「障害者雇用枠は年収が低い」、「障害を持っているとキャリアが積みにくく、年収アップを目指しにくい」という声が少なからずあります。
しかし、仕事選びやリスキリングのポイントをつかめば、障害者雇用枠でも年収500万円を目指すことは、決して難しくありません。
この記事では、年収500万円を目指したい障害者の方向けに、障害者の方の平均給与・雇用形態・賃金の支払い形態、健常者との年収に差がある理由、さらに年収500万円を稼ぐために必要な条件やスキルについて解説していきます。
障害者雇用枠で年収500万円は可能!
障害者雇用の枠は、一般枠と比較して低い水準にあります。そのため、年収500万円は難しいと感じてしまうかもしれません。
しかし、一般枠でも給与が高くなる傾向にあるIT系などのエンジニアや専門職では、一般枠と変わらない給与が設定されています。また、国家資格などが必要になる仕事をはじめとして、障害者雇用枠でも一般枠と変わらない高収入な求人は多数あります。
ただし、一般枠と同様にスキルセットや今までのキャリアなど、求人内容にはさまざまな条件があるため、高収入な障害者枠の求人は、非公開になっていることも多いのが現状です。
もし高収入な障害者枠での就職を目指すのであれば、高度なスキルセットを身に付けることと、非公開求人情報をたくさん持っている転職エージェントの利用はマストといえるでしょう。
障害者の方の平均月収・雇用形態・賃金の支払形態など(厚労省データ)
まず参考情報として、厚生労働省のデータから障害者の方の平均・雇用形態・賃金の支払い形態について見ていきましょう。
以下は、一般枠と比較した障害別の平均年収です。
枠組み |
平均年収 |
---|---|
一般枠 |
441万円 |
身体障害者 |
258万円 |
知的障害者 |
140万円 |
精神障害者 |
150万円 |
発達障害者 |
152万円 |
続いて障害別の労働時間や雇用形態、支払い形態を見ていきましょう。
引用元
平成 30 年度障害者雇用実態調査結果|厚生労働省
平成30年分 民間給与実態統計調査|国税庁
身体障害者の場合
身体障害者の場合、多くは週30時間以上の勤務に就き、約半数が無期契約の正社員として採用されています。
労働時間区分 |
割合(%) |
---|---|
30時間以上 |
80% |
20時間以上30時間未満 |
20% |
雇用形態 |
割合(%) |
---|---|
無期契約の正社員 |
49.3% |
有期契約の正社員 |
3.2% |
無期契約の正社員以外 |
19.9% |
有期契約の正社員以外 |
27.2% |
支払い形態 |
割合(%) |
---|---|
時給制 |
34% |
月給制 |
58.6% |
日給制 |
4.6% |
知的障害者の場合
知的障害者の場合、3割程度が短時間勤務で、半数以上が正社員以外の枠で採用されています。
労働時間区分 |
割合(%) |
---|---|
30時間以上 |
65.5% |
20時間以上30時間未満 |
31.4% |
雇用形態 |
割合(%) |
---|---|
無期契約の正社員 |
18.4% |
有期契約の正社員 |
1.4% |
無期契約の正社員以外 |
40.9% |
有期契約の正社員以外 |
39.1% |
支払い形態 |
割合(%) |
---|---|
時給制 |
73.8% |
月給制 |
19.9% |
日給制 |
6.0% |
精神障害者の場合
精神障害者の場合、半数程度が週30時間以上の勤務をしていますが、約半数が無期限の非正規雇用になります。
労働時間区分 |
割合(%) |
---|---|
30時間以上 |
47.2% |
20時間以上30時間未満 |
39.7% |
雇用形態 |
割合(%) |
---|---|
無期契約の正社員 |
25.0% |
有期契約の正社員 |
0.5% |
無期契約の正社員以外 |
46.2% |
有期契約の正社員以外 |
28.2% |
支払い形態 |
割合(%) |
---|---|
時給制 |
68.9% |
月給制 |
28.6% |
日給制 |
2.3% |
発達障害者の場合
発達障害者の場合、全体の約6割が週30時間以上勤務していますが、全体の75%以上が非正規雇用で働いています。
労働時間区分 |
割合(%) |
---|---|
30時間以上 |
59.8% |
20時間以上30時間未満 |
35.1% |
雇用形態 |
割合(%) |
---|---|
無期契約の正社員 |
21.7% |
有期契約の正社員 |
1.0% |
無期契約の正社員以外 |
31.3% |
有期契約の正社員以外 |
45.9% |
支払い形態 |
割合(%) |
---|---|
時給制 |
71.8% |
月給制 |
27.2% |
日給制 |
1.0% |
障害者雇用枠で年収500万円を稼ぐために必要な条件・スキルは?
年収500万円以上を稼ぐには、一般枠と同様にさまざまな条件やスキルセットが必要になります。
合理的配慮の上で即戦力として活躍できる人材であることを求められるため、求人市場で高い市場価値を備えなければいけません。
必要条件 |
説明 |
---|---|
業務経験 |
同一職種での「3年以上の業務経験」が求められることが多い。 |
専門スキル・資格 |
プログラミング、簿記などの資格や、IT関連スキル、経理・財務の専門知識が有利。 |
語学力 |
英語などの語学力。TOEICのプライオリティサポート利用が可能。 |
高給与企業の選択 |
外資企業や商社、業績好調な大手企業など、給与水準が高い企業を狙う。 |
エージェントの活用 |
転職エージェントを通じてキャリア相談、求人紹介、選考対策、年収交渉のサポートを受ける。 |
障害者雇用枠で年収500万円を目指すには、特に具体的な業務経験や専門スキルが非常に重要です。特定の語学や資格を取得することや、給与水準が高い企業を狙うこと、さらには転職サポートサービスを活用することが、目標達成に向けた具体的なアクションプランになります。
業務経験がある
年収500万円以上を稼ぐことができる実際の求人では、同一職種での「3年以上の業務経験」が求められることが多くなります。そのため、障害者の方が年収500万円を稼ぐためには業務経験があることが重要です。
専門スキル・資格がある
何かしらの専門スキルを持っていると、年収500万円の仕事への転職に有利になります。例えば、プログラミングや簿記などのスキル・資格を持っていると年収アップに効果的です。
近年はIT人材の需要が急激に高まっており、Webサイトの作成やシステム開発、アプリゲームの開発などのスキルはIT関連の仕事への転職に有利です。また、経理や財務といった専門職は業種を問わず必要とされるため、簿記などの資格を持っていると高年収を目指しやすくなります。
語学力がある
英語などの語学力も、年収アップを目指すうえで武器になります。英語資格のTOEICでは、障害や健康上の理由で配慮が必要な人でも受験ができるように「プライオリティサポート」が用意されているため受検しやすくなっています。
プライオリティサポートでは具体的に次のようなサポートを受けることができます。
- 【視覚障害の場合】拡大版問題用紙と拡大版解答用紙を用意。点字受検可能。
- 【聴覚障害の場合】スピーカー近くの座席で受験可能。リスニングセクションをイヤホンやヘッドホンで受験できる。
- 【車いす利用・歩行障害の場合】車いす専用トイレのある会場利用、1階教室またはエレベーターの利用できる会場での受験が可能。
1つ注意しておきたいのは、転職市場では資格以上に「実務経験」が重視されるので、「資格はあるけど職種自体は未経験」という方は、いきなり高年収を目指すのは難しい場合があるということです。まずはその職種の経験を積める会社に入ってスキルを高め、そのうえで高年収を目指していくといいでしょう。
給与水準が高い企業を狙う
「特別なスキルや資格は持っていないな・・・」という方も中にはいるかもしれません。
ごく一部のケースですが企業によっては、業務内容は他の企業と同じでも、その企業の給与水準が高いために高年収を狙えるという場合もあります。外資企業や商社、業績好調な大手企業の一部などがその傾向にあります。経験やスキルに自信がないという方は、そういった業界の求人を探してみることをおすすめします。もちろん、待遇の良い企業ほど多くの求職者が応募するため競争率は高まりますし、すぐに募集終了となる可能性もあるので気を付けましょう。
自力ではなく、エージェントを活用する
年収500万円を目指して、自分1人だけで条件のいい仕事を探すのは大変です。転職活動全般をサポートしてもらうためにエージェントを活用するのもおすすめです。
エージェントでは、キャリア相談、希望条件に合った求人の紹介、選考の対策、企業との年収交渉などを行ってくれます。求人サイトには掲載されていない非公開求人も含めて紹介してくれるので、優良求人に出会える可能性もあります。
障害者と健常者の年収に差がある理由と解消する方法
国税庁の「民間給与実態統計調査 (平成30年分)」によると、国民全体の平均年収(1年を通して勤務した給与所得者の1人あたりの平均給与)は441万円となっており、障害者の方との年収に差があることが分かります。こちらでは、「なぜ障害者と健常者で年収に差が出てしまうのか」と、格差を解消する方法についてご説明していきます。
労働時間に差がある
障害者の方は体調の安定化などのためにフルタイム勤務(1日7.5時間から8時間)でなく短時間勤務をしていることが多く、健常者よりも労働時間が少なくなり年収も下がりやすい傾向にあります。また、勤務時間を調整しやすくするために月給制ではなく時給制で働く人も多く、それによりボーナスがなく年収が低くなることも考えられます。
仕事上の「配慮」を受けている場合も多い
障害者の方の場合、障害の状況によって勤務先に業務上の配慮を希望していることが多くあります。それにより比較的負担が少なく、自分のペースで進められるアシスタント系の仕事に就く場合が多く、結果的に年収が下がることがあります。
2つの不利に対して、スキルアップによる格差解消が可能
この2つの不利によって発生する給与格差を解消するには、人材としての市場価値を高める必要があります。
たとえば国家資格などの希少性が高い資格や、業務上必須になる業務経験があることで、労働時間の短さや配慮による生産性の低下をカバーできます。
的確なスキルアップを行なうことで自分の人材市場での価値を高めれば、一般枠と変わらない高収入を目指すことは難しくありません。
キャリアアドバイザーにキャリアカウンセリングを受け、目指すキャリアに必要な資格などを取得し、プランに沿った転職をするのがおすすめです。
市場価値を高く伝えるためにエージェントを活用する
自身の能力やスキルの市場価値を企業に対して高く伝え、交渉するために、エージェントを活用することはとても有用です。
転職市場で自分で相手企業と条件を交渉するのは難しく、なかなか折り合わないことも少なくありません。
そこで障害者枠での就労に実績のあるエージェントに協力して貰うことで、自分のスキルセットや業務経験をもとに、よりよい就労条件を引き出すことができます。
エージェント経由なら障害者雇用枠で年収500万を目指し収入アップできる理由
障害者雇用に強い転職エージェントを利用することで、通常の公開求人に応募するよりもさまざまなメリットが得られます。
もっとも大きなメリットは、非公開求人情報を紹介してもらったり、オープンポジション以外で本来はないポジションを開拓して貰ったりするような、誰でも見られる求人情報にはない条件での転職活動ができる点です。
企業に対して直接、経験やスキルをアピールして年収交渉が可能になるので、転職時は積極的に転職エージェントを活用するのがおすすめです。
ポジション開拓をしてもらう
これは、何かしらに特化したスキルや資格をお持ちの方におすすめの方法です。
エージェントによっては「ポジション開拓」を行っているところがあります。ポジション開拓とは、求人をまだ出していない企業に対して、エージェントから求職者のプロフィールを伝え「御社でこのようなスキルが生かせると思うので、選考してもらえませんか」と掛け合い、求人を開拓することです。
障害者雇用枠の特徴として、企業側は応募者を集めやすいよう、障害の内容を問わず対応しやすい一般事務やアシスタント業務のような求人を多く出す傾向があります。しかし、「スキルがマッチする求職者がいれば募集中の求人に限らず積極的に採用したい」という企業も少なくないため、エージェントが掛け合うことで新たに出てくる求人もあるのです。
何かしらに特化したスキルや資格をお持ちの方は、ポジション開拓をしてもらえるかどうかエージェントに相談してみるとよいでしょう。
経験・スキルを具体的に伝える
希望条件を満たす仕事に転職するためには、自分の経験やスキル、強みをしっかりアピールすることが大事です。学歴や職歴だけでなく、専門的な資格やスキルがあれば履歴書や職務経歴書、面接で強調しましょう。前職での成果がある場合には、具体的な数値で説明すると採用担当者の印象に残ります。
エージェントを利用すると、履歴書や職務経歴書の添削や面接対策をしてもらえます。「履歴書や職務経歴書で自分の強みをうまくアピールできない」「面接がうまくいかない」という人におすすめです。
希望年収の伝え方のポイント
自力で転職活動をする場合、希望年収を伝えたり、給与交渉を行ったりするのはハードルが高いと感じてしまう人は多いと思います。前職や現職での給与、スキルに見合った希望年収であれば伝えても失礼に当たることはありません。エージェントを通して、スムーズに給与交渉をしましょう。
障害者雇用枠で年収500万円以上の求人とは
それでは年収500万円以上の求人事例を実際に見てみましょう。具体的にはIT系やエンジニア、機械設計、ほかに業務に国家資格が必要になる職が高収入になる傾向があります。その点は一般枠とあまり変わりません。
障害者雇用枠で高収入な求人の実例
・エンジニア
世界的に知られているHDDメーカーの半導体開発に関する研究開発の求人です。年俸制で年収は470万円~800万円と高い水準にあります。
高度な半導体開発の知識と業務経験が必要になりますが、通勤とテレワークのハイブリッドも可能で、専門型裁量労働制を採用しており、仕事時間も自分でコントロールできます。
ウエスタンデジタル合同会社 藤沢分室の障害者求人(ID:6519)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)
大手メーカーの管理職クラスで人材育成やチームマネジメントを行なうポジションの求人です。月給は310,000円~430,000円、年収647万円~791万円のハイクラスになります。
全社スタフ機能 IT・業務改革推進部 ビジネスサポートグループに所属し、さまざまな業務改革の推進やプロセス最適化、業務効率化を担うチームをマネジメントすることになります。チームマネジメントの業務経験が活かせます。
NECソリューションイノベータ株式会社 関西支社の求人(ID:6174)
・オープンポジション
有名大手広告代理店グループでの、オープンポジションの求人です。大手企業ならではの手厚い福利厚生と、バックオフィスからPRコンサルタントまで幅広い職種への挑戦が可能な待遇が魅力といえます。
月給は231,800円~323,500円、年収480万円~846万円で、配属先や業務内容によって異なります。賞与は年4回。
条件付きでテレワーク勤務も可能なので、柔軟な働き方をしながら広告業界で活躍したい人におすすめです。
株式会社電通PRコンサルティングの障害者求人(ID:2724)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)
DX関連のコンサルファームでのオープンポジション求人です。法務や経理、人事、総務のほか、広報・ブランディングや経営企画など、幅広いポジションがあります。
月給は35万円から。年収は420万円~1,000万円と業務によってかなり幅がありますが、全般的にミドルクラスからハイクラスに入ります。
ITに関わるコンサルファームでコンサルタントとしてキャリアを積みたい方や、DX関連企業での法務や知財管理に触れたいと考えている方におすすめです。
DIエージェント障害者求人(東京都千代田区)|No.13760の求人(ID:2719)|求人サイトBABナビ(バブナビ)
・その他
語学力が求められる求人です。米国にある本社との情報交換や技術英語読解が可能な高度な英語能力が必要になります。オープンポジションのほか、バックオフィス業務からマーケティング、製造技術、機械技術、研究開発、翻訳など、幅広いポジションが用意されています。
年俸制で300万円~1,000万円、月給に換算すると250,000円~833,300円になります。
英語力を活かして仕事をしたいと考えている方、開発職として転職を検討している方におすすめです。
日本メドトロニック株式会社の障害者求人(ID:5335)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)
映画製作で知られている東映の経理部門での求人です。東映本体およびグループ企業の会計業務などを担当することになります。
月給は32.0万円~50.0万円、年収450万円~700万円。経理スキルや簿記などの資格の有無によって変動します。
経理経験者でスキルをもっと伸ばしたいという人におすすめです。
東映株式会社の障害者求人(ID:2132)|求人サイト・BABナビ(バブナビ)
エージェントと相談しながら、年収アップを目指しましょう
「労働時間が短い」「配慮を受けている」といった理由で、障害者の方の平均年収は健常者の平均年収と比べると低い傾向にあります。ですが、業務経験や専門スキルを磨いていくことで年収500万円を目指すことは十分可能です。さらに、エージェントを活用すれば希望条件に合った求人の紹介、選考対策、年収交渉などをしてもらえるので、転職活動を1人で進めることに不安がある人でも安心して進められます。
本記事でご紹介したポイントをぜひ参考にしてみてください。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。