片耳難聴の原因と症状、片耳が聞こえにくい状態の対処法を解説

片方の耳だけなんだか聞こえにくい、耳鳴りがする、中耳炎のあと聞こえが悪くなった、という症状を抱えてはいないでしょうか。

片耳難聴は、片方の耳だけ聴力が落ちてしまう症状で、原因もさまざまです。片側だけ音が聞き取りにくいと、一方から来る車や自転車に気付かなかったり、話し掛けられていることがわからなかったりと、事故やトラブルが起きやすくなってしまいます。
しかし、心当たりがあったとしても、実際の症状や対処法が分からず、ご不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、片耳難聴の特徴や症状、原因を解説していきます。ぜひ参考にしてください。

片耳難聴とは?原因や症状

片耳難聴は、片方の耳が高度の難聴にある状態を指します。「一側性難聴」や「一側ろう」とも呼ばれ、先天性のものと後天性のものがあります。

後天性の片耳難聴の代表的な原因のひとつは、おたふくかぜの後遺症で「ムンプス難聴」と呼ばれます。これはムンプスウイルスの内耳感染が原因で、15歳以下での発症が多く報告されています。

他にも加齢性のものや突発性難聴などさまざまな原因があり、外耳、中耳、内耳と広範囲にわたるため、適切な治療にはしっかりと原因を突き止める必要があります。

片耳難聴は片方だけ聞こえないという不便も大きいのですが、もっとも大きな問題は、聞こえなかったために難聴がある側からかけられた声を無視したように見えてしまい、人間関係での問題を抱えることでしょう。

 
キャリアアドバイザー
片耳難聴は突発性難聴などで、突然発生することもあります。ある日突然、片方の耳だけ調子が悪いと感じたら、放置しないことが大切です。
また、生活習慣やストレスが原因になることも少なくありません。心当たりがある場合は、治療と同時に生活習慣を見直し、心のケアをしてみましょう。

片耳難聴の症状

片耳難聴はその名の通り、片耳だけが音が小さかったり、聞こえなくなったりする、一側性の症状が特徴です。

主に片耳の聞こえ方がおかしい、片方だけ耳鳴りが続く、めまいがする、吐き気がする、耳になにかがつまったように感じるなどの症状が挙げられます。

また突発性の場合は初期症状が特になく、前触れなく発症するのも特徴の一つです。耳鳴りが起こったり突然聞こえなくなった日がはっきりとわかるケースも珍しくありません。

また、若年層に多い低音障害型感音難聴も、片耳難聴に多い症例の一つです。低音域が聞き取りにくくなり、ゴーという耳鳴りや、片方の耳だけがつまったような感覚、めまいなどがあります。

片耳難聴の原因:突発性難聴

ある日突然、片方の耳だけが聞こえなくなる症状で、原因はストレスや病因性などさまざまです。

難聴と前後して耳鳴りや耳の閉塞感、吐き気、めまいなどが発生することがありますが、症状が軽く見落とされてしまうこともあります。

原因は多岐に渡るため、症状が出たら一刻も早く専門機関にかかる必要があります。聞こえにくさを放置すると、そのまま聴力が失われてしまうこともあるためです。

突発性難聴は治療が早いほど聴力の回復が期待できるので、聞こえにくさを感じたら、迷わず耳鼻科を受診しましょう。

また、ストレス性の場合は再発するケースもあるので、併せて精神的なケアも大切です。

片耳難聴の原因:急性低音障害型感音難聴

低い音が聞き取りにくくなり、耳閉感を伴います。数日から数週間程度で回復するものの、繰り返し発症するケースもあります。

内耳の障害によるもののほかに、ストレスが原因で発症することが多いことがわかっており、若年層に多いのが特徴です。

明確な原因は不明ですが、内耳の中にある内リンパという器官に組織液が溜まることが原因で起きる内リンパ水腫ではないかと言われています。

 
キャリアアドバイザー
通常の会話や生活音が急に聞き取れなくなるわけではないため、症状を見過ごして気付かずに進行してしまい、治療が遅れて聴力の回復ができなくなってしまうケースもあります。
また、残業が続いたりストレスが強い場合も、急に発症することがあるので注意しましょう。

片耳難聴の原因:おたふくかぜ

おたふくかぜの原因であるムンプスウイルスによって、内耳などの中枢神経に生じた感染で起きる難聴です。

発症年齢は15歳以下が多く、特に5~9歳が多く報告されています。聴力の改善がしにくく、損失は重症なことが多いのが特徴です。

一側性が多く報告されていますが、ムンプス難聴全体の約5~15%は両側性で、両側性が稀ということでもありません。

子供はめまい症状が少なく、一側性の症状を言語化して訴えることが難しいため、片耳難聴の症状を見落とされるケースも少なくありません。

片耳難聴の原因:中耳炎

中耳炎にはいくつかの種類があります。

急性中耳炎の場合、ウイルス感染によって、内耳が炎症を起こすことで発生します。鼓膜の内側に溜まった膿によって鼓膜が腫れ、強い痛みを伴います。

滲出性中耳炎の場合、なんらかの理由で中耳に滲出液という分泌物が溜まる病気です。重症化すると癒着性中耳炎や真珠腫形成のリスクと共に、片耳難聴の原因になります。

慢性化した中耳炎を繰り返し、適切な治療をしないまま放置していると、聴力が低下して片耳難聴につながります。

片耳難聴の原因:加齢

加齢によって耳の中の組織が少しずつ傷付き、音を感じて脳に伝えるための有毛細胞が減少したり、有毛細胞に生えている聴毛が抜け落ちたりするのが原因です。

聞こえにくいからとテレビなどの音量を大きくすると、余計に有毛細胞が傷付いたり、聴毛が抜けてしまい、聴力が下がってしまいます。

片耳難聴の原因:メニエール病

激しいめまいのほかに、難聴や耳鳴り、吐き気の症状が出ることもある病気です。30~40代の女性や高齢の男性に発症が多く、症状や頻度、続く時間には大きな個人差があります。

内耳にある内リンパにリンパ液が溜まることで、三半規管や蝸牛の付近に水ぶくれが発生し、神経が刺激されてめまいや耳鳴り、難聴が起きると考えられています。

内服薬で治療することで回復しますが、繰り返し発症して悪化するケースもあります。

なぜリンパ液が溜まるのかはっきりと解明はされていませんが、内リンパ水腫はストレスや過労、寝不足などで悪化すると言われているため、生活習慣を見直しストレスを軽減する必要があります。

メニエール病についてさらに詳しく知りたい場合は、以下のページをご覧ください。
メニエール病を克服するには?原因や治療法、症状が仕事に影響する場合の対処策などを解説

片耳難聴の治療法はある?原因別解説

片耳難聴は、その原因によっては治療法がある場合もあります。しかし一方で、先天性のものや加齢性のものなど、治療法がないこともあります。

また早期発見と早期治療によって聴力が回復することも少なくありませんが、症状がわかりにくいため見過ごしてしまい、回復が難しくなってしまうケースもあります。

少しでも耳の調子がおかしいなと感じたら、しっかりと診察を受けることが大切です。

突発性難聴や急性低音障害型感音難聴の治療法

どちらも治療が早いほど聴力の回復が期待できる難聴です。

突発性難聴や低温障害型感音難聴を放置して、内耳で血流障害が起きた状態が続くと、内耳の有毛細胞が壊れてしまい、聴力の回復が見込めなくなります。そのため、できるだけ早く内耳の血流を回復するための治療が必要になります。

基本的に内服薬や点耳薬を用いた薬物療法が中心です。ステロイド剤、末梢循環改善薬などを投与して血流障害によって起こる細胞のむくみや炎症を抑えたり、血管拡張剤やビタミンB12などを併用します。

また、ストレスや寝不足が原因の場合は休息をとることが回復に効果的です。

中耳炎やおたふくかぜ

まずは中耳炎やおたふくかぜに対して、回復に向けた治療を行います。中耳炎の症状によっては手術も必要になりますが、徹底した細菌の駆除と根治が大切です。中耳炎を放置した状態が続くと、内耳機能が低下してしまいます。

おたふくかぜの場合、ムンプス難聴の発症条件は不明であり、急性高度難聴からの回復方法は今のところありません。

加齢性難聴

加齢によるものなので、基本的に治療法はありません。また適切な治療には、加齢性なのか突発性なのか、病因性なのかをしっかり切り分ける必要があります。

低音障害型感音難聴の場合も、急性ではなくゆっくりと進行していると、加齢性と区別がつきにくいケースがあるためです。

加齢性であることがはっきりした場合は、補聴器を導入することで聴力の低下を軽減できる可能性があります。

メニエール病

メニエール病に対しては、現在は対症療法が中心です。制吐薬や抗ヒスタミン剤などの内服薬で症状の改善や回復を待つことになります。

また、減塩食と利尿剤が回転性のめまい発作の予防や軽減に役立つと言われています。

しかし、繰り返しやすい病気なので、投薬などで回復したあとも、原因になりやすいと言われているストレスや心身の疲労をケアする必要があります。食生活と併せて、日々の生活をケアしましょう。

片耳難聴は障害者手帳を交付して貰えないことも

片耳だけの難聴の場合、障害者手帳の交付は難しい可能性があります。なぜなら聴覚障害6級の聴力レベルは、両耳とも70dB以上、または、片方の耳が90dB以上で、かつもう片方の耳が50dB以上定められているためです。

健常な耳がしっかり聞こえる場合は、難聴だけで手帳の交付を受けることはできないのです。

しかし、めまいや平衡感覚の異常が伴う場合は、聴力ではなく平衡機能の障害で手帳の交付を受けられる可能性があります。

 
キャリアアドバイザー
人間は内耳によって平衡感覚を保っているため、聴覚障害と平衡機能障害は併発しやすい障害といえます。そのため、障害者手帳も聴覚障害及び平衡機能障害として認定が行われています。
片耳難聴が原因で平衡感覚を失ってしまったり、めまいが止まらないという場合も、手帳の申請が可能です。

片耳難聴の仕事上の配慮と注意点

聴覚障害は視認しにくい障害です。片耳難聴の場合、完全に聴力を失っているわけではないので、聞こえにくい側にいる人の声を無視したように受け取られやすく、人間関係にトラブルが起きやすい問題があります。

見えない障害なので、職場の人や上司に相談し、聞こえる側から話してもらったり、電話の対応をはずしてもらうなど、配慮を求めましょう。筆談や目で見てわかりやすい表示の仕方など、工夫も必要です。

また工場や高所での作業、運転などの安全性確保が必要な現場での作業は、片方だけ音が聞こえないと危険を伴います。配置換えを依頼したり、場合によっては転職も検討した方が良いでしょう。

片耳難聴は早めの治療と生活のケアが大切

片耳難聴は早めのケアが大切です。早期の発見と治療によって、聴力の回復が期待できることも少なくありません。

また、片耳が聞こえないという状況はとてもストレスが大きく、仕事の今後にも大きな不安を抱えてしまうかもしれません。現在症状にお困りの場合は、まずは医療機関などに相談しましょう。客観的な医師の診断を踏まえて、具体的な対処方法を検討したり、周囲に相談したりすることをお勧めします。

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障害者手帳を取得することによって、様々なメリットがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
障害者手帳とは?対象疾患・等級、 受けられるサービスなどもわかりやすく解説!【専門家監修】│DIエージェント

障害を持ちながら生活収入を確保する方法について解説しています。以下の記事も合わせてご覧ください。
障害者の方の2つの収入源を解説|障害年金と障害者雇用について【社労士監修】 │DIエージェント

聴覚障害のある方の転職については、下記ページを参考にしてみてください。
聴覚障害者の方の仕事について|仕事探しや働くうえでのヒントなど解説│DIエージェント

監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。