うつ病を含む精神疾患のある人の転職活動|進め方やポイント、注意点を解説

精神疾患とは、うつ病を含む精神にまつわる病気のことです。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても障害が理由で困難が生じる場合があります。

そこで今回は、うつ病を主軸とした精神疾患のある方へ、転職活動の現状や転職先の探し方を解説します。

障害の特性に合った業務に従事することや、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。合わない職場環境で働くことによって、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。

そうならないよう、今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

うつ病を抱えながら転職することは可能?

結論から述べると、うつ病を抱えながらの転職は可能です。ただし、うつ病を含む精神疾患によって、現職を続けられないと判断したときは、症状を悪化させないためにも現職と同様の仕事や職種を選ぶことは避けましょう。

症状によっては転職活動が長期化する恐れもあります。体調が思わしくなく、仕事を続けられそうにないと感じられるときは、症状が落ち着いてから転職活動に取り組むことをオススメします。

 
キャリアアドバイザー
「どうしても現職から離れたい」「できるだけ早く転職したい」と考えるときは、仕事への悩みや向き合い方、今後について主治医に相談するのがおすすめです。
内容によっては動くべきタイミングや向いている仕事について的確なアドバイスが受けられるかもしれません。

精神疾患がある方の転職活動の現状

うつ病を含む精神疾患がある方の転職活動の現状は、厚生労働省が公開した「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」で確認出来ます。同データによると、民間企業における精神障害者の雇用状況は130,298人と、前年に比べて18.7%も増加していることが分かります。

この数値は令和5年の障害者雇用状況のなかでも特に伸び率が大きく、うつ病を含む精神疾患のある方の雇用状況は上昇傾向にあります。

ただ、雇用率が高くても、「精神障害を患っている」といったネガティブなイメージを自分の中で膨らませてしまい、転職や就労そのものに大きな不安を抱える方も少なくないのが現状です。

 
キャリアアドバイザー
新卒の方で、うつ病を含む精神疾患を抱えていて就活の進め方に悩んでいる方は、こちらの記事をご一読ください。

引用元
令和5年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省

うつ病で休職中のときの転職活動の進め方

うつ病で休職中の場合、転職活動を進めることは法的には問題ありません。しかし、うつ病を含む精神疾患によって休職を選んだ社員を考慮し、企業側はなんらかの配慮を検討・導入している可能性があることから、転職先が決まっていない段階で退職の意向を申し出ることは避けましょう。

現在は休職中という立場ですから、心身の負担を増やさず、自分にあった転職先を見つけるためにも、以下の進め方を試してみましょう。

転職活動について主治医に相談する

まずは転職活動を進めても良いか、主治医に相談してみましょう。症状によっては就業そのものを避けた方が良いなどのアドバイスを受ける可能性も少なくありません。主治医から転職活動の許可が下りたときは、心身に無理のない範囲で進めましょう。

なお、現職の企業は精神疾患によって休職した社員を考慮し、必要な配慮を取り入れている可能性があります。主治医の診断によって条件付きでの就業が認められたときは、現職への復帰を検討することで、復帰可能なポジションを打診されたり、異動が認められたりする可能性があります。

転職活動の準備を進める

主治医から許可が下りたら、転職活動の準備を進めましょう。心身の負担にならない範囲で、求人情報に目を通したり、自己分析をしたりするのがオススメです。体調が良いときなら、提出する履歴書や職務経歴書の下書きを作成しても良いでしょう。

リワークプログラムの利用も検討しよう

自身の体調を振り返り、「転職活動まではまだ難しい」「または転職活動以外に出来ることはないかな」と考えるときは、リワークプログラムに参加するのも方法の一つです。

リワークプログラムとは、精神疾患を原因として休職する方へ、現場復帰に向けたリハビリを中心としたプログラムのことです。

医療機関や地域障害者職業センター、企業などで行われており、決まった時間に施設・機関に通うことで会社通勤を想定した訓練や、復職後にうつ病を再発させないよう疾病教育や認知行動療法などの心理療法が行われます。

リワークプログラムの利用を検討するときは、主治医に相談することをオススメします。医師によっては実施機関を把握し、紹介してもらえる可能性があります。

 
キャリアアドバイザー
状況によっては仕事そのものを続けるべきか悩む方もいらっしゃるでしょう。体調不良が続くほど、悩みも深みを増してしまうものです。
DIエージェントではうつ病を抱える方へ、克服する方法や仕事とうつ病を両立させる方法について詳しくまとめた記事も公開しているので、こちらの記事もぜひご一読ください。

うつ病が寛解したときの転職活動の進め方

うつ病が寛解した後は再発リスクを踏まえた上で転職先を見つけることが大切です。転職に不安を抱える方は、これから紹介する方法を参考にしながら進めてみてください。

どの様な働き方が自分にあっているかを明確にする

うつ病と一口に言っても、原因や病状は人によって異なります。そのことから、まずは自分にとってどの様な働き方があっているかを明確にしましょう。例えば職場の人間関係によってうつ病と診断された方であれば、最小限の人間関係で済む職種を探すことで再発を予防しながら就労出来ます。

通勤時に利用する公共交通機関のラッシュによって不安感が強く出てしまうといった病状がある方であれば、フレックス出社に対応した会社への転職や、自宅や好きな場所で働くことが可能なテレワークなどを選ぶのがオススメです。

このように、うつ病を発症した原因や病状をもとに転職先を探すことで、自分にあっている働き方が見つけやすくなるでしょう。

特性障害があっても働きやすい職場を探す

次に、うつ病があっても働きやすい職場を探すことです。フレックス出社に対応した会社のほか、メンタルヘルスにまつわる相談窓口が設置された会社であれば、病状について相談しながら就労出来ます。

うつ病の発症によって周囲から受けている配慮を洗い出すのも方法の一つです。実際に受けている配慮の中から、転職先にもあると働きやすさを感じられる項目をピックアップしてみましょう。そうすることで、転職先に求める条件に優先順位が付き、自分にあった会社が見つけやすくなります。

障害者手帳の交付を受けて障害者雇用枠で就労する方法も検討しよう

転職活動を進める中では、自分にあった働き方が出来る会社がスムーズに見つかるとは限りません。

 
キャリアアドバイザー
厚生労働省のデータでも、改善した人の約60%が再発し、2回以上うつ病にかかった人では70%、3回かかった人では90%と再発率の高さについて明言しています。

引用元
コラム・活動事例・資料 編|厚生労働省

うつ病が長期化している方や再発に悩む方の場合、転職活動が難航する可能性があります。そのような可能性を考慮し、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けて障害者雇用を中心とした転職活動を進めるのも方法の一つです。

うつ病で転職するときのポイント

うつ病での転職では、これから紹介するポイントを取り入れることで、病状への不安を解消しながら自分にあった働き方が見つけやすくなります。

特性障害について理解を深める

うつ病以外にも、精神疾患には様々な種類や病状があります。統合失調症や適応障害、不安障害などがある方は、どのようなことで病状が悪化したり強く出たりするのかを知るためにも、きちんと理解を深めておきましょう。

特性障害について理解を深めることで、履歴書の作成時や面接のときに自分の病状についてきちんと答えることが出来ます。求職者側から特性障害にまつわる開示を受けることで、企業側も必要な配慮が見つけやすくなります。

自分にあう就労条件を選択する

うつ病は再発率が高いことから、長い目で見て、自分にあった働き方とはどのようなものなのかを見つけることも大切です。

例えば一般的な雇用時間でも問題なく就労出来るならフルタイム勤務を、体調を考慮しながら働きたいときは短時間勤務に対応した転職先を探すなどが挙げられます。

また、うつ病を含む精神疾患に対して必要な配慮を受けながら働きたいときは、障害者雇用枠という働き方を候補に加えた上で転職先を探しましょう。

専門家の知識を借りる

転職活動に取り組む中では、スケジュールや体調の管理に難しさを感じることも少なくありません。そのようなときでもきちんと対応出来るよう、就労支援機関や障害者雇用に特化した転職エージェントを利用することをオススメします。

特に転職エージェントは、障害者雇用に積極的に取り組む会社とつながっていることも多く、企業の傾向や求める人材などを知るきっかけにつながります。

 
キャリアアドバイザー
DIエージェントでは障害者雇用枠に特化した求人サイト「BABナビ」も運営しているので、障害者雇用枠を選択する予定の方はこの機会にチェックしてください。
BABナビ

服薬・通院は継続する

主治医からの指示がある以上は、転職活動がどれだけ忙しくても服薬・通院は続けましょう。うつ病は罹患回数が増えるごとに再発率が高まる病気です。自身の判断によって服薬や通院を中断してしまうと、病状が悪化・再発する可能性があります。

転職活動や復職、転職先への入社が決まったとしても、主治医による経過観察を含めた診察を受けましょう。

無理のない範囲で取り組む

うつ病のある方の中には、体調が良くなったと過信して無理をする方も少なくありません。上述したように、うつ病はどれだけ寛解しても再発しやすい傾向にある病気です。

体調の良い日が続いたとしても、主治医から指示がある限りは無理のない範囲で転職活動に取り組むことを心がけましょう。

一人で決断しない

病状が見られにくくなっても、自分の判断で決断することは避けましょう。日によっては気分が不安定になり、冷静な判断が難しくなることも。

誤った決断を下したことで後悔しないためにも、一人で決断するのではなく、家族や友人などの意見を聞くことも心がけましょう。

うつ病を抱えていても転職は可能|自分にあう働き方を明確にするのがおすすめ

うつ病を抱えていても転職は可能です。ただし、再発率の高さから「寛解した」と過信せず、発症した原因や病状が強く出るきっかけなどを洗い出し、その上で転職活動を進めることが大切です。そうすることで、自分にあった働き方がどのようなものなのかが見つけやすくなります。

障害を抱えながら働く上では、障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。障害があっても「キャリア成長をあきらめたくない」「自分にあった働き方を探したい」という方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。

DIエージェントは「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠の就職・転職について情報提供や、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人お一人の実現したい働き方を提案させていただきます。

就職・転職はまだ検討段階という方もぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。