が職場で適切なサポートを受けられます。

また、仕事をしながら日常生活を送るにあたって生じる問題への助言やサポートも提供されています。障害があっても仕事と生活のバランスを保ちながら、いきいきと自立した生活を送ることができるよう全面的な支援を受けられます。

障害者の就労に実績のある転職エージェント

転職エージェントには、障害者の就労に実績がある専門のエージェントがあります。求職者に対して専任の担当者がつき、マンツーマンで面談や手続きを仲介することで、企業と障害者のミスマッチを防ぎ、スムーズな就労が可能です。

また、経験豊富なキャリアアドバイザーが障害特性や希望条件を聞きながら転職をサポートするため、より希望に添ったキャリアプランを設計し、就労を目指せます。

書類添削や模擬面接などの対策、キャリアカウンセリング、入社後のアフターフォローなどが受けられるので、行政の支援と併用するとより効果的です。

就労移行支援で就職できなかった場合は、職業訓練と転職エージェントを活用して一般就労を目指そう!

就労移行支援を利用して一般就労を目指したけれど就職できなかった場合でも、さまざまな支援制度やサービスがあります。

さらに職業訓練を重ねてスキルアップすることで自身の価値を高めることで、より自分の望んでいる形での就労が可能になるでしょう。

職業訓練の制度や、就労の支援については、各自治体やハローワークに窓口が設置されています。まずは最寄りの自治体・ハローワークに確認されるとよいかと思います。

また、転職エージェントを活用して就職活動を進めたいという方はぜひ一度DIエージェントへご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。