職業準備性とは?働くために必要な5つのチェック項目と職業準備性の向上に活用できる就労移行支援を紹介

職業準備性とは、就労に必要不可欠な5つのスキルのことで、職業準備性ピラミッドとしてあらわされることもあります。職業準備性は、働くために必要なスキルを把握したり自己理解を深めるために有効です。

しかし、名前を聞いたことがあっても、詳しい内容やご自身が利用できるのか・どのようなメリットがあるのかは知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

職業準備性の何かひとつでも欠けていると、働き続けることが困難になる可能性が高くなってしまうため、現在の自分のスキルは充分かどうかを知り、不足している部分を補わなければなりません。

そこで、今回は職業準備性について詳しく解説します。5つの項目を詳しく解説し、職業準備性を身につけるために利用できる制度やサービスもお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

職業準備性とは?

高齢・障害・求職者雇用支援機構の『令和5年度版就業支援ハンドブック』によれば、職業準備性とは「個人の側に職業生活をはじめる(再開も含む)ために必要な条件が用意されている状態」と定義づけています。

具体的には「心身の健康管理」「日常生活の遂行」「職業生活の遂行」といった要素からなるものです。

職業準備性、つまり働くための基本的な習慣や心構えが備わっているかは、雇い入れる企業からも重視されています。

しかしこれまでの経験や障害・疾患によりこれらの力が備わっていなかったり、一時的に損なわれていたりすることもあるでしょう。

 
キャリアアドバイザー
職業準備性 就職・転職活動を始める前に「何ができているか?」「働くにあたってどこを伸ばすべきか?」をセルフチェックしてみましょう。

引用元
発達障害ナビポータル|職業準備性(レディネス)とは

就労に必要な能力の指標「職業準備性ピラミッド」

職業準備性は、「健康」を土台にし、日常生活、職業への理解や準備というようにピラミッド型に表すことができます。

また、この表にはありませんが、会社で職務を遂行するためにはコミュニケーション能力も欠かせないことから、対人スキルを含む5段階であらわされることも多くあります。段階に応じてそれぞれ必要な支援や制度が用意されているため、ひとりで悩む必要はありません。

たとえば、「まだ、自身の気持ちのコントロールが難しい」という場合は医療機関へ、「働いた経験が少なく、就職まであと一歩どうしたらよいか分からない」という場合は就労移行支援などに通うことが考えられます。

 
キャリアアドバイザー
もし、今できていないことが多くても大丈夫! 様々な機関・福祉サービスを活用しながら職業準備性は向上させることができます。

職業準備性をチェック|5つの項目別に解説

職業準備性は本来就労移行支援事業所などで専門家の下、チェックし、就職のためのプログラムを組んでいきます。

たとえば障害者就業総合センターの『就労支援のための訓練生用チェックリスト』以下の4つのカテゴリに対して27の質問が用意されています。

  1. 日常生活
  2. 対人関係
  3. 作業力
  4. 作業への態度

ここではより細かく具体的に示されている 高齢・障害・求職者雇用支援機構作成の「職業準備性のピラミッド」を参考に5つの項目についてわかりやすく説明します。

引用元
高齢・障害・求職者雇用支援機構|職業準備性ピラミッド

1.疾病・障害の管理|健康管理

まずは土台となる健康管理に対しての項目です。

  • ☑睡眠
  • ☑食事
  • ☑通院や服薬
  • ☑自身の体調の把握
  • ☑対処や援助の方法

充分な睡眠が取れ、食事はバランスよく3食とれているかといったことから始まります。

そして、ご自身の障害・特性の理解を深め、どのような時に体調が悪くなるのか、適切に周りにSOSを出せるのかを把握しておくことも重要です。

きちんと食事をとること、しっかり睡眠をとること、体調の管理や服薬の管理などは、就業する上で欠かせないスキル。健康管理への自己理解が不十分なまま就職しても、毎朝決まった時間に出勤するのが難しくなったり二次障害を発症したりして、離職につながる可能性が高くなってしまいます。

基本的な項目ですが、こちらは就職の前から就職後も定期的に確認・振り返りができると良いでしょう。

 
キャリアアドバイザー
障害の理解は自分一人で行うにはなかなか難しいですよね。専門家のフィードバックを受けながら理解を進めるのが良いでしょう。

2.日常生活の遂行|日常生活の管理

前の項目とも深く関係しているのが「生活リズム・日常生活」についてです。社会生活を送る上でのマナーもこちらに含まれます。

  • ☑規則正しい生活リズム
  • ☑身だしなみ
  • ☑金銭管理
  • ☑社会性・礼儀作法や生活のルール

働いて収入を得る前に、金銭をきちんと管理できるか・計画を立てて使えるかを身につけておく必要があります。

自分自身がきちんとした生活が送れているかを図るひとつの方法として、「身の回りの整理整頓や掃除」があります。毎日の生活に必須ともいえるこれらのことができない状態が続くと、やがて基礎的なスキルである健康管理にも影響するでしょう。

たとえばうつ状態になると、部屋の片づけや入浴すら億劫になることもあります。まずはご自身が少しでも快適な生活を送れるように、衛生管理の習慣を取り戻していきましょう。

また必要に応じて、生活保護費や障害年金の受給なども検討してください。

 
キャリアアドバイザー
日常生活を送る上でなんらかの不安があり、どこに相談したらよいか分からないという場合は、医療・福祉・就労・教育関係の機関と連携を取りながらサポートを受けられる障害者就業・生活支援センターへ相談することをおすすめします。

3.対人技能|多様なコミュニケーション方法の取得

いわゆる「コミュニケーション能力」の分野です。

  • ☑あいさつ
  • ☑言葉づかい
  • ☑協調性(共同作業ができるか)
  • ☑感情のコントロールや表現
  • ☑非言語的コミュニケーション

ここでは「誰とでも30分以上雑談ができるようになりましょう」といったことは求められません。ポイントは、自身の感情のコントロールや相手からの情報を正しく受け取ること、自分の伝えたいことをわかりやすく相手に伝えることです。

たとえば指示を受けたらすぐにメモをとったり、お礼やお詫びなどを適切にしたりすることで、人間関係は円滑になると考えられます。コミュニケーション手段は、必ずしも口頭によるものに限りません。

お互いが気持ちよく意思疎通を取れ、また自分からも困った時や「断り」「提案」を発信できるようになることが目指されています。

 
キャリアアドバイザー
口頭での連絡に苦手があるようだったらメールやチャットなどの代替方法がないかを模索する…このようなことも働くための準備になりますね。

4.職業生活の遂行|基本的労働習慣

「基本的労働習慣」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、一つひとつ細かく見ていくと既にできているようなことも多くあるのではないでしょうか。

  • ☑「働く」ことに対する意欲
  • ☑集中力を保って作業し、持続する力
  • ☑報告・連絡・相談
  • ☑職場のルール理解(ビジネスマナー)
  • ☑安定出勤

一般常識とされる礼儀作法にくわえて、ビジネスの場における特有のマナーもあります。

また、特に重要となるのが「安定出勤ができること」です。遅刻や無断欠勤をしないことは、雇用する側にとって最低限持っていてほしいスキル。また、働く意欲や報連相(報告・連絡・相談)が適切にできるか、電話の受け方やビジネスメールの送り方なども学んでいく必要があります。

ここで挙げたような力は就労移行支援や就労継続支援で養うことも可能です。通所を継続することで就職・転職時に企業にPRする「安定性の根拠」を作れます。

一日6時間×週5日通所し、そこで集中して訓練ができるように頑張りましょう。

 
キャリアアドバイザー
基本的労働習慣はできている!」という方は、就職活動も始めていきましょう。
DIエージェントではお仕事のご紹介だけでなく、次に挙げる「職業適性」に関してもご相談をお受けしています!

5.職務の遂行|職業適性

ここまでくると本格的に「就職活動」のスタートです。一般企業などで活躍していくための準備段階に入ります。ハローワークの職員や障害に詳しいキャリアアドバイザーなどの助言も受けながら、より自分らしく働くためのステップアップを目指しましょう!

  • ☑就労能力の自己分析(作業適性・量)
  • ☑作業のスピード、正確性、効率化の工夫
  • ☑指示の理解
  • ☑職場環境の変化への対応力

実習やトライアル雇用にチャレンジしつつ、実践の中で身につけていくのもいいですね。
これらをすぐに身につける必要はありません。就職して働きながら身につけていきましょう。

 
キャリアアドバイザー
テレワーク(在宅勤務)で働きたいとお考えの方はこれらに加えて、「テレワークならではの職務遂行能力」も必要とされます。
就労移行支援ワークイズでは在宅訓練・テレワーク就労に特化した訓練も行っています。

RIASECによる自己診断

RIASECとは30問程度の簡単な質問に答えると職業への関心の傾向が分かる診断です。ジョブカード(厚生労働省管轄)のサイトから簡易診断を受けられます。

引用元
厚生労働省|マイジョブ・カード 自己診断一覧

この結果が全てという訳ではありませんが、自分を理解するためにもチェックしてみると意外な発見があるかもしれません。また、ハローワークでも無料で様々な適性診断を受けることができます。

職業準備性を高めるために就労移行支援も活用しよう

就労移行支援サービスは、精神障害・発達障害・知的障害・身体的障害や難病のある方の就職と職場定着を支援する制度です。障害をお持ちの方の職業準備性を高めるためにも活用できます。

たとえば、就労移行支援サービス「ワークイズ」では、スキルトレーニングだけでなく、職業適性にまつわる働く上で必要な職業準備性を向上するサポートも行います。「一生涯のお付き合い」をモットーに、チームケア体制で職場定着までをサポートするのが特徴です。

ワークイズの運営母体である株式会社D&Iは、人材紹介会社のDIエージェントや職場定着支援のワクサポなどを包括しており、グループ全体で年間5,000人以上の障害をお持ちの方の就職をサポートしている実績もあります。

就労移行支援を利用するメリットや受けられるサービス内容などは、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。

公式サイト
ワークイズ|就労移行支援事業所

障害をお持ちの方の就職・転職はDIエージェントもおすすめ

上記でも触れた就職・転職エージェントのDIエージェントは、障害雇用を専門とする人材紹介会社です。専属カウンセラーによるキャリア診断や積極的な企業開拓で、ハイクラス転職やキャリアアップ転職、未経験職種への転職などを成功させてきた実績が多数あります。

就職活動の際は、この道10年以上の実績を持つDIエージェントの活用もおすすめです。

全国対象・全障害に対応で相談だけでもOK

DIエージェントは、全国を対象に障害手帳をお持ちの方の就職をサポートします。就職の意思がある障害をお持ちの方であれば、障害者手帳申請中の方やこれから取得予定という方でも相談可能です。

求職者の特性に合わせて、各障害専門のカウンセラーを配置。ご本人の希望や経歴などを基にぴったりの求人紹介を行います。テレワーク対応の求人も豊富に扱っていますので、是非一度ご相談ください。

職業準備性のためには自身のスキルや苦手分野など自己理解が重要

職業準備性は、ピラミッドの下から順にスキルチェックをしていく必要があります。上にいくほど難易度は上がりますが、どれも職業人として生きていくために欠かせないもの。

職業準備性を向上させるには、自身が持っているスキルや不足していること、苦手分野などを明確にし、苦手をカバーするための取り組みをすることが大切です。まずはしっかりと自己理解を深めましょう。

また、就職にあたって重要な企業選びでは、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境をチェックすることも重要です。今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、おひとりおひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:安部 桐子
産業カウンセラー。EAP事業の立ち上げ経験を活かし、(株)D&Iに入社後には定着支援サービス「ワクサポ」と在宅型就労支援「エンカクトレーナー」を開始。現在は300名以上の障害者の定着化・戦力化に向けたサービスの統括をおこなう。