履歴書に職業訓練の受講歴は必要?書くことで見られるメリットと書き方を解説

障害者枠で就職を目指している方の中には、「これから職業訓練を受けるべきか」または「職業訓練を受けたが、履歴書に受講歴を書いて良いのか」と迷っている方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は職業訓練の受講歴を履歴書に書く方法とメリットについて解説します。職業訓練は、障害者枠での就職活動において実はとても有用な制度です。

受講することでスキルが身につくだけでなく、適切に履歴書に記載することでアピールポイントになり、就職活動を有利に進められる可能性があります。

今後の就職活動を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

職業訓練とは

職業訓練とは、就職に有利な知識やスキルを基本的に無料で身につけられる公的制度のことです。多種多様なコースから好みや希望する職種にあわせてコースを選べるほか、訓練機関の職員に相談しながら就職先を決められるといった特徴があります。

正式名称を「公的職業訓練」と言い、「ハロートレーニング」と呼ばれることも。雇用保険を受給している人を対象とした「公共職業訓練」と、雇用保険を受給できない、または受給期間が終了した人などを対象とした「求職者支援訓練」の二つを総称しています。

さらに、ハロートレーニングには障害をお持ちの方の職業訓練として「障害者向け職業訓練」もあります。詳細は後述しますが、国・都道府県・独立行政法人・民間教育訓練機関等が必要な連携を取りながらおこなわれるもので、一般的な訓練とは異なり、状況に配慮したきめ細かな訓練が受けられるのが特徴です。

引用元
厚生労働省:ハロートレーニング(障害者訓練)
厚生労働省:ハロートレーニングを上手に活用して 就職やスキルアップにつなげよう!

無料で受講可能?

職業訓練は基本的に無料で受講できます。ただし、学卒者向けの1~2年のコース・在職者向けの2~6ヵ月間のコースは有料のため、受講を検討する場合は修了までに必要な金額について調べておくことをおすすめします。また、一部テキスト代がかかることにも注意が必要です。

なお、求職者支援訓練対象の方が職業訓練を受ける場合は、「求職者支援制度」を受けられる可能性があります。以下の条件を満たしていれば職業訓練を無料で受けられるほか、ハローワークの就職支援、さらに月額10万円の「職業訓練受講給付金」を受け取ることができます。

  • ハローワークに求職の申込をしている
  • 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者ではない
  • 労働の意思と能力がある
  • 職業訓練等の支援が必要と認定されている

引用元
厚生労働省:ハロートレーニングを上手に活用して 就職やスキルアップにつなげよう!
厚生労働省:求職者支援制度のご案内

職業訓練の必要性

職業訓練は、企業で働き始める前に身につけておきたいスキルを養える以外にも、障害の内容を踏まえたうえで仕事ができるよう、就職・転職に向けた準備ができるなど、さまざまなメリットがあります。このことから、障害をお持ちの方にとって必要性の高い公的制度と言えるでしょう。たとえば、精神障害や発達障害をお持ちの方の中には、人とのコミュニケーションを苦手とする方もいるのではないでしょうか。

職業訓練では、集団のなかで受講したり、レクリエーションを通じて他者との交流をもつ機会も多くあり、就職に必要なスキルを身につけることができます。

職業訓練の種類

職業訓練には3つの種類があります。

  • 公共職業訓練
  • 求職者支援訓練
  • 障害者向け職業訓練

公共職業訓練は、雇用保険を受給している、または受給できる離職者・学卒者・在職者それぞれにあわせた3つのコースが用意されており、それぞれ受講条件や受講期間が異なります。

求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない求職者を対象とした訓練で、先述した4つの条件を満たすことで受講できます。

障害者向け職業訓練は、障害をお持ちの方を対象とした訓練です。障害者向けとしていますが、ほかの訓練同様、自分にとって必要なスキルを身につけることが可能です。

また、知的障害者や重度の視覚障害者を対象とした専用コースもあるので、障害の種類にあわせて訓練を選ぶこともできます。

障害者向け職業訓練の場合、受講料とテキスト代が無料となるので、金銭的な負担なしで受講できるのが最大の特徴です。また、上記4つの条件を満たしていれば職業訓練受講給付金を受け取ることもできます。

職業訓練を受講する流れ

職業訓練を受講するには、以下のように進めましょう。

  • ハローワークに相談する
  • コース説明会に参加する
  • 申込をする

最初にハローワークを訪れ、相談員に障害者向け職業訓練を受講する旨を伝えましょう。このとき、希望する職種や業界の相談をしておくと、どの講座が効果的かを知ることができます。また、ご自身の障害と働くことに対して不安や気になることがある場合も、細かく相談することで適切なアドバイスを受けられます。

受講したいコースが決まった後は、説明会に参加しましょう。職業訓練は、1つの講座を受講すると、「合わない」「目的と違っていた」などの個人的な理由から別の講座に変更することができません。そのため、説明会にはできるだけ参加し、目的や希望の就職先にあったコースかを判断してから決めましょう。

最後に受講申込をします。

ハローワークには、職業訓練のパンフレットに受講申込書が添付されていますが、窓口でもらうこともできます。この申込書に必要な証明写真を添付し、ハローワークに提出してください。なお、公共職業訓練を受ける場合は、雇用保険受給資格者証も忘れずに準備しておきましょう。

職業訓練の受講歴を履歴書に書くメリット

職業訓練を受けたのであれば、受講歴を履歴書に書くのがおすすめです。ここでは受講歴を履歴書に書くメリットを紹介します。

働く意欲を示せる

一つ目は、働く意欲をアピールできる点です。「働きたい」という意欲があるからこそ職業訓練を受けたはずです。企業は仕事に対する意欲や誠実さを評価する傾向にあります。そのため、職業訓練を受けた経験は、企業からの大きな評価につながる可能性もあり、自己アピールにもなるでしょう。

とくに、職業訓練の受講内容と応募する企業のマッチ度が高いと、企業からは「就職準備をしっかりと整えてきた人だ」と判断され、就職につながりやすくなります。

離職期間を埋められる

二つ目は、離職期間を埋められる点です。職業訓練は、就職に向けて知識やスキルを身につけられる公的制度のため、働く意欲を持って自分なりに努力してきたことがアピールできることもメリットです。

障害をお持ちの方で離職中の方の場合、企業から「就業できる体調ではないのではないか」という懸念を持たれる可能性があります。しかし、職業訓練に参加していたことが分かれば、たとえ離職中であっても、体調が安定していて就業できる状態であることの証明になることから、職業訓練の受講歴がある場合は、積極的に履歴書に記載しましょう。

計画性を判断されるケースもある

三つ目は、計画性が判断される点です。職業訓練のなかには、1~2年と長期のものもあります。長期訓練の受講経験を履歴書に書くと、企業は「計画を立ててきちんと実行できる人」「誠実な姿勢で仕事に向き合える人」などポジティブなイメージを抱きます。

このことから、職業訓練の受講歴によって自身の真面目さをアピールできるのも、メリットと言えるでしょう。

 
キャリアアドバイザー
障害者枠の選考では「体調が安定しているか」「勤怠の安定が見込めるか」という点を重視される傾向にあります。身に付けたスキルだけではなく、日々決められた時間通り訓練に通えたということもPRポイントになります。
離職期間が長い方や、前職を体調不良で退職された方は特に重要なポイントになるため、意識して履歴書・職務経歴書に記載しましょう。

職業訓練を履歴書に記載する上での注意点

職業訓練の受講歴は、履歴書に書くことで就職を有利に進められる場合があります。しかし、受講歴を書くときには、いくつかの注意点を押さえながら記載することが大切です。どの部分に注意すべきか、詳しく見ていきましょう。

実務経験にならない

職業訓練は、就労に必要な知識やスキルを学ぶものです。そのため、実際に企業に勤めて就労したという実務経験にはなりません。

応募要件に実務経験年数が定められているような求人の場合、実務経験としてカウントできないので注意が必要です。

受講理由を明記する必要がある

採用試験のなかで、企業が職業訓練の受講歴を考慮するときは、その受講理由をとくに重視します。受講理由が業務内容とマッチしていると、企業のために知識やスキルを身につけたことがアピールできます。企業に応募するときは、職業訓練を受けた理由を明確にし、そのうえで履歴書にまとめるよう努めましょう。

一貫性をチェックする

職業訓練の受講歴と求人の一貫性もチェックしましょう。たとえば、デジタルエンジニア科を受講しているにもかかわらず応募先の求人が営業職だった場合、電気理論や計測器の取り扱い方法などの知識やスキルが活かせないかもしれません。

履歴書に受講歴を書くときは、応募先の求人や業務内容に一貫性があるかを確認しましょう。そうすることで、職業訓練を受けた理由がその企業に応募するためだったことをアピールできるでしょう。

 
キャリアアドバイザー
職業訓練で修了した受講歴は必ず、なぜ受けることにしたのかといった理由と、受ける前の自分の状態、受けたことで何を得たのか、などをまとめておくのが効果的です
細かく洗い出しながらまとめることで、自己理解ができている人、真面目に働くことのできる人、といったイメージを与え、転職が有利になります。

履歴書に職業訓練の受講歴を書く方法

ここからは、履歴書に職業訓練の受講歴を書く方法を紹介します。どのように書いてよいかわからず迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

職歴欄に記載

職業訓練の受講歴は「職歴欄」に記載しましょう。前の職歴に続けて、「受講年月」「修了年月」「コース名」を記載します。

なお、現在職業訓練を受講中で、修了が近いときは「受講年月」「コース名」と併せて、修了年月とともに「受講修了予定」と記載しましょう。

職業訓練によって今できることをまとめて書く

履歴書に職業訓練の受講歴を書くときは、職業訓練を受けたことでできるようになったことを書きましょう。たとえばWeb系のコースを受講した場合は、活用したソフト名・言語名と併せて習得した内容を書くイメージです。

さらに、履歴書の私の特徴欄などに職業訓練の内容と併せて、どのように取り組んだのか、努力したことはなにかを完結に書くと、真摯に取り組んだ姿勢や粘り強く努力する姿勢をアピールできます。

志望動機・自己PRで受講した目的に触れる

志望動機・自己PR欄では、職業訓練の受講目的を書きましょう。履歴書には、受講歴だけでなく、なぜそのコースを受けたのか明確な理由を書くことが大切です。

受講目的を具体的に書くことで、「なぜ自社を選んだのか」という企業からの疑問に対して、「必要な知識・スキルだったこと」が伝えられ、受講歴をアピールできます。

特に魅力的な企業が見つかったときは、職業訓練の受講歴と求人とのマッチ度を見極め、マッチ度が高いと判断できれば、内定のチャンスにつながるでしょう。

書き方の一例

上述した書き方をもとに、履歴書に受講歴を書く一例を見ていきましょう。

学歴・職歴
    学歴
平成
20
3 ○○市立中学校 卒業
平成
20
4 ○○私立高等学校 入学
平成
24
3 ○○私立高等学校 卒業
     
    職歴
平成
24
4 株式会社○○ 入社
平成
30
3 ○○により入院のため退職
平成
32
4 職業訓練校 デジタルエンジニア科 入校
    デジタルエンジニア科 受講
平成
32
10 デジタルエンジニア科修了
    以上

職業訓練の受講歴は、できるだけ応募する企業の業務内容と結びつけるよう心がけましょう。

DIエージェントでは履歴書作成のサポートも

履歴書に職業訓練の受講歴を書くことで、志望動機に結びつく知識やスキルがあることを最大限にアピールできます。さらに、長期的なコースを受講した場合は、計画性や真面目に取り組む姿勢が評価され、就職が有利になります。

履歴書・職務経歴書の作成や、「どのように自分のことをPRすれば良いのか」といった点にご不安をお持ちの方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。