地域障害者職業センターの支援内容とは|障害者就業・生活支援センターとの違いまで解説

地域障害者職業センターとは障害をお持ちの方と働く場所の双方を支援している施設です。これからお仕事探しをしようと考えている方も相談ができる場所です。この記事では、地域障害者職業センターの概要や受けられる支援内容・利用方法などを紹介していきます。似ている施設として「障害者就業・生活支援センター」もありますが、その違いも説明しますので参考にしてみてください。

地域障害者職業センターとは?

地域障害者職業センターとは、障害をお持ちの方が自立して就業することを支援するため、各都道府県に最低1か所設置することが義務付けられている施設です。障害をお持ちの方だけでなく事業主への支援もおこなっています。
就職や復職をするため、専門的な職業リハビリテーションが提供されている施設です。職業リハビリテーションについては次の項で説明しています。ハローワークとも密に連携しており、障害をお持ちの方を総合的に支援できるようになっています。

参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」
厚生労働省「地域障害者職業センターの概要」

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職業リハビリテーションとは?

職業リハビリテーションとは障害によって仕事をすることが難しい人が、自分に合った仕事を見つけ継続して働くことができるようにする支援のことです。

障害者雇用促進法では、第8条に詳しく記載されています。

障害者の雇用の促進等に関する法律
第二章 職業リハビリテーションの推進
第一節 通則
(職業リハビリテーションの原則)
第八条 職業リハビリテーションの措置は、障害者各人の障害の種類及び程度並びに希望、適性、職業経験等の条件に応じ、総合的かつ効果的に実施されなければならない。(後略)

引用:「障害者の雇用の促進等に関する法律」

つまり、障害をお持ちの方への適切な就業のための支援が職業リハビリテーションです。

参考:日本職業リハビリテーション学会

地域障害者職業センター|障害をお持ちの方への支援内容

地域障害者職業センターでは障害をお持ちの方一人ひとりに合わせて、職業評価・職業準備支援・職場適応援助者支援事業・精神障害者総合雇用支援などの職業リハビリテーションを実施します。ここでは具体的にどのようなサービスや支援が実施されている施設なのかを解説します。

  1. 職業評価
  2. 職業準備支援
  3. 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
  4. 精神障害者総合雇用支援
  5. リワーク支援

1.職業評価

職業評価とは働くうえで得意なことや働きやすい環境を整理するための分析のことです。職業経験や就職の希望を聞いたり職業適性検査を受けたりします。評価という名前がついているので合否があるのかと不安に思うかもしれませんが、就職ができるかどうかの判定や適する職を判定するものではありません。こういった職業評価をもとに職業リハビリテーション計画の方針を決めていきます。

 
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職業評価や相談をよく理解した職員が、面接の際も同席してくれる場合も…! 心強いですね。

参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「職業相談・職業評価FAQ」

2.職業準備支援

職業準備支援とは実際に仕事をする前に、作業体験や講習、技能訓練などを通じて不安を減らしたり、課題を見つけ改善したりするための支援です。支援内容は障害をお持ちの方のニーズや目標によっても変わります。職業準備支援が終了すると、ハローワークでの職業紹介やジョブコーチ支援などにつながります。

  • JST(職場での対人スキルトレーニング)
  • ストレス対処
  • 問題解決技法(困ったことへの対処方法)
  • 作業マニュアル作成
  • 認知⾏動療法(⾃分を追い詰めないバランスの良い考え⽅)
  • アサーション(上手く自分の気持ちを伝える方法)
  • ジョブリハーサル(受講生同士の共同作業)
  • 履歴書作成・面接練習 など
参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「職業準備支援のご案内(リーフレット)」
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「職業準備支援のご案内)」
 
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3.職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業

職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業とはそれぞれの障害特性を踏まえて事業主と障害をお持ちの方の双方に専門的な支援をおこなうものです。ジョブコーチには以下の3種類があります。

  1. 配置型 - 地域障害者職業センターに配置されるジョブコーチ
  2. 訪問型 - 障害をお持ちの方の就労支援をする社会福祉法人などに雇用されているジョブコーチ
  3. 企業在籍型 - 障害をお持ちの方を雇用する企業に雇用されるジョブコーチ

障害をお持ちの方本人だけでなく、事業主にも助言をしてもらえるので安心して働ける環境に近づけることができます。

 
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仕事に関して、第三者の目線から、定期的に相談にのりアドバイスをしてくれます。入社時に支援先との提携を義務化している企業もありますよ。

参考:厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」

4.精神障害者総合雇用支援

精神障害者総合雇用支援とは精神障害をお持ちの方とその事業主に対しておこなわれる精神障害の特性に合わせた支援のことです。事業主、医療機関、家族などと連携し、総合的な支援を受けることができます。
ここで対象になる精神障害のある方とは精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方や医師の診断書等によりうつ病・双極性障害、統合失調症その他の精神疾患を有していることが確認できる方を指します。

 
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メンタル疾患により休職している方は次の項のリワーク支援を受けられます。

参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「精神障害者総合雇用支援」

5.リワーク支援

リワーク支援とはうつ病などで休職中の方の職場復帰を進める支援のことです。主医師や企業と協働して復帰のための活動内容を決めたり計画を立てたりします。具体的にはストレスに対する対処法などを学ぶ講座を受けたり、生活リズムを把握し改善したりし、円滑な職場復帰と再発を防止するための方法を考えます。

参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「リワーク支援(メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰)」
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「うつ病などで休職しており、職場復帰をお考えの方へ」

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地域障害者職業センターの利用の流れ

それでは実際に地域障害者職業センターを利用したいと思ったときの流れを紹介します。センターは無料で利用することができます。また、障害の種類や障害者手帳の有無などの条件はありません。まずは住んでいるところのセンターを探してみましょう。

【大都市圏の障害者職業センター】
◆東京障害者職業センター
https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/tokyo/
◆大阪障害者職業センター
https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/osaka/

1.利用したい地域障害者職業センターに問い合わせる

地域障害者職業センターを利用しようと思ったら、すぐにセンターに向かうのではなく、事前に自分が利用したいセンターに電話などで問い合わせましょう。基本的にはお住まい、もしくは勤務先の地域のセンターへ問い合わせます。直接センターに出向いて相談したり、説明会に参加したりすることで利用が始まります。

全国のセンター所在地および問い合わせ先は以下から探せます。

【地域障害者職業センター 全国一覧】 https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html
 
CA

もし直接センターに行くことが難しい事情があれば電話で相談してみましょう!


2.問い合わせ後、地域障害者職業センターに出向き相談する

地域障害者職業センターに問い合わせたら相談する日を決め、予約をしてからセンターに行きます。
また、センターによっては相談内容により相談する場所がハローワークなどの連携施設になる場合もあるので、ホームページなどを見て確認するようにしましょう。

地域障害者職業センター|施設の概要

地域障害者職業センターの対象者、場所、運営元について説明します。

誰のための支援施設か?

地域障害者職業センターは「障害をお持ちの方」と「障害雇用をしている/しようと考えている事業者」のための施設といえます。

障害をお持ちの方のための支援施設

地域障害者職業センターは障害をお持ちの方のための支援施設です。仕事を探している方や、働いている中で悩みや不安を持つ方、仕事に復帰したい方などが利用できます。

その他、障害者雇用に関わる事業主等のための支援施設

障害をお持ちの方以外も、障害者雇用を考えている、または障害者雇用に取り組んでいる事業主や企業の人事担当者、さらに障害をお持ちの方の就労支援をおこなう支援機構なども利用することができます。

どこにあるか

地域障害者職業センターは全国の都道府県に1か所ずつ設置されています。ほかにも大都市圏には支社が5か所あります。センターを利用したい場合は上で述べた利用方法を参照し、利用したいセンターを探してみてください。

誰が運営しているか

地域障害者職業センターは独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構(通称:JEED)が運営しています。高齢者や障害をお持ちの方、求職者への総合的な支援しているところです。

施設設置の目的・機能

地域障害者職業センターは安定した雇用を目指し、障害をお持ちの方、障害をお持ちの方を雇用する事業主の双方をサポートすることを目的とし、障害者雇用促進法に基づいて設置されています。

障害者雇用促進法では第22条に地域障害者職業センターの業務について以下の記載があります。

  • 障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職業講習
  • 事業主に雇用されている知的障害者等に対する職場への適応に関する事項についての助言又は指導
  • 事業主に対する障害者の雇用管理に関する事項についての助言その他の援助
  • 職場適応援助者の養成及び研修
  • 障害者就業・生活支援センターその他の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言その他の援助
  • 前各号に掲げる業務に附帯する業務
引用:「障害者の雇用の促進等に関する法律  (地域障害者職業センター)第22条」

障害者就業・生活支援センターとの違い

地域障害者職業センターによく似ている施設として「障害者就業・生活支援センター」という施設があります。この障害者就業・生活支援センターにはどのような違いがあるのか、特徴を踏まえて説明します。

「地域障害者職業センター」と「障害者就業・生活支援センター」の違い

「地域障害者職業センター」と「障害者就業・生活支援センター」の違いを簡単にまとめてみました。

 

地域障害者職業センター

障害者就業・生活支援センター

対象

障害をお持ちの方・事業主

原則、障害をお持ちの方のみ

支援内容

主に、職業リハビリテーション

就業と生活のサポート

所在地

各都道府県に1か所以上

各市町村単位

障害者就業・生活支援センターの特徴

「障害者就業・生活支援センター(なかぽつ/就ぽつ)とは?」より一部改変

障害者就業・生活支援センター(通称:「なかぽつ/就ぽつ」)は障害をお持ちの方で就職を希望している方や既に仕事をしている方のための施設です。地域障害者職業センターのような専門的な職業訓練を受けたりすることはできませんが、就業と日常生活の両面から支援を受けることができます。
また、基本的に各都道府県に1か所しかない地域障害者職業センターに比べ、市町村レベルで設置されているので数が多いのも特徴です。

 
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まとめ

地域障害者職業センターは障害をお持ちの方の就業を支援する施設です。職業リハビリテーションとして、職業評価や職業準備支援をはじめとする専門的な支援を受けることができるので、就職・転職活動を始める際や復職に向けて準備をしたい際には利用してみてください。

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監修:井村 英里
社会福祉士。福祉系大学を卒業し、大手小売店にて障害者雇用のマネジメント業務に携わる。その後経験を活かし(株)D&Iに入社。キャリアアドバイザーを務めたのち、就労移行支援事業所「ワークイズ」にて職業指導・生活支援をおこなう。