ADHDの方に向いている仕事とは?見分け方のポイントや避けるべき仕事、ADHDの方向けの求人例を紹介

ADHDとは、注意欠陥多動性障害ともいわれる発達障害です。不注意や衝動性などの特性を持ち、その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。

そこで、今回は、ADHDの方にオススメの職種・働き方など仕事選びのポイントや、実際に就職・転職活動を進める方法について解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別のご病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

ADHD(注意欠陥多動性障害)とは

ADHDは注意欠陥多動性障害と呼ばれる発達障害のひとつで、字面からもわかるとおり注意欠陥や多動・衝動性などの特性があり、社会生活に支障がある場合に診断されます。

ADHDにはさまざまな特性がありますが、大きく分類すると2つのタイプに分けられ、その2つの特性が混合していることも多いようです。

不注意優勢型

注意欠陥とは、注意力がない、つまり不注意であるといえます。一般的に注意欠陥の特性が強い場合、不注意優勢型とされ、じっとしていられないなどの多動傾向は比較的弱いでしょう。

忘れ物が多い、整理整頓が苦手、遅刻が多い、集中力が続かないなどの特性がある一方で、好きなことには周囲の音が耳に入らないほど没頭するという一面も持ち合わせています。

多動・衝動優勢型

多動・衝動優勢型は、落ち着きがなくじっとしていられない、無意識的に体が動いてしまう、おしゃべりなどの特性が強く、不注意は比較的弱い傾向です。

子どものころは、授業中におしゃべりが止まらない、立ってうろうろする、指されていないのに勝手に発言するなどの行動を問題視されることがあります。貧乏ゆすりなど常に体が動いていたり突発的に行動したり、思ったことをそのまま口に出したりすることで周囲からひんしゅくを買うことも多いです。

混合型

上述した2つの特性をどちらも同じくらいあわせ持つ混合型もあります。忘れ物が多かったり遅刻が多かったりする上に、じっとしていられない、おしゃべりなどの両方の特性がある場合は混合型の可能性も考えられるでしょう。

ADHDの特性の強みと弱点

ADHDの方には、社会生活で浮いてしまいがちな困りごとがある一方で、定型発達の人が持ちえない強みがあるのが特徴です。

ADHDの強みと弱点を整理してみましょう。

ADHDの方の強み

まずはADHDの特性の中でも、強みとなる部分を紹介します。

圧倒的な行動力

特に多動・衝動優勢型のADHDにいえることですが、思い立ったら即行動に移す実行力の高さや決断の速さなど、他を圧倒する行動力が挙げられるでしょう。

考えすぎて行動できなくなる人も多い中で、即断即決即実行のADHDは、スピードが求められる仕事ではその才能を大きく開花させる可能性もあります。

自由な発想

一つのことに集中できず、次々に興味が移り変わる特性は、言いかえれば好奇心旺盛であるということ。興味関心の幅が広くさまざまな情報に普段から触れているため、凝り固まった思考がなく、自由な発想が生まれやすいです。

常識や型にとらわれない独創的なアイデアで、慣例から抜け出せずにチャレンジできないでいる社内の雰囲気に新風を吹き込み、いい影響を与えることができるでしょう。

興味があることへの高い集中力

ADHDの特性の一つに過集中があります。好きなことや興味があることをやっている時に、周囲の声や音が耳に入らず、時間や寝食を忘れるほど集中することです。

高い集中力で業務完了までの時間を大幅に短縮したり、驚くほどクオリティの高い仕事をしたりします。

ただし過集中が途切れると反動で無気力になる、寝食を忘れるため健康を害する可能性がある、他の仕事が手につかないなどのデメリットにも注意が必要です。

ADHDの特性の弱み

次にADHDの特性の中でも、弱点とされるものを見ていきましょう。

ケアレスミスが多い

不注意優勢型に多いのが、忘れ物や失くしもの、遅刻などが多く、上司や同僚に迷惑をかけてしまうこと。集中力のなさから確認作業が苦手なこともあり、書類の不備が多かったり、誤字脱字や記入漏れ、計算ミスなどのケアレスミスが多く、業務に支障をきたしてしまうこともあります。

マルチタスクが苦手

ADHDは優先順位をつけるのが苦手なため、複数の業務を同時進行することができません。無理にマルチタスクを実行しようとすると、かえって業務効率が悪くなることがあります。

複数のタスクをこなす中で一つのことに手をつけると他のことを忘れてしまったり、優先度が高いものを後回しにして間に合わなくなったりするのが弱点です。

計画を立てて期限内に業務進行するのが苦手

時間管理が苦手なADHDは、期限内に計画を立てて業務を完遂するのが難しいという弱点があります。先述したように優先順位を決めるのが苦手で何から手をつけたらいいのかわからずに止まってしまったり、計画を立ててもその通りに進めることができなかったりすることも。

さらに見通しが甘く、締め切りが迫ってからはじめて焦り始めるなどの拙さもあります。

ADHDの方に向いている仕事

ADHDは得意なことと苦手なことの落差が大きい障害であるともいえるかもしれません。そのため、特性の強みを活かせる仕事に就くことができれば、生き生きと働くことができるでしょう。

ADHDの方に向いている仕事の特徴を紹介します。

興味があること

興味関心のあることに高い集中力を発揮するADHDは、興味がないことには集中力が続かないという側面があります。

そのため興味がない仕事に就くと、業務の効率が悪くなり意欲を持てないばかりか、本人も苦痛を感じる可能性が高いでしょう。好きなことを仕事にする、興味がある分野の仕事に就くのが理想です。

クリエイティブな仕事

独創的で自由な発想力を活かせる、クリエイティブな仕事がおすすめです。画家や陶芸家、イラストレーターや漫画家、ファッションやインテリア・インダストリアルデザイナーなど、クリエイティブな仕事は多岐にわたります。

注意力散漫でさまざまなことに気をとられやすい特性が、かえって新鮮なアイデアを生むことにもつながるかもしれません。

マニュアルがある仕事

ある程度決まった手順があり、しっかりマニュアル通りにやれば達成できる仕事も向いています。優先順位を決められないADHDの方は、臨機応変な対応を都度求められるような仕事は向いていません。

独自の感性を持つADHDの方の場合、会社のマニュアルでは理解しにくかったりケアレスミスをしてしまったりすることがあるため、自分独自のマニュアルを作り業務の流れでケアレスミスを防ぐ工夫をすることも大切です。

ADHDの方に向いていない仕事

ADHDの方は、その特性ゆえに避けた方がいい仕事もあります。ADHDの方が向いていない仕事の代表的な例は以下のようなものです。

  • 飲食業
  • サービス業
  • 金融関係
  • 旅行関係
  • 経理
  • 医師
  • 看護師
  • 公共交通機関の運転士
  • パイロット など

臨機応変な対応が必要な接客業やサービス業、マルチタスクが求められる仕事、ミスが許されない仕事は避けるべきでしょう。

ADHD特性に合った仕事を見分けるポイント

ADHDは大きく分けて2つのタイプがあり、自分自身が不注意・多動のどちらの特性が強いのかを把握することが大切です。それぞれの特性ごとに、向いていない仕事の特徴を見ていきましょう。

不注意型の方は正確性が求められない仕事

不注意優勢型の方は、ケアレスミスが多い傾向があります。そのためミスが人命に関わるような仕事や、数ミリ違うだけですべてが台無しになるような緻密な作業を求められる仕事は避けるのが無難です。

基本的に対人でサービスを提供する仕事は臨機応変さが求められるため、接客業やサービス業はやめておきましょう。

多動型の方は体を動かす仕事

多動・衝動優勢型の方は、じっとしていなければならない仕事には向いていません。デスクワークよりも、外回りが多い営業や各地を飛び回るような仕事がおすすめです。

意外にも、警察官や消防士などの現場で活躍する仕事は向いているといえます。また調理師やパティシエ、スポーツインストラクターなど、自分の興味を突き詰める仕事も向いているといえるでしょう。

ADHDの方が仕事をする上で起こりがちな困りごととその対策

ADHDの特性や向いている仕事、向いていない仕事などを見てきましたが、実際の仕事ではどんな困難があるのでしょうか?

ここからは仕事上で起こりがちな困りごとと、その対処法を紹介します。

ケアレスミスを繰り返す

ケアレスミスはADHDの方本人や、一緒に仕事をする周囲の人にとって深刻な問題です。書類の記入漏れやミスで手続きが滞ったり、数字のミスに気付かないまま発注をかけてしまったりといったことにつながります。

ミスは誰にでもありますが、ADHDの方の場合それを繰り返してしまうため、周囲との関係がこじれたりやる気がないと見なされたりすることも。

ケアレスミスを防ぐには、ミスをする前提でチェックリストを作成したり、上司や同僚に最終チェックをしてもらったりするのがおすすめです。

忘れ物や遅刻が多い

気をつけていても忘れ物や失くしものが多いのが不注意優勢型の特性です。会議に必要な書類を忘れてくる、重要な物品を失くすといったことが続けば、社内での信頼はがた落ちでしょう。また時間管理が苦手なため遅刻を繰り返してしまうことに悩んでいる方も少なくありません。

大切なものだけを入れる引き出しを作り、そこに全部を入れるようにしたり、大切な書類や物品はそもそも自分が管理せず上司に管理を任せたり、スマホのリマインダー機能をフル活用したりするなど、忘れない・失くさないような細かい仕掛けをいくつも作るのがおすすめです。

スケジュール通りに仕事を進めるのが苦手

仕事では納期があったり自分の仕事が終わらないことで周囲に迷惑をかけたりすることがあります。計画を立ててその通り実行することが苦手なADHDの方は、スケジュール通りに仕事を進められないことも多いかもしれません。

まずは自分が頑張ればどうにかなるはずだという思考をやめ、人やツールを頼りましょう。上司に相談して30分や1時間単位で進捗報告をしたり、タイマーをかけて細かく見直しや振り返りをしたりすることが有効です。

またポモドーロ・テクニックの時間管理術を使うのもおすすめ。ポモドーロ・テクニックは短い作業時間と休憩を繰り返すことで、作業効率を高める方法です。

たとえば25分間の作業をしたら5分の休憩をとることを繰り返し(1クール)、4クール目で長めの休憩をとります。タイマーが鳴ったら作業が途中であっても強制的に休憩するのがポイントです。

集中力を高めるだけでなく、過集中の時に強制的に休めるというメリットもあります。

感覚の鈍麻・過敏で仕事に集中できない

ADHDの方は、しばしば感覚過敏や感覚鈍麻の特性を持ちます。大きな音やざわざわした喧噪が苦手だったり、肌にあたる衣服の感覚に不快感を持ったり、反対に好きな感触や臭いに執着したりすることも。

感覚過敏・鈍麻は、視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚の五感が、過敏または鈍麻な事を言います。すべての人にこの特性があるとは限らず、特性も音が苦手、特定の感覚を嫌がるなど人それぞれです。

苦手な感覚を把握し、それに対して対処法を考える必要があります。大きな音やざわざわした人の話し声が苦手な方はイヤーマフや耳栓をする、不快な感触の服は身につけないなどの対処法を試してみましょう。

曖昧な指示や臨機応変な対応が難しい

ADHDの方は曖昧な指示を理解しにくかったり、暗黙のルールを理解できなかったり、臨機応変な対応を求められるとパニックになったりする特性があります。

たとえば「〇〇をどこどこに持って行ってね」と言われた場合、〇〇のことはわかっていてもそれを何個持っていけばいいのか、いつ持っていけばいいのか、誰に渡せばいいのかわからずに戸惑ってしまうなどです。

いつもと違う手順の指示をされたりすると混乱してしまうこともあるため、自分の特性を周囲に理解してもらい、指示ははっきりと出すようお願いしておく、複数の指示を一度に出さず一つずつ指示してもらうなどの対策が有効です。

ADHDの方が働きやすい環境を手に入れるには?

ADHDの方は、その特性への理解がある職場であれば強みを活かして貢献できる可能性が高いです。そこで、働きやすい環境を手に入れるための方法や利用できるサービスを知っておきましょう。

 
キャリアアドバイザー
ADHDの特性による仕事への悪影響を軽減するには、特性によって起こりがちなトラブルを想定して対処法を考えておくのが有効です。対処療法的な対策に限界を感じたら、障害者雇用枠での就職も検討してみましょう。

就労移行支援事業所を利用する

就労移行支援事業所とは障害や病気をお持ちの方の就職を支援するサービスで、就業に必要なスキルの訓練や就職活動のサポートをしてくれます。

通所型が一般的ですが、テレワーク型の事業所も登場しており、体調が不安定な方でも就職に向けた準備ができるのが嬉しいポイントです。

引用元
テレワーク可能な就労移行支援事業所ワークイズ

障害者雇用専門のエージェントに頼る

求人紹介や面接対策など、就職をサポートする転職エージェントには、障害者雇用専門のものもあります。

障害者雇用専門の転職エージェントでは、障害をお持ちの方の就職や転職をサポートしてきた実績を持つカウンセラーに相談できるのがメリット。障害特性を理解し、本人の希望や経歴などを考慮して、マッチする企業を紹介してもらえます。

障害者雇用専門のDIエージェントと求人サイトの実際の求人例

障害者雇用専門のDIエージェントは、この道10年以上の実績があり、各障害専門のカウンセラーが相談からキャリア分析、面接対策や企業とのやりとり代行などのサポートを一貫して行います。

オーダーメイドの丁寧なマッチングを目指し、就職成功までを伴走するので、初めての就職・転職でも安心です。

あくまでも最終目標は職場定着なので、アフターフォローも手厚く頼りがいがあります。

DIエージェントは就労移行支援事業所のワークイズや定着支援のワクサポ、求人サイトのBABナビなどを包括するD&Iグループの一つ。BABナビは、障害特性に合った求人を探したりスカウトを受けたりできるので、どんな求人があるか是非一度確かめてみましょう。

ADHDの方向けの実際の求人を見てみよう

ここからはBABナビに掲載中の求人の中から、おすすめのものを一部紹介します。

自動車や医療、環境保全などさまざまな分野の計測機器を世に送り出している「株式会社堀場製作所」。求人はオープンポジションで人事・総務・経理・法務・システムエンジニア・営業などから、希望やスキルをもとに採用されます。

なお、この求人はDIエージェントお預かりの求人です。応募はDIエージェントを通して手続きに進む流れとなります。

株式会社堀場製作所|障がい者採用枠/オープンポジション

システムエンジニア・プログラマーの求人募集は、「アクセンチュア株式会社」のもので経験者向けです。アクセンチュアは人材開発やトレーニングに注力している企業で、社内の勉強会や教育プログラムなどが整っています。

こちらもDIエージェントお預かりの求人です。

アクセンチュア株式会社|障がい者採用枠/(経験者採用)ITテクノロジーのスペシャリストとして活躍できるソリューションエンジニア

最後はDIエージェントがお預かりしている非公開求人の紹介です。DIエージェントでは優良企業の非公開求人も取り扱っており、従来の障害者雇用では縁が薄い業界や職種の新規開拓も得意としています。

この求人は一般事務・経理・システムエンジニア・その他IT技術職などオープンポジションの募集で、テレワーク勤務も可能です。

DIエージェント障害者求人|障がい者採用枠/一般事務

ADHDの特性に合った仕事なら、強みを活かして活躍できる

ADHDは発達の凸凹がある障害で、提携発達の人にはない強みがある一方、忘れ物が多かったり遅刻の常習など社会生活に支障が出るような弱点もあります。

特性には不注意優勢型と多動・衝動優勢型があり、それぞれの特性に応じた対処をしなければなりません。

障害を抱えながら働く上では、 障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。障害があっても「キャリアの成長をあきらめたくない」「自分にあった働き方を探したい」という方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠の就職・転職について情報提供や、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人お一人の実現したい働き方を提案させていただきます。

就職・転職はまだ検討段階という方もぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。