仕事が手につかないのはうつ病のせい?初期症状や相談できる場所を解説

仕事が手につかないと、心身どちらも落ち着かず、モヤモヤすることがあるでしょう。デスクに座っていられない、仕事に対して前向きになれないなど、心身に違和感があるときは、もしかしたらうつ病が原因かもしれません。

そこで今回は、仕事が手につかない理由とうつ病の初期症状の関係性に加えて、仕事中にみられやすい症状、症状について相談できる場所について解説します。

仕事に支障を来しており、毎日の自分の行動などにお悩みの方は、セルフチェック用として本記事をご活用ください。

仕事が手につかないのはうつ病のせい?

仕事をしていても、集中力が途切れやすかったり、デスクに座っていられなかったりするといった行動はありませんか?このような行動が長期間続く、あるいは最近目立つようになった、といった場合、もしかしたらうつ病を発症しているかもしれません。

うつ病の初期症状には、以下のようなものがみられやすいです。

  • 身体的症状:憂うつ・落ち込む・塞ぎ込むなど、気分が優れないことが増えるほか、死にたい、自責の念に駆られるなどもみられやすい
  • 精神的症状:食欲不振・体重減少・食欲増加・体重増加・不眠・過眠・寝付きが悪いなど
  • 行動の変化:ぼーっとすることが増えた・時間を守ることが難しい・家からでることに辛さを感じるなど

このような症状・変化がみられているときは、迷わず医療機関を受診しましょう。上述した各項目については以下の記事で詳しく解説しているので、この機会に併せてご覧ください。

なお該当する項目が少ないなどの理由から「うつ病ではなさそう」と安心するのは避けた方が良いです。その理由は、すでにうつ病が進行し、これら以外の症状がでている可能性があるためです。

上述した症状・変化は一つの参考として捉え、さらに気になる症状があるなどの違和感があるときは、最寄りの医療機関を受診しましょう。

 
キャリアアドバイザー
うつ病は早期発見・早期解決が大切です。

仕事中にみられるうつ病の症状

うつ病を発症している場合、仕事中には以下のような症状がみられやすいです。

  • ケアレスミスが増える
  • 社員とのコミュニケーションを避けたくなる
  • 遅刻・当日欠勤・早退が増える
  • イライラする・気持ちが不安定
  • 強い眠気により仕事が手につかない

このような症状がみられる、あるいは気付くと長い期間続いている方は、医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。

ほかにもいくつかの症状がみられることがあるので、詳細については以下の記事をご確認ください。

うつ病の可能性が高いときに相談できる場所

ここではうつ病の可能性が高いときに相談できる場所を紹介します。これまで自身の症状に悩んでいた方は、どのような場所があるのかを参考にしてください。

会社の上司や産業医

精神面や身体面に気になる症状がみられるときは、会社の上司あるいは産業医へ相談してみましょう。気になる症状を上司に相談しておくと、万が一の休職が検討しやすくなります。

もし現在、仕事が手につかない状態が一定期間続いているのであれば、まずは医療機関を受診し、自分自身の状態を知ることが大切です。医師から休職の打診を受けた場合、上司に相談しておくことで、休職を申し出るまでの流れがスムーズに進みます。

上司への相談が難しい場合であれば、会社に配属された産業医との面談を希望すると良いでしょう。

医療機関

気になる症状が2週間以上続くときは、早いうちに医療機関を受診しましょう。発熱が続いている、倦怠感があるといった場合は内科が望ましいですが、過眠・不眠が続く、集中力が続かない、何もする気になれないなど、精神的な違和感が気になるときは、心療内科の受診が有効です。

もし、医療機関の受診に抵抗があるといったときは、次項の方法を試してみましょう。

厚生労働省の専門機関

会社の上司や産業医への相談や医療機関への受診に抵抗・迷いがある方は、厚生労働省が管轄の専門機関を頼るのも方法の一つです。

例えば「こころの耳」というホームページは、匿名・無料で相談できる窓口以外にも、職場のストレスを調べられる診断ページやうつ病についてまとめたコラムなどが利用・閲覧できます。

 
キャリアアドバイザー
辛い気持ちを抱える方に向けたコンテンツも豊富なので、興味のある方は覗いてみると良いかもしれません。

こころの耳ではさまざまな相談窓口を用意しているので、このような機関があることも心の備えとして押さえておきましょう。
こころの耳|厚生労働省

ほかにも、最寄りの保健所や精神保健福祉センターなどでも相談することが可能です。困ったときや悩んでいるときは、相談できる場所があることを今一度把握しておきましょう。
身近にある地域の相談窓口|厚生労働省

うつ病を相談するメリット

うつ病をはじめ、気になる症状について誰かに相談しておくことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは相談することでみられるメリットを3つ紹介します。

 
キャリアアドバイザー
誰かに相談することで、実はさまざまなメリットがあるんです。

自分の状態を別の視点でみることができる

自分以外の誰かに自分の症状を相談するときは、どのような行動がみられ、悩んでいるのかを伝える必要があります。これは視点を変えると、自分自身が悩んでいる症状が明確になり、困っている部分が表面化できると考えられます。

今までは「なぜこんなにも仕事が手につかないのか」とモヤモヤしていた状態だったとしても、他人への相談によって自分の悩みが表面化できることは大きなメリットです。

相談の際、具体的に困っていることを口にすると、今の状態を深掘りすることにもつながります。誰かに話すことによって、自分では気付かなかった症状に気付けたり、思いつかなかった解決の糸口を見つけられたりするきっかけになるのは、大きなメリットと言えるでしょう。

ヘルプを申し出やすい

誰かに相談しておくと、万が一のときにヘルプを申し出やすいといったメリットもあります。例えば上司に症状について相談していなかった場合、仕事中に心身の不調がみられても、休憩を取ることについて申し出にくいでしょう。

しかし、事前に相談しておくと、体調の変化に合わせた対応が取りやすくなります。また、上司にとってもどのようなフォローが必要かを聞きやすいので、双方にとって働きやすい環境を作るきっかけにつながります。

気持ちが落ち着く

うつ病には、ネガティブな感情になりやすいといった特性があります。そんなときこそ誰かに「辛かった」と打ち明けることで、穏やかな気持ちを取り戻すことができます。

また、相談できる環境があることを知ったときに、初めて「一人じゃないんだ」と思うことができます。相談するという行動は、これからの自分に対して前向きな気持ちを持つきっかけにもつながるでしょう。

うつ病と診断されたら利用できる制度・支援

ここからは、うつ病と診断を受けた後に利用できる制度・支援を紹介します。仕事が手につかない状態が続いた場合、休職を視野に入れる方も多いでしょう。そのような場合に利用できる制度を中心に紹介するので、今後の参考にしてください。

自立支援医療

自立支援医療とは、心身の障害を取り除く、あるいは軽減させるために必要とする、医療にかかる医療費の自己負担額を、抑えることを目的とした制度のことです。対象者は、精神通院医療・更生医療・育成医療の3つに分かれており、うつ病は精神通院医療に該当します。

うつ病は早期治療が大切ですが、その治療期間は長期化しやすいといった側面を持ちます。そのため、毎日働いていたとしても、うつ病の治療には一定の医療費がかかり、経済的な負担が増える可能性が考えられます。そのようなときに、自立支援医療を利用することで、経済的な負担を緩和することが可能です。

自立支援医療については以下の記事で詳しく解説しているので、医療費に心配がある方は併せてご覧ください。

引用元
自立支援医療制度の概要 |厚生労働省

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯や障害者世帯、高齢者世帯に対して、無利子で資金の貸付を行い、安定した生活に戻ることを目的とした制度です。資金の種類には、総合支援資金・福祉資金・教育支援資金の3つあり、うつ病は福祉資金に該当します。

うつ病の医療費が増え、生活が困窮したといった場合には、生活支援資金貸付制度の対象である可能性があります。

ただし貸付制度を利用するにあたっては、低所得世帯であることや、手放すことでまとまった現金を作ることが可能とみなされる資産を手放す必要があるなど、自治体によって条件が異なります。

条件の詳細や自分が該当しているかを確認したい場合は、最寄りの市区役所または社会福祉協議会に問い合わせてみましょう。

引用元
生活福祉資金貸付制度|厚生労働省

障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)

精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害があると認定を受けた方に交付される障害者手帳の一つです。精神障害者保健福祉手帳は1~3級まであり、精神疾患や能力の状態から総合的に判断し認定されます。

申請手続きは、最寄りの市区役所に設けられた担当窓口で行います。精神障害者保健福祉手帳の交付を受けると、以下のようなサービスが受けられます。

  • NHK受信料の減免
  • 税金の控除・減免
  • 自動車税・自動車取得税の軽減(1級と認められた方のみ)
  • 鉄道・バス・タクシー等の運賃の割引
  • 公営住宅の優先入居

これらはサービスの一例です。詳細を知りたい方は、こころの情報サイトまたは厚生労働省ホームページをご確認ください。

また、精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットは以下の記事で解説しているので、こちらも併せてご覧ください。

引用元
障害者手帳について|厚生労働省
精神障害者保健福祉手帳|こころの情報サイト

気になる症状が続くときは迷わず医療機関で受診しよう

デスクに向かい続けることができない、集中力が続かないなど、仕事が手につかない日が続くときは、まずは最寄りの医療機関や相談窓口へ症状について相談してみましょう。

うつ病は自分で気付くことの難しい特性のため、自分の変化に違和感があるときは、早い内に相談し、専門家から適切なアドバイスを受けることが望ましいです。

会社の上司や産業医への相談に迷いがあるときは、本記事で紹介した相談窓口を利用しながら、自分に合った対処法を見つけましょう。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。