一般就労とは?福祉的就労との違いや就労移行支援のメリット、対象者を解説

現在就職を考えている方の中には、一般就労するか、福祉的就労するかについて迷っている方も多いのではないでしょうか。実際に「配慮のない職場で就労できるのか心配」、「スキル不足で一般企業ではついていけないかもしれない」という不安を抱えている方は少なくありません。

そこで、今回は一般就労について、福祉的就労との違いや就労移行支援のメリットなどを解説します。

今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

一般就労と福祉的就労の違いとは?

一般就労と福祉的就労の違いは、主に雇用の形態と支援の程度にあります。一般就労は、公共機関や一般企業と雇用契約を結び、通常の勤務条件で働くことを指します。

障害者を受け入れるための合理的配慮はあるものの、基本的には通常の就労環境と同じです。

一方、福祉的就労は、一般就労が難しい障害者の方々が福祉制度の下で働くことを指します。福祉的就労では、就労継続支援を受けながら、将来的に一般就労を目指すこともできます。

このように、福祉的就労は一般就労に移行するステップとして、または障害の程度に応じて適した働き方として提供されています。

一般就労の定義

一般就労とは、公共機関や一般企業と雇用契約を結び、障害の有無に関わらず、同じ職場で働くことを指します。この場合、障害をお持ちの方でも障害のない人たちと同様の勤務条件や労働環境のもとで働くことが期待されます。一般就労は、障害のある方とない方が共に活躍し、多様な価値観や能力を活かせる場となっています。

求人は通常、障害者雇用枠と一般枠の二つに分かれており、障害者雇用枠は障害が理由で配慮を必要とする方が働くための特定の枠を指します。一方、一般枠の求人は、障害の有無に関わらず、誰でも応募することができます。

引用元
発達障害ナビポータル:一般就労と福祉的就労

障害者雇用枠と一般枠の就労の違いは?

企業は、法律で定められた総従業員数に対して2.3%の障害者雇用率を達成する義務があり、障害者雇用枠を設けています。しかし、障害者であっても一般枠で就労することは可能です。

ただし、一般枠の場合は合理的配慮が受けられないケースもあり、障害者雇用枠との主な違いとなっています。

障害者雇用枠と一般枠の間には業務や勤務の条件に違いがあるケースがありますが、両者間の差がない企業も存在します。

障害者の方が一般就労を目指す際は、自身の能力や企業の配慮の程度を考慮しながら、適切な雇用枠を選ぶことが重要です。

障害者雇用枠のメリット・デメリット

障害者雇用枠のメリットとして、合理的配慮を受けられる点が挙げられます。これには、業務内容の調整、通院の考慮、勤務時間の配慮、そして勤務場所の施設に関する配慮が含まれています。

一方、デメリットとしては、障害者雇用枠での職種や求人数が限られているため、仕事の選択肢が狭まる点があります。

一般枠のメリット・デメリット

一般枠での就労のメリットは、職種の選択肢が広く、求人数も多いため、多くの求人紹介の機会が提供される点です。一方で、デメリットとしては、障害に対する合理的配慮を受けにくい点が挙げられます。

また注意したい点として、一般枠での求人応募は障害のない方と同じ水準で選考が行われます。障害が理由でできない業務がある場合などは、障害のない求職者と比べて選考が不利になることがあるケースも考慮しておきましょう。

入社後に実際に業務を進めていく中で、障害が理由で配慮が必要なことに気づいた場合も、必ずしも配慮が受けられるとは限りません。結果として、一般枠で採用された障害者の早期離職率が高い傾向が見られます。

そのため、一般枠での就労を目指す際には、企業の障害者に対する理解と支援体制を確認し、自身の能力と状況を慎重に考慮することが重要です。

福祉的就労と一般就労の関係

福祉的就労は、一般就労が難しい障害者に向けて、就労支援を提供する制度です。この制度には雇用契約を結ぶ就労継続支援A型と、非雇用の就労継続支援B型の2種類があり、どちらが適しているかは障害の度合いや希望する就労時間などによって異なります。

福祉的就労では業務に応じた給与が支払われる一方、就労継続支援の事業所利用料が発生します。

福祉的就労は、就労継続支援B型から就労継続支援A型へ、そして一般就労へと移行するステップとしても機能します。

就労継続支援A型は18歳から64歳までの障害者に開かれており、就労の意志があること、主治医の診断書や定期的な通院があることを条件に、障害者手帳がなくても利用可能な事業所が存在します。

 
キャリアアドバイザー
一般就労への移行はサポートを得ながら進めることが大切です。希望する職種や業種、書類、面接の準備などの伴走は、転職エージェントを活用するのが便利です。転職エージェントは福祉的就労をしながらでも利用できるので、併用するのがおすすめです。

一般就労を目指すファーストステップは、福祉的就労から就労移行支援への移行

すぐに一般就労が難しい場合、一般就労を目指す際のファーストステップとして、福祉的就労から就労移行支援への移行がおすすめです。

福祉的就労から直接一般就労へ移行するケースも存在しますが、多くは途中で就労移行支援を利用しています。この推奨の背景には、支援内容の違いが影響し、一般就労への移行率が異なるためです。

具体的には、福祉的就労のA型では一般就労への移行率が約22%、B型では約12%に留まるのに対して、就労移行支援制度を利用すると、移行率が約53%と高くなります。

就労移行支援制度は、一般就労へのスムーズな移行を促進する支援を提供するため、この制度を利用することで、一般就労への道をより明確にして、成功の可能性を高めることができます。

就労移行支援と就労継続支援、就労定着支援の違い

就労移行支援は、一般就労を目指す障害者をサポートする制度で、原則として2年間の支援を提供します。この制度を利用することで、技術の習得や面接対策など、一般就労に向けた準備が整えられます。

一方、就労継続支援は、一般企業への就職が困難な障害や難病を持つ人を対象に、持続的な就労の機会を提供する制度です。こちらは長期的なサポートを目的とし、障害者の方々が安定した就労環境を得られるよう支援します。

これらの制度は、それぞれの目的や対象者が異なりますが、就労継続支援から一般就労へ移行するケースも存在します。障害者の方々にとっては各段階でのサポートが提供されることで、より適切な就労支援を受けることができます。

就労移行支援制度とは

就労移行支援制度は、18歳から64歳までの障害や難病を持つ人々が一般企業で働くための支援を提供する制度です。

利用者は就労移行支援事業所でのサポートを受けることができ、カウンセリング、ビジネススキルの習得、実践的なトレーニング、そして就職活動や就労定着など、幅広い支援を受けることが可能です。

サービス利用料は前年度の世帯収入に応じて変わり、原則として利用期間は2年間です。この制度では事業所と雇用契約は結ばれず、原則、賃金も発生しません。

就労継続支援とは

就労継続支援制度は、一般企業への就労が困難な障害や難病を持つ人々に向けて、就労の機会を提供するための制度です。この制度はA型とB型の2種類があり、各々が異なるサポートを提供します。

A型は、雇用契約を結んで賃金を受け取ることができ、社会保険にも加入することが可能です。これに対してB型は、雇用契約を結ぶことはありません。B型は特に、短時間しか勤務できないなど、ある程度の制約がある人々に利用されます。

この制度の利点として、利用者は自身の能力や状況に応じて、B型からA型へ、そしてA型から一般就労へと段階的に移行することが可能です。

就労継続支援と就労移行支援の併用は不可

就労移行支援と就労継続支援A型は、原則併用できません。一方、就労継続支援B型は、必要な支援の内容に考慮が必要な場合など、事情によっては併用できることがあります。

基本的に併用はできませんが、どうしても必要がある場合は支援員などに相談してみましょう。

就労定着支援とは

就労定着支援制度は、一般就労へ移行した障害者が企業内で働き続けられるように支援する制度です。

就労に伴う環境の変化や生活面での課題をサポートし、企業や関係機関との連絡調整を行います。さらに、社会生活上のさまざまな問題に対する相談や指導、助言などの支援も提供されます。

利用期間は最大で3年と定められており、この期間が経過すると、障害者就業・生活センターなどへ支援が引き継がれることとなります。

就労移行支援制度の利用方法

就労移行支援制度の利用には、障害福祉サービス受給者証などの準備や、事業所の下見などが必要です。

事業所の選定:
事業所によって提供される支援内容やプログラムが異なる場合があるので、複数の事業所を訪問して比較しましょう。

面談・相談:
事業所のスタッフと面談し、自分の就労目標や支援のニーズについて相談しましょう。サービスの内容や利用料についても確認します。

利用申請:
利用する事業所が決まったら、自治体の窓口に必要な書類を提出し、事業所の指定を受けましょう。また、障害福祉サービス受給者証の発行申請も行います。

プログラム参加:
事業所のプログラムに参加し、カウンセリングやビジネススキル習得、実務トレーニングなどのサポートを受け、一般就労に向けた準備を進めていきます。

就職活動:
事業所のサポートを受けながら、就職活動を開始します。面接対策や書類作成のサポートも受けられるので、積極的に利用しましょう。

引用元
厚生労働省:就労移行支援ガイドブック

 
キャリアアドバイザー
就労移行支援制度を利用するには、就きたい仕事に適したプログラムがあるか、通いやすい場所か、雰囲気は良いかなど、さまざまなポイントを比較する必要があります。就労移行支援事業所には最長で2年間通うことになるので、妥協は禁物です。自分の希望にあう事業所をしっかりと吟味しましょう。

就労移行支援事業所の見学や体験をする

就労移行支援事業所の見学は、その雰囲気やサポート内容を直接感じる大切な機会です。事業所によっては体験会や説明会を開催していることもあり、これらのイベントを利用することで、サポートの具体的な内容や事業所の雰囲気を掴むことができます。

特に、すでに利用する事業所を決めている場合は、受給者証の発行支援についても相談できることがあります。

可能であれば複数の事業所を見学し、それぞれの事業所が提供するサポート内容やアプローチを比較検討することも重要です。

利用する事業所を決め、利用契約をする

利用する就労移行支援事業所が決まったら、各自治体の障害福祉課の窓口に「サービス等利用計画書」や申請書を提出します。障害者手帳や医師の診断書、意見書と認め印も一緒に持っていくとスムーズです。

自治体によっては、相談支援事業所で計画相談を行うことを必須にしている場合があるので、事前に確認しておきましょう。

申請書類を出したタイミングでヒアリングが行われることが多いので、時間にゆとりがある時に申請するのがおすすめです。

就労移行支援制度を利用するための受給者証を取得する

就労移行支援制度を利用するには、障害福祉サービス受給者証(通称受給者証)が必要です。

発行までの期間は自治体によって異なりますが、2週間程度から1~2カ月ほどかかる場合もあります。

発行後、2カ月間の暫定支給期間があり、お試し期間として事業所に通うことになります。

2年で就労できなかった場合は延長や就労継続支援A型への移行など複数の方法がある

就労移行支援制度は原則最大2年までになります。なんらかの理由で中断してから利用を再開しても、すでに支援を受けた期間の分だけ短縮される点に注意が必要です。

2年で就労できなかった場合、就労移行支援の延長するほかに、複数の方法があります。就労継続支援A型に移行して態勢を整えてから就労を目指したり、障害者の転職に強い転職エージェントやハローワークの利用なども可能です。

一般就労を就労移行支援から目指すときの注意点

就労移行支援制度を利用する場合は、ご自身が一般企業への一般就労を強く希望しており、意欲的に活動できることが前提になります。また、2年間という限られた期間で、就労に向けたビジネススキルや技術を身に付ける必要があります。

就労継続支援A型と異なり、事業所から給与などは出ないので、利用中の生活費は貯金を切り崩すか親族からの支援を受ける、もしくは給付金や貸付制度を利用する必要があります。

就労移行支援は最長2年なので、希望はあっても2年以内は難しそうな人は、まずは就労継続支援A型を利用して就労のための態勢を整えるのがおすすめです。

 
キャリアアドバイザー
制度の併用はできませんが、就労継続支援A型を利用してから就労移行支援を利用することは可能です。大切なのは自分のペースでやりがいのある仕事に就くことなので、焦らず利用する制度を選びましょう。

一般就労を目指すなら就労移行支援や就労継続支援を利用しよう

一般就労を希望しておりスキルなどに不安がない方は、福祉的就労から就労移行支援へ移行し、就労のための支援を受けながら就労先を探すのがおすすめです。

一方、すぐに一般就労をするのが難しいと感じる方は、まずは福祉的就労で仕事に必要な生活リズムやスキルを身に付けてから、就労移行支援制度を利用してみてはいかがでしょうか。

転職エージェントは就労移行支援や福祉的就労を利用していても、並行して利用できます。行政のサービスとは異なる視点からのアドバイスや転職支援が受けられるので、一般就労を目指すなら併用がおすすめです。

転職におけるゴールは「採用されること」ではなく「自分らしく働ける環境で長く続けること」だと言えます。その視点で、 障害の特性に合った業務に従事することや、障害に理解や配慮のある環境で働くことが大切です。

今の職場を続けていくことに負担・不安を感じている方や、これから障害に合った仕事で就職を目指している方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠で就職・転職を検討されている方に対して就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに寄り添った働き方を提案させていただきます。

「今の自分に無理のない働き方をしたい」「理解のある環境で働きたい」というご希望がありましたら、まだ転職は検討段階という状態でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:安部 桐子
産業カウンセラー。EAP事業の立ち上げ経験を活かし、(株)D&Iに入社後には定着支援サービス「ワクサポ」と在宅型就労支援「エンカクトレーナー」を開始。現在は300名以上の障害者の定着化・戦力化に向けたサービスの統括をおこなう。