「譲れない条件がありました」聴覚障害のエンジニアが不安を乗り越え外資コンサルに内定するまで[転職成功事例 Vol.6]

DIエージェントを通じて転職に成功した皆さんのエピソードをご紹介します。
今回はエンジニア歴12年以上の経験をもつKさんに話を伺いました。
聴覚障害者のIT人材キャリアの築き方から担当のキャリアアドバイザーと二人三脚でおこなった外資転職成功の秘訣とは……?

プロフィール
Kさん 男性(30代) 大阪在住
障害:先天性の聴覚障害、側頭葉てんかん
経験:新卒にて日系大手メーカーに就職。SE(システムエンジニア)として10年以上幅広い業務を担当。
就職先:外資系総合コンサルティングファーム ソリューションエンジニア

※本記事の内容は2021年6月インタビュー(書面・チャット)にてお答えいただいたものを編集した内容です。

「今後必ず役に立つ」恩師達の背中押しでITの道へ

――この度はご内定おめでとうございます! まず転職活動についてお伺いする前に、Kさんのこれまでの歩みについて教えていただけますか?

私の父は中学時代に他界し、母と関西で二人暮らしをしていました。ろう学校の高等部の卒業後は金銭面のことから就職を考えていました。
しかし恩師から「Kさんは勉強ができるから、お金は奨学金を借りて大学卒業後に仕事しながら返していけば良い」と進学を勧められました。その際に関東にある全国の聴覚障害者が集まる技術大学を紹介いただいたのです。

――ご苦労をされながらも、実家を離れて進学の道を選ばれたのですね。

はい、猛勉強をして無事に合格し、情報工学専攻で初めてプログラミングを学びました。
モノづくりの楽しさに触れ、全国から集まる聴覚障害者から刺激を受けながら勉強をしました。
教授からも「ITスキルは今後必ず役に立つ」「就職後もスムーズに仕事ができる」などのアドバイスを受け、そこからIT業界を目指そうと思うようになりました。

――まさにIT人材は今不足していますね。新卒でのご就職先はどのように探されましたか?

大学2年生の時に日系の大手企業のインターンシップに参加しました。
そこで私と同じ大学の先輩やその他の聴覚障害の方に出会って意気投合できたことから、働きたい気持ちが強くなったのです。
大変ではありましたが楽しみながら業務を体験し、結果として社員さんからも高い評価をいただきました。
その後は企業のオファーと大学の推薦枠もあったため、簡易的な入社試験と面接を受けてインターンシップをした企業に希望通り入社が叶いました。

――入社されてからはどのようなお仕事を経験されましたか?

入社から半年まではIT以外の研修が多く、その後はITシステム推進センターに配属されました。
プログラミングが得意なことから、業務の効率化・自動化・先輩が困っていることのサポートを任せていただきました。

――得意が活かせる環境だったのですね! 実力が買われて転籍(会社都合による他社への異動)もご経験されていますよね。

外資系企業の子会社へ転籍や転勤を伴うようなこともありました。
エンジニアとして12年以上、プログラム基本設計~開発・テスト、要件定義、顧客との交渉業務、プロジェクト進捗管理など一通りの経験を積めました。
様々な業務をこなしていくうちに、自然とITスキルが向上していることに気付きましたね。
今も応用情報技術者の資格取得に向けて学習を継続しています。

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転職活動は不安も多いから「スピーディな連絡が安心に」

――着実にスキルを積まれてきたように見えますが、今回転職をされようと思われたきっかけはなんでしょうか?

複数の転籍により段々と会社の方針や配慮が合わないと感じるようになってきました。またチャットや筆談が叶わない社外との交渉も増え業務遂行も難しく、転職を決意しました。

――転職活動を始められて、どのようにしてDIエージェントを見つけてくださったのですか?

転職活動を始めるにあたり、障害者の転職支援をしてもらえるサービスを探し、3〜4社ほどの会社に登録しました。
私は関西に住んでおりますが、東京に比べるとさらに求人数は少なくなります。
その中で、DIエージェント様はフルリモート可能の求人を始め他社と比較しても幅広い求人を紹介いただいたので良い印象を受けました。

――実際やりとりをされていかがでしたか?

担当者の雰囲気・対応スピードも良かったです。
メールだけでなく、チャット(LINE)での連絡を希望したところ臨機応変に連絡をとっていただいたため安心感をもって転職活動を進めることができました。

転職中は「私の譲れない希望条件に合った企業はあるのか」「通院やコミュニケーションに関する細かい配慮はどのようになっているのか」「前職と同等の給与で働けるのか」など色々と悩みや焦り、不安が尽きません。
聞きたいことがあったら外出先からでもスマホでチャット相談ができて、既読がつくので安心できました。他社サービスでは返信が遅く待たされることも多かったです。
内定後もフォローまでも手厚く、DIエージェントを選んで本当に良かったと思っています。

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障害配慮は発信していかなければ伝わらない

――では実際のお仕事探しについて教えてください。障害や通院の配慮、プログラマーとしてのキャリア、給料や業務量、勤務地など譲れない条件が複数あったようですがどのような軸で転職活動をされていましたか?

まずは「障害への合理的配慮がしっかりしているところ」、もう一つは「聴覚障害、てんかん持ちでも安心して働けるところ」です。
今までのスキルを活かすことはもちろん、この2つはどうしても譲れませんでした。
その条件に合う企業はなかなか見つかりませんでしたが、諦めずに転職活動を続けました。

――長く働き続けるためには大切な考えですね。

しかし条件が揃い、なおかつ「働けそうだ」とイメージが湧く企業数そのものが少ない状況でした。条件が合ったとしても書類選考などで落ちてしまうことが多かったです。書類選考落ちが続くと焦りも募りました。

――書類選考が通過したら面接のチャンスは確実にしたいですね。面接はどのように臨みましたか?

面接で確実に聞かれる質問がありますので、そこを中心に回答内容をアドバイザーと相談したり、ネット情報を参考にしたりなどして対策しました。
先方に印象に残るような回答をしっかりと固めていくのが大切だと思いました。

――定番の「障害の説明」についてはどのように説明されました?

障害ではなく私の持病のてんかん」についてですが、種類や症状が様々です。
そのことをご存知ない方が多く、上手く伝えることが難しかったです。
企業が知りたいであろう情報を先回りして、選考書類に書いておくことは効果的だったかと思います。
発症時期、症状が出ていない期間や自己対処も書いて安心してもらえる要素を詳細に書きました。

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――ご内定先はなんと有名な外資系コンサル企業でしたね!

内定先はグローバル企業で、障害者採用にも積極的でした。
コミュニケーション手段や通院といった合理的配慮もきちんとしていただけると期待しています。
私が希望していた条件をほとんどクリアでき、関西エリアの支社のソリューションエンジニアとして働くことになります。

――これから取り組んでみたいことはありますか?

上司は障害について一定の理解がありますが、同僚や部下とのやりとりや情報連携はチャレンジになるでしょう。
チャットや手話などコミュニケーションをしっかりおこない、確実に質の高い仕事をしていきたいと思っています。
私の場合、口話は得意で、聞き取りや読唇は困難(特にマスク着用時)といったこともあります。
また聴覚障害の方でもオンライン会議に参加できるよう音声変換ツールがあったら企業のダイバーシティは進みますよね。
そのような当事者だからこそ知っていること・伝えなければわからないことをメンバーや会社にも積極的に伝えていきたいですね。

――Kさん、今回はありがとうございました! Kさんが作られたシステムやお仕事が社会を動かしていくのが楽しみですね。これからもスキルをどんどん発揮していってください。

担当キャリアアドバイザーより

Kさんご転職活動お疲れ様でした。そしてご内定おめでとうございます。
これまで逆境や変化を乗り越えられていたKさんの良さを評価してくださる企業は「必ずある」と確信していたので、私も転職サポートに熱が入りました。

KさんのようにITスキルをお持ちの方は現在非常にニーズが高くなっています。
今回はKさんのスキルと照らし合わせて厳選しても20社以上の求人を紹介できました。


書類選考落ちが続いた時には……

DIエージェントでは、応募書類に加えて障害への配慮事項等を明記したプロフィールシートを作成し送付しています。
プロの目線から見て「選考が通過しやすい書き方」「長く安心してもらうために誤解を生まない伝え方」などを踏まえたアドバイスと添削をいたします。
結果として、希望にマッチしていても配慮面が困難なため書類選考が通過しないことは多々あります。
それ自体は自分にあった会社を探すためにも必要な工程のため、一定の書類選考落選は仕方ないと考え、諦めずに応募を続けることを勧めます。

一人ひとり違う悩み、「オーダーメイド」のサポートを

またKさんは前職の退職理由にもつながった「障害への合理的配慮」に対しての不安を強くお持ちでした。
転職活動は人生における大きな選択です。
ですからどんな小さな不安にも寄り添い、安心して転職活動に専念してもらえたらと考えながらサポートさせていただきました。

これからも私たちはお一人おひとりに合ったコミュニケーションの方法で、皆さんの真の希望を叶えるために最後まで伴走して参ります。

担当キャリアアドバイザー・監修:高橋 平
障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザー。
早稲田大学卒業後、(株)D&Iに入社。 障害者雇用ソリューション営業、転職キャリアアドバイザーと幅広い領域を担当。現在はHRソリューション事業部の副部長として、DIエージェントの責任者を務める。